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2019年秋季総合特集(11)/top interview オーミケンシ/素材から小売りまで個性豊か/社長 石原 美秀 氏/顧客とともにビジネス創る

2019年10月28日(Mon曜日) 午後4時52分

 オーミケンシの石原美秀社長は日本の潜在能力に「川上から川下まで個性豊かな企業が多いこと」を挙げる。一方で「アパレルではもうかる企業とそうでないところとが著しく偏る産業構造になっている」と指摘する。本年度上半期は引き続き主力のレーヨン販売で苦戦した。下半期は営業と開発の両面で改革に取り組むことで巻き返しを図る。

  ――日本の繊維産業の潜在能力とは。また、それを発揮するためには何が必要でしょうか。

 国内市場はかつて、川上から川下まで個々の企業が努力すれば、皆がもうかる時代がありました。需要が供給を上回っていましたし、世界中から日本に繊維素材の注文があり、作れば売れたのです。

 こうした環境下で、素材メーカーから最終顧客までの販売に関わるそれぞれの企業が切磋琢磨(せっさたくま)し企業の個性を発揮してきました。厳しい国際競争の中で、川下から川上まで、今でも成長を続ける個性的な企業があるのは日本の繊維産業の潜在能力と言えるでしょう。

 しかし、多様な個性や独自性を強みとする企業があるにもかかわらず、衣料品業界では、沈滞ムードが続いています。背景には事業環境がかつてとは全く異なっていることがあります。国内は、供給過多で消費者の衣料品への低価格志向は強まり、節約は常態化しています。

 環境の変化とともに、アパレル産業全体の収益構造も大きく変化しました。昔は素材メーカーの提案に基づいた商品作りが主流でしたが、昨今、市場の主導権は、完全に川下にあります。最終商品を売る側が、素材の価格、デザイン、売り方までを決めます。

 こうした変化により、一部の販売力・顧客対応力に優れた企業がより多くの利益を上げられるという状況となっています。

 今のアパレル産業の環境負荷の大きさも問題だと思います。大量に作っても正価で売れる期間も短く、そこから値引きしてなんとか売り切ろうとするが、売れ残って処分されるものは非常に多く、そうした残り物は人知れず廃棄されています。

 環境保全や省資源がかつてないほど企業に求められるようになって、こうした資源の無駄や非効率的な生産体制がいまだに続いていることも課題だと思います。

 こうした、業界の収益構造の転換や自然環境も考えた生産の最適化に向けて利害や生産を調整する機能が必要ではないでしょうか。経済が、あまねく人の幸せのためにあるという前提に立てば、公的な機関がその役割を担って、AI(人工知能)などの最新技術を駆使しながら川上から川下まで、どの企業でもある程度は利益が出る仕組みができないものかと思います。

  ――上半期の業績見通しは。

 国内は引き続き厳しく、海外も予断の許さない状況が続いており、第2四半期でも損失解消は難しいと予想します。本業のレーヨン素材の販売が振るわず、不動産事業の利益を持ってしても落ち込み分をカバーしきれません。これまで売り先にレーヨンの値上げの要請をしてきましたが、浸透し切れていないのが実情です。原料高騰などの事情を伝えても、依然として値下げの要求があります。

 中国向けレーヨンわたの輸出は総じて堅調です。ただ、米中貿易摩擦によって現地で高価格帯の日用品の売れ行きが鈍化し始めており、今後の懸念材料です。海外で最も売り込みに力を入れなくてはいけない市場が中国であることには変わりありません。今後は今の衣料、コスメ用不織布などに加え、産業資材分野へも提案していきます。

  ――下半期の方針は。

 レーヨン販売ではこれまで、生産量を増やすことで製造単価を落とし、幅広く売って最終的に利益を出すという方針で進んできました。しかし、このやり方は見直す時期に来ています。今の市況では生産量を落としてでも、新たな開発により価値ある商品を生み出し、営業提案力を強化していくべきと考えます。

 例えば、営業では新規開拓に加え、従来の取引先にも高く買ってもらえる新たな商材を提案したり、これまでとは異なる用途で提案したりすることが必要です。従来の販売先や用途にこだわることなく、提案力を強化して伸び代のある産業資材分野は有望だと思います。

 商材開発では、当社単独の開発にこだわることなく、顧客と一緒になってビジネスを生み出す姿勢が重要です。売り先にとって「機能」が付くのは当たり前です。顧客の知見と当社の技術とを融合させて新たなビジネスを創出し、ウィンウィンとなる取引を増やさねばなりません。

 中・長期的な開発では環境負荷をさらに減らすレーヨンの製造方法や生分解性の高いレーヨンの開発に取り組んでいます。

〈私のリフレッシュ法/毎朝1時間のストレッチ体操〉

 「昔はゴルフをやっていたけれど、今はそれどころじゃない」と苦笑い。ただ、10年前から体調管理のために毎朝、欠かさず1時間のストレッチ体操を続ける。出張先でもするそうだ。「よく続くと妻にも褒められる」と胸を張る。きっかけとなったのは10年前の前立腺がんの手術だった。4カ月近い入院を強いられ、運動もできず、体力が落ちてしまうという危機感から始めた。「体も柔らかくなるし、汗をかくのは気分転換にもいい。仕事でのアイデアが浮かぶこともある」と今日も体操に励む。

〔略歴〕

いしはら・よしひで 1970年4月オーミケンシ入社。2000年執行役員経営企画部長、04年取締役、08年常務、10年専務、17年6月から現職。