第9回日中韓繊維産業協力会議/緊密な対話と協力で発展を

2019年11月28日(Thu曜日) 午前11時55分

 日中韓繊維産業協力会議が21日、韓国・ソウルで開かれた。2010年から毎年、3カ国が持ち回りで開催し、今年で9回目を迎えた。各国が繊維産業の現状を報告した後、①繊維産業の通商問題②持続可能な開発③ファッション&テクノロジー――の3テーマで議論を深め、合意書(別掲)を交わした。次回は来年11月に日本での開催が予定されている。会議冒頭での各国代表団長のあいさつの要旨を紹介する。

〈持続可能性に対する活発な議論を/韓国繊維産業連合会 成耆鶴 会長〉

 世界経済は、米・中貿易紛争の長期化や世界的な経済指標の悪化などから不確実性が高まり、投資と生産が低迷する中で成長が鈍化している状況です。これに対応するため、各国は拡張的な財政政策や金融緩和政策を通じた景気浮揚策を進めていますが、経済専門機関は主要先進国の成長率の鈍化傾向が来年も継続すると予測しています。

 繊維産業も対外需要の萎縮による交易の縮小、成長性と収益性の減少などで経営環境はさらに厳しくなることが予想されている中で、過酷な挑戦を強いられています。

 このように急変する国内外経済環境下で、3カ国の繊維産業界が議論し、協力すべき分野について述べたいと思います。

 まず、日本、中国、韓国の3カ国は、相互互恵的で高レベルな市場アクセスについての議論が必要だと考えております。

 最近、日中韓の3カ国が参加する「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」が妥結されました。これから各国の政府で関税譲許に対する議論が本格化するでしょう。従って、日中韓の繊維産業界が先頭に立ち、相互互恵的な関税譲許が成り立つように、共に努力をしていかなければならないと思います。

 第二に、環境配慮およびリサイクルなど、持続可能性に対する議論です。さまざまな技術的困難にもかかわらず、グローバルマーケットでは、既に環境配慮・リサイクル素材の需要が爆発的に増加しています。

 第三に、全業界に渡ってデジタル化が進む中で、デジタル技術への革新は繊維ファッション産業においても重要な関心事となっています。

 17、18年には米国内で6千店以上も小型量販衣料品店が縮小される中、オンライン購入が活性化され、バーチャルサンプリングやビッグデータ、人工知能(AI)などを活用した多様なデジタル技術がファッション産業に広がっています。

 消費者の多様なニーズを満たすため、急速に発展している技術をどのように組み合わせていくかが、企業の生存を左右することになると言っても過言ではないと考えます。

〈技術力やブランドの強化で協力/中国紡織工業聯合会 高勇 秘書長〉

 国際経済や貿易の情勢がさらに複雑になっています。米中貿易摩擦は激化し続け、現在米国は中国が輸出する大半の繊維品に15~25%の追加関税を課し、輸出に大きな圧力を与えています。

 近年、中国紡織工業はモデルチェンジのさらなる調整を図る周期に入っています。国際市場の需要の鈍化と貿易環境の悪化は、元々緩やかな活動状況に入っていた紡織工業にとって大きな課題となっています。

 さらに複雑化する国際環境下で、中国は現在、国内外の資源統合、さらに国際化が進んだサプライチェーン体系の構築、発展効率と品質の向上、外部環境リスクの防御に取り組んでいます。中国政府は強大な国内市場の形成を促進し、国際市場からの圧力を和らげることによる内生的経済成長力の強化に力を注いでいますが、繊維製品は間違いなく中国の内需を上昇させる重要分野であり、今後しばらく、世界最大規模の繊維消費市場であり続けることでしょう。

 新たな発展情勢の特色は、日中韓3カ国の協力を深化させていく必要性と緊急性をより一層明らかなものとし、多くの分野で3カ国の繊維業界が協力していく歴史的機会を与えるものともなりました。日韓の業界の皆さまにおかれましては、国際的サプライチェーン配置や多国籍企業グループ経営の分野において、中国の紡織企業が学ぶべき経験を持っておられます。新しい繊維材料、デジタル化、スマート化された紡織機器の分野でも中国の繊維産業による高品質なハイエンド製品の提供を支える力を持っておられます。

 これらに基づいて、われわれは企業資本の再編、最新技術協力、ファッションブランド運営などの分野で、実践的な協力関係を築いていくことを切に期待しております。中国の大規模で活気のある国内需要消費市場も、三者の繊維産業協力に最大限の市場支援を提供していきます。

〈協力して消費者の要求に応える/日本繊維産業連盟 鎌原正直 会長〉

 世界経済は各国で成長の同時減速を続けており、日本経済も生産活動は輸出中心に力強さを欠いている状況です。設備投資も省力化が下支えするものの、貿易摩擦などの不透明感の強さが下押し要因となり、伸びが鈍化する見通しとなっています。

 一方で、あらゆるモノをインターネットにつなぐIoTやAI(人工知能)の導入とそれを活用した企業行動の変革などを意味する「第4次産業革命」は世界の潮流となってきています。成長率を押し上げるためには、改革を進めていく重要性が問われていると思われます。

 このような環境下ではありますが、通商面で広域経済連携の交渉を進めることで、世界市場に向けた商流をさらに拡大し、需要創造につなげていけるチャンスもあると考えています。

 第一に、通商問題です。世界各地で広域経済連携が進む一方で保護主義への動きもあります。日中韓3カ国は世界の繊維先進国、そして世界最大の繊維産業集積地であることを強く意識し、繊維業界自らがFTA/EPAの意義と効果について検証して、積極的に推進していく必要があります。

 第二に、世界の繊維製品市場における環境・安全問題をはじめとするサステイナビリティー(持続可能性)への関心の高まりを踏まえ、3カ国の繊維業界が連携して対処していく必要があります。協力して消費者からの厳しい要求に応えていくことが、今後の繊維産業の発展につながると確信しています。

 そして第三は、「ファッションテック」、ファッションとテクノロジーの議論です。全世界が成長するアジア市場に注目する中、ファッションアパレルのサプライチェーンで最新のテクノロジーを駆使したビジネスモデルの構築が必要とされるはずです。

 日中韓の繊維業界はパートナーであり、共に成長、発展できるよう手を携えて協力し、世界の繊維産業をリードしていく気概を持って、相互のさらなる信頼関係の強化を目指していきます。

〈合意書(抜粋)〉

1.【繊維産業の通商問題】繊維産業のFTAの締結、および繊維貿易の状況に関する情報と経験を共有し、3カ国間のビジネス協力の深化の見通しについて議論した。さらに、貿易拡大に向けた中米貿易問題を含む摩擦要因の解決および双方の協力強化が重要であるとの認識で一致した。

2.【持続可能な開発】持続可能な開発の概念が世界的な広がりを見せ、また気候変動への関心が高まっているとの観点から、持続可能な繊維産業の開発が必要であるとの理解を共有、さらなる協力関係の構築、情報の共有と発信の促進、持続可能な開発の概念の下で協調して活動すること、情報交換の促進、この地域の産業における共通のグローバルな課題について共有すること、で合意した。

3.【ファッション&テクノロジー】ファッション&テクノロジーに関して、それぞれの開発状況を紹介し、デジタルテクノロジーとスマート製造に焦点を当てた事業・プロジェクトについての報告を行い、将来の開発動向について議論した。今後も情報交換を継続し、スマート製造やファッション産業のサプライチェーンに関する協力について模索することに合意した。

4.3カ国はより緊密な対話と協力のため、第10回日中韓繊維産業協力会議を日本で開催することに合意した。