台湾の繊維企業/台湾生産の苦戦鮮明に/ベトナム生産品目を多様化

2019年08月27日(Tue曜日) 午前11時34分

 米中貿易摩擦や、ベトナムと多国間の貿易協定による関税撤廃・削減を背景に、台湾繊維企業がベトナム生産の拡大を急いでいる。生産品目も織布・編み立てから、糸や染色、プリント、ラミネーションなどに広がっている。一方、台湾生産は素材背景が弱いベトナムの補完的役割を担い、昨年まで堅調だったが、ここに来て苦戦が目立ち始めた。(岩下祐一)

 台湾屈指のコングロマリット、遠東集団(ファーイースタン・グループ)傘下の大手繊維企業、遠東新世紀は今年、生地生産から染色加工、縫製を行うベトナム第2工場を稼働。ベトナム生産の貢献により、今年は2桁%の増収が続く。

 機能性生地の染色加工を台湾で手掛ける昊紡も今年7月、ベトナムで織布・編み立て、染色加工、プリントの一貫工場を立ち上げた。現在の染色加工ベースの月産能力は200万ヤードで、「今後800万ヤードまで拡大する」(呂柏劭副総経理)。

 生地メーカーの竣邦は、17年からベトナム工場でプリントを手掛けてきた。今年9月には、パンチング加工に乗り出す。

 ナイロンメーカーの展頌は昨年、ベトナム工場を稼働。延伸仮撚り糸(DTY)から丸編み生地の生産、染色加工まで展開する。

 生地メーカーの中良グループは来年、ベトナム第2工場を稼働する。独メガスポーツ向けの靴のアッパー材の編み立てと染色加工を行い、月産能力は300トンを計画する。

 デニムメーカー、達歩施も来年末にベトナムで年産能力700ヤードの織布工場を開業する予定だ。ベトナムでは現在縫製工場を運営するが、米国顧客のニーズに応え川上にも進出する。

 18年末に発効した環太平洋連携協定(TPP)に米中貿易摩擦が加わり、ベトナム生産へのニーズが急拡大した。これにより、台湾企業のベトナム生産のスペースが今年、タイトになっている。

 台湾塑膠工業(台湾プラスチック)傘下で、合繊織物メーカー最大手の福懋興業(フォルモサ・タフタ)のベトナム工場は、受注が想定以上に伸び、今年3~6月にキャパシティーをオーバーした。そのため、「一部を台湾生産に切り替えた」と李敏章総経理は明かす。

 尚益染整加工の台湾工場には、難度の高いナイロン染色がベトナムから“回帰”している。「ナイロン使いの4方向ストレッチの布帛製生地などは、ベトナムでは当分難しい」と陳景仁副総経理と見る。

 ただ台湾への“回帰”は限定的だ。むしろ、台湾生産の苦戦が鮮明になってきた。

 ポリエステル・綿混紡糸メーカー最大手の台南紡織(タイナン・スピニング)はこのほど、台南市仁徳区の綿紡績工場の操業を停止した。同社は綿糸市況の低迷を理由に挙げるが、ベトナム生産を拡大しており、その影響を受けた可能性がある。

 台湾工場の苦境は、今年1~6月の貿易統計に如実に表れている。輸出額は前年同期に比べ8%減の46・98億ドルとなり、2年ぶりに前年同期を割った。中でも注目すべきは国別輸出額だ。これまで堅調だったベトナム向けが、わずかだが前年同期を下回った。ベトナム生産の高度化を反映したものとみられる。

 素材背景が弱いとされてきたベトナム生産が今後も高度化し、品目の多様化が進めば、台湾繊維産業のさらなる空洞化は避けられない。