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2019年秋季総合特集Ⅳ(12)/top interview 宇仁繊維/日本の生地は世界トップ/社長 宇仁 龍一 氏/プロジェクト推進し再拡大へ

2019年10月31日(Thu曜日) 午後4時23分

 宇仁繊維では2019年8月期で創業以来の連続増収記録が途絶えた。しかし宇仁龍一社長は前を向いている。今期を初年度とする5カ年計画を策定するとともに、ジャカードに続く社内プロジェクトを組み、機能加工生地やデジタルプリント生地などの開発、販売強化策を具体化する。輸出拡大に向けては対米の課を一つ新設した。再び増収に挑む宇仁社長に戦略を聞いた。

  ――日本の繊維産業が持つ潜在力とは何だと考えますか。

 日本には昔から、奇麗な着物で着飾るという文化があります。今は洋装文化が入ってきましたが、この「着る喜び」という意識、服を着ることへの意欲というものはまだまだ諸外国と比べても根強いのではないでしょうか。

 良いもの、優れたものを作る力もあります。繊維で言えば代表的なのは生地ですね。産地の縮小や後継者難など現時点は厳しい状況にある日本のモノ作りですが、その力自体はすごいものがありますし、まだまだ引き上げられるものだと思います。感性の面では劣りますが、技術力ではイタリアよりも上でしょう。世界でトップということです。サステイナビリティー(持続可能性)への対応という点でも、日本の技術がもっと生かせるはずです。

 当社では数年前から「服を買おうキャンペーン」を実施しています。社員が、宇仁繊維の生地を使って作られた衣料品を購入する。その費用の原則半額を会社が負担するという取り組みです。生地や製品への愛着を高めてもらい、微力ながら繊維消費に貢献しようと始めたこのキャンペーンですが、買って実際に着用した社員からは、「もっとこうすればよかった」といった意見が出てきます。

 「ストレッチをもっと利かせればよかった」「柄の間隔をもっと詰めるとかわいかった」といった着用者としての意見です。これが次の生地作りに役立ちます。こうした地道な改善が、日本の繊維産業の潜在力になっていくのかもしれません。

  ――2019年8月期が終わりました。決算概況を。

 前期比微減収増益です。売り上げは74億円で1・1%減、営業利益は2億7100万円で43・4%増、経常利益は2億9800万円で2・4%増、純利益は2億700万円で14・4%増です。

 創業以来の連続増収が途絶えたことは残念ですが、市況悪化の中で健闘できたとも言えます。国内向け、海外向けともに前期を上回れませんでした。増益には、高級化戦略を掲げて開発商品の高付加価値化を進めたことや、生産や業務の効率化に努めたことが寄与しました。

  ――グループ業績は。

 中国向けを主要事業とする宇仁テキスタイルは減収で、初の赤字転落です。雑貨販売の宇仁繊維ファッション、プリント生地商社の丸増、ウインザーは微減収でした。オザキプリーツのみ例外で、50%の増収、大幅な黒字でした。グループ全体の売り上げは前期比1・0%減の94億円です。

  ――高級化戦略の進展は。

 ジャカード、トリアセテート、シルク、インクジェットプリントなどで取り組みましたが、とりわけジャカードの伸びが順調です。引き続き設備投資も進めながら拡販を狙います。

  ――今期の重点戦略を。

 ジャカードに続く社内プロジェクトを幾つか立ち上げ、業績の再拡大を狙います。その一つが「テックプロジェクト」。小松マテーレと取り組み、吸水速乾、防汚、UVカット、抗菌防臭、撥水といった日本が誇る機能加工生地を小口からお手頃価格で提供します。提携する石川県羽咋市の織布工場、泰生で定番の生機を量産し、小松マテーレに直送することで実現するものです。

 二つ目は「オリジンプロジェクト」です。オリジンとは原点という意味。織布と加工を効率的に回し、工場直結型の発想で大口注文に対する生地単価を引き下げるものです。小口で手間のかかる商品の価格を下げろと言われても無理ですが、単品量産で効率よく作る規模の大口注文なら単価を下げることは可能。この取り組みによって、大手アパレルの深掘りを進めます。

 その他にも、インクジェットプリントや環境配慮商品などでもプロジェクトを立ち上げる計画です。

  ――売り上げ100億円の大台に乗せる夢もあります。

 今期から5カ年計画をスタートさせ、単体で100億円、グループで120億円を目指します。現状との比較で言えば単体が100億円になり、グループも伸ばせばもっと大きな売り上げになりますが、それはグループ会社の自立化を促していくという構想もあるからです。

 計画達成に向けて、設備投資や商品の高度化、メゾン向けを中心とした輸出拡大などに取り組んでいきます。

〈私のリフレッシュ法/若手社員とのファッション談義〉

 「特にリフレッシュというのは……」と質問への答えに悩む宇仁さん。たまに行くゴルフもそれほど熱心なわけではないし、趣味のテニスも最近は自粛気味。悩んだ末に気が付いたのは、「昔からの仲間や友人、社員たちと飲むお酒は楽しい」ということ。宇仁繊維創業の理由を「定年で隠居すると仲間たちに会う機会がなくなるから」と話していた宇仁さんらしい回答だ。特に最近は「若手社員とファッション談義を交わすのが楽しい」とか。これも、柄やデザインの移り変わりに日々目を光らせる宇仁さんらしい。

〔略歴〕

うに・りょういち 1999年桑村繊維を退職後、44年余りの経験、実績を基に一部商権と商品を引き継いで宇仁繊維を創業。