メーカー別 繊維ニュース

特集 事業戦略1(4)/オーミケンシ/機能素材への特化進める/新しい「市場」「資源」「形態」を/取締役 素材事業本部長 兼素材販売部長 髙口 彰 氏

2020年02月26日(Wed曜日) 午前11時52分

 中国での需要減退を背景にレーヨンの国際市況が低迷している。オーミケンシの髙口彰取締役は「海外での市況がこれだけ低迷すると、汎用品で戦うことは論外になってきた」と指摘する。このため同社は得意とする機能レーヨンへの特化を一段と強める。新しい「市場」「資源」「生産形態」を開拓するイノベーションを起こすことを目指す。レーヨンのサステイナブル(持続可能な)特性を生かした提案に取り組む。

  ――2019年度(20年3月期)もあとわずかです。

 さまざまな要因があって厳しい年でした。原燃料の高騰から19年にレーヨンも値上げを実施しましたが、コストアップを吸収しきれませんでした。加えて中国のレーヨン市況が低迷し、国際的にわた値が下落しています。米中貿易摩擦などの影響で中国での繊維需要が減退していることや、中国の景気が落ち込んだことでコスメ関係などの内需も減少したことが要因でしょう。そこに新型コロナウイルスによる新型肺炎流行の問題も出てきました。今後、生産や販売の面でどれだけ影響が出るのか、まだ予測できません。日本国内に目を向けても、やはりアパレル関係の需要が低迷しています。

 そうした中で当社はこれまで機能レーヨンでさまざまな種まきをしてきました。しかし、まだそれが収穫できる段階にまでには至りませんでした。このため販売量が減少し、それに合わせて利益も減る形で推移しています。

  ――繊維を取り巻く環境が大きく変化しています。

 安全性や環境に対する意識が急速に高まっています。例えばレーヨンでも海外への販売では製造時に使用する原料や薬剤などに含まれる物質について細かく報告することが必要になり、さらに第三者認証を求められるケースも増えました。安全性に対する担保が要求されます。これは技術的な内容の開示にもつながります。可能な限り技術はブラックボックス化しておきたいメーカーの立場からすると対応に苦慮する面もあります。

 環境に関しては、やはりマイクロプラスチックによる海洋汚染問題がクローズアップされた影響で生分解性素材のニーズが高まっています、さらにリサイクル素材や技術への注目も高まりました。SDGs(持続可能な開発目標)への要求が世界的に高まっていますが、その浸透は想像以上の速度で進んでいます。メーカーとしてこの流れについていくことが重要です。

  ――レーヨンメーカーとして対応が必要になります。

 安全や環境に対する意識は、いずれも消費者からの要求だということが重要です。だからこそ開発の目線を一段と消費者目線にする必要があります。最終製品をにらんだ開発が従来以上に重要になり、ニーズをとらえてからの開発速度がポイントになります。そのために組織も変更し、開発から販売まで一貫でできる体制を作りました。また、外部との連携も重要です。現在、古紙をレーヨンに再生する開発を進めていますが、古紙の供給やリサイクル後の製品の販売で他の企業や公的機関とバリューチェーンを構築することを進めています。来期には量産体制を整えることが目標です。

  ――20年度に向けた課題や重点戦略は何でしょうか。

 海外でのレーヨン市況がこれだけ低迷すると、もはや汎用品で競争することが論外になってきました。このため一段と機能素材に特化する必要があります。ただ、機能素材は同時に高価な素材でもあります。そうなると、その商品価値が認められる市場に提案するしかありません。ターゲットを明確にする必要があるわけです。やはり高級ゾーンになるでしょう。こうしたターゲットを、特にアパレル向けでどれだけ増やせるかが重要になります。

 資材関係でもプラスチック代替などをターゲットにして革新的な素材の開発に取り組みます。当たり前の要求だけれども、これまでセルロースでは実現できなかった機能をどうやって可能にするかがテーマでしょう。産学連携も含めて既にさまざまな開発に取り組んでいます。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプログラムにも採択されているタイヤコード用カーボンナノチューブ(CNT)複合溶剤法セルロース繊維の開発もその一つ。今年中には中量産の試験設備の稼働をスタートさせる計画です。

 既存のビジネスモデルからの脱却が必要です。そのためには、新しい市場、新しい資源、新しい生産形態が求められています。それを実現するような本当のイノベーションがないと生き残れないと言えるでしょう。