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特集 人工皮革/エコ素材で欧米向け伸ばす/先をにらんだ増設も

2019年11月28日(Thu曜日) 午前11時56分

 人工皮革を展開する合繊メーカーは2019年度上半期まではおおむね堅調を維持したという。東レ、旭化成は主力のカーシートで拡販を達成。帝人コードレはスポーツシューズ向けを伸ばし、クラレは欧州高級ブランド向けが好調だった。下半期以降は各社各様の方向性で全般的な景気低迷の影響をミニマイズする取り組みを強化している。ここに来て高まるサステイナビリティー(持続可能性)への対応も急ピッチで進んでいる。需要増をにらんだ増設を東レは既に終えており、旭化成が2度にわたる増設を表明。クラレは中国合弁拠点の増強を検討している。人工皮革事業での合繊メーカーの中期戦略を追った。

〈東レ「ウルトラスエード」/統一感持ってエコ提案/厚さが特徴の新タイプも〉

 東レは人工スエード「ウルトラスエード」を展開しており、先に約60%増となる年産1千万平方メートル体制を稼働させたばかり。今後は環境配慮型の素材群による「企画提案に統一感を持って取り組む」ことで主要品番のエコ化を推進。2020年度(21年3月期)でエコ素材の比率を60%以上に引き上げる。

 最近はカーシートで、サステイナビリティー(持続可能性)への意識が高い一部の欧州連合(EU)のユーザーから本革は使わないとの声が出始めているという。軽さを求めるEV(電気自動車)関連のユーザーからは軽量、高級感を両立させたウルトラスエードへの引き合いが強まっている。

 これらを踏まえ、東レは「本革からの代替に改めて力を入れる」との意欲を示し、カーシートやコンシュマーエレクトロニクスなどにエコ素材のラインアップを重点的に投入する。

 同社は、表面の極細糸を再生ポリエステルで商品化した「ウルトラスエードRX」・極細糸に部分バイオポリエステルを使う「同PX」、極細糸・ポリウレタン、スクリム(補強材)とも部分バイオ化した「同BX」――という3タイプのエコ素材を打ち出している。

 これらや大型素材への育成を目指す銀付き調「ウルトラスエード・ヌー」で本革代替を推進。今後の市況について「総じて弱含み」とみているものの、下半期もカーシートやコンシュマーエレクトロニクスなどで拡販を計画する。

 厚さ2.8ミリという「ウルトラスエード」史上、最大の厚みを持つ新タイプも開発。薄さがネックとなっていた本革アイテムのゾーンに進出する。

〈旭化成「ラムース」/再度の増設を表明/GRS取得を目指す〉

 旭化成は、人工スエード「ラムース」の、2019年度上半期(4~9月)は主力のカーシート向けやコンシューマーエレクトロニクス(CE)向けの販売が引き続き好調だったと言う。

 年産600万平方メートル体制だったラムースを同1千万平方メートルへと増設。新設備による生産を今年8月スタートさせており、カーシートやCE向けの拡販で「年内に設備をフル稼働させられる」との手応えを示している。

 旭化成はいち早く人工皮革のエコ化を進めてきており、今後はデザイナーや消費者に分かりやすくアピールしていくためのツール作製を急ぐとともに、GRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)のような環境に関わる認証の取得を検討している。

 昨年はラムース事業をグローバルに拡大していくために米セージ社を買収。これまで以上に連携を深めながら米ビッグ3などへの販促を強化し、19年度はピックアップトラックなどを含む高級車ゾーンでの販売を2桁%伸ばす。

 欧州連合(EU)の著名ブランドをターゲットとする企画提案も重視しており、ある高級ブランドのスニーカーに採用されたという。欧州連合(EU)高級ブランド向けに裏地を販売するベンベルグ部門とも連携し、服飾資材向けの拡販を計画する。

 旭化成は19年度に新しい中期計画をスタートさせており、ラムース事業では1千万平方メートルへの増設を進めている最中に次の増設を表明。さらに400万平方メートルを上乗せし、21年度下半期に年産1400万平方メートル体制が滑り出す。

〈クラレ「クラリーノ」/自動車参入に意欲/新たにエコ素材シリーズ〉

 クラレは人工皮革クラリーノ事業で、有機溶剤を使わない、環境に優しい製造方法で生産する「ティレニーナ」の販促に力を入れてきた。

 しかし、無溶剤ということだけでエコを訴求するのは不十分との認識を示しており、再生ポリエステルなども導入する商品開発で環境配慮型の素材群拡充を進めてきた。

 このほど有機溶剤を使用しない「クラリーノ―TN」、再生ポリエステルによる「同―SR」、再生ナイロンによる「同―NR」を完成させ、2020年度(20年12月期)からの本格販売を計画。靴やバッグ、IT機器といった用途での販促に取り組んでいる。

 再生原料使いのラインアップに伴い、エコ素材としての新たなブランディングを実施。ティレニーナを同TNに改称した。まず基布を再生ポリエステルで商品化した溶剤タイプの販売を先行させ、顧客からのニーズが高まってきた段階で無溶剤タイプの販売を立ち上げる。

 SRでは、ペットボトル再生ポリエステルで基布を商品化した銀付き(本革調)・溶剤タイプの販売に着手。インテリア関係で既に採用が決まっていると言う。NRは再生ナイロン短繊維で開発した新素材。銀付き溶剤タイプで用途・販路開拓を急いでいる。

 同社はエコ素材の市場浸透、自動車関連用途への参入、海外拠点の増強を中期計画の重要課題に掲げている。カーシートのスペックを充足するスエードを完成させており、21年度からの本格販売を目指している。

 海外では、中国で年産1500万平方メートルの合弁企業ヘーシンクラレを展開しており近々、1200万平方メートルを増設し、20年後半からの量産を計画する。

〈帝人コードレ「コードレ」/欧米にエコ打ち出す/自動車用に光透過表皮材〉

 帝人コードレは人工皮革コードレ事業で、2019年度上半期(4~9月)は微増収を確保した。国内の一般靴やランドセル向けが低調だったものの、スポーツシューズ向けに展開するフィルムタイプでの拡販が全体を牽引した。

 下半期もフィルムタイプを伸ばすとともに、動物愛護の機運とともに人工皮革へのニーズが高まっているという欧州連合(EU)域でシューズやボール向けを増やす。

 サッカーシューズのトップゾーンが主力用途のフィルムタイプで、「かなりの高シェアを占めることができた」とみており、一層のシェアアップを目指す。

 同社は帝人の再生ポリエステルで商品化した基布を水系溶剤で造面加工した銀付きタイプ、水系溶剤で生産するフィルムタイプという大きく2本柱でエコ素材を展開する。

 両素材による企画提案を強化し、天然皮革から人工皮革へ転換しようとの機運を強めているという欧米のシューズやボール用途に浸透させる。

 欧米では、天皮が主流のタウンシューズやレディースシューズに人工皮革が使われ始めているという。ボールでは、欧米サッカーボールのユーザーからのエコ素材に対する引き合いが強い。

 同社は自動車関連用途への参入を目指した取り組みにも力を入れている。今年は東西の「人とくるまのテクノロジー展2019」にコネクテッドカー狙いで開発したフィルムタイプの光透過革調表皮材を出展した。

 光を透過しメッセージをクリアに表示する点が注目されたとしており、帝人・自動車関連部門との連携も強化し、数年後をめどに実際の販売を立ち上げを目指す。