メーカー別 繊維ニュース

2020年新年号(6)/わが社の期待商品

2020年01月06日(Mon曜日) 午後3時26分

〈開発と迅速供給を同時に/各種プロジェクト設置で/宇仁繊維〉

 生地製造卸の宇仁繊維(大阪市中央区)は今年も、国産に特化した生地を多品種・小ロット・短納期で国内外の顧客に提供する。これまでもこの機能を磨いて不特定多数の顧客の要望に応え、業績を伸ばしてきたが、「開発生地の高級化」を加えるとともに、その実現に向けて各種プロジェクト(PJ)を順次展開する。

 日本の各産地の織り・編み企業や染色加工場によるモノ作りは近年、納期対応に苦慮している。数十年にわたって縮小してきた生産スペースに加えて人手不足が顕在化しているからだ。宇仁繊維の宇仁龍一社長もこの現状は認識しつつ、「当社は供給のスピードを一層上げ、後加工による多品種化や提携工場の協力や備蓄による小口対応を推進する」と言う。「産地機能の維持発展に少しでも役立てれば」という思いもある。

 こうした方針の下で推進するのが、各種PJだ。第1弾の「ジャカードPJ」では播州や北陸産地への設備貸与、占有ライン化によって同織物の大幅増強に成功。販売もカットジャカードやジャカードオンプリントを中心に順調と言う。

 今期(2020年8月期)からはこれに加えて、小松マテーレとの提携によって定番素材に防汚やUVカットといった機能性を付与してスピーディーに供給する「テックPJ」、自社織機も置く石川県の提携工場をフルに活用した大口生産で値頃感を出した「オリジンPJ」をスタートさせた。デジタルプリントのPJも近日中に立ち上げる。

 納期問題により「生地が作れない」という事態すら発生している昨今、開発生地の高級化と同時に供給体制を強化する宇仁繊維への注目がさらに増しそうだ。

〈エシカル事業本格化へ/商材開発と連携を推進/ヤギ〉

 ヤギは全社を挙げてエシカルに取り組む。その指針として昨年春に「ヤギシカル」を社内で設定。環境配慮商材の開発、提案や、持続可能な社会を形成するための取り組みを推進している。今年はその動きをより活発化、本格化させる。

 ヤギシカルの設定に当たっては、社内で部署横断の委員会を組織した。地球環境保護のために、持続可能な社会の実現のためにヤギとして何ができるのか――を論議し、指標を策定した。そのアウトプットの場が各部署の個展であり、初出展した「北陸ヤーンフェア」であった。同フェアでは商材の訴求ではなく、「取り組みへの理解」を産地企業や同フェア来場者に深めてもらうことを第一義に置いた。理念の訴求という難しい試みだったが、「共感の声や問い合わせがたくさん寄せられた」と一定の手応えを得た。

 商材も充実一途。原料部門では以前からインド産など各種オーガニックコットンを取り扱ってきたが、このほど、「PBP(ピース・バイ・ピース・コットン)ヤーン・プロジェクト」を立ち上げた。通販大手のフェリシモと取り組んできたインドの農園への基金活動であるPBPを、さらに活発化させようという狙いがある。

 生地部門では、レンチングの環境配慮型繊維「エコヴェロ」とオーガニックコットンの複合を軸としたエシカル生地ブランド「フォレシカ」を昨年春に立ち上げ、11月には、フッ素化合物を使用せずに撥水(はっすい)加工を施した生地「シーズプロテックス」の販売を20秋冬向けから開始すると発表した。

 グループ連携でもエシカルを強く意識する。昨年7月には、カセイソーダを使わない有機精練加工を手掛けるタオル製造のツバメタオル(大阪府泉佐野市)を完全子会社化。ここでの連携を、綿糸販売の拡大とともにエシカル事業の幅出しにつなげる。

 その他、糸加工の山弥織物(浜松市)や生地商社のイチメン(東京都渋谷区)といったグループ会社とも連携して環境配慮商材を開発、提案し、各アパレル子会社でも原料、生地からの一貫化と同時にサステイナビリティー(持続可能性)の高い製品を打ち出していく。

〈「更なる量的成長」継続/松嶋ファスニング事業本部長に聞く/YKK〉

 米中貿易摩擦や世界的な暖冬もあり、アパレル市場は厳しい環境下にある。YKKの松嶋耕一取締役副社長ファスニング事業本部長に今年の課題、方針を聞いた。

  ――2019年を振り返ると。

 19年3月期でファスナー年間販売本数が初めて100億本を突破し「更なる量的成長」を実現しました。その一方で、一昨年の秋から米中貿易摩擦問題が浮上し、市場に警戒感が生じています。景気の減速感が強まり、消費マインドに悪影響を与えました。加えて世界的に暖冬となり、冬物在庫が増加。欧米向け加工輸出市場への販売や中国・新興国市場への販売が苦戦しました。

  ――英国のEU(欧州連合)離脱、ブレグジットもほぼ確実になりそうです。

 市場は慎重になり、様子見の状態です。衣料だけでなく、これは製造業全般に言えることではないでしょうか。

  ――20年の世界のアパレル市場をどう見ていますか。

 昨年に続いて欧米は暖冬傾向です。米国のクリスマス商戦の結果や冬物の流通在庫の状況など、情報収集しているところです。不透明感は昨年同様に強まっています。

 そうした中で、サステイナビリティー(持続可能性)の潮流は続いています。昨年12月にスペインで気候変動枠組条約COP25が開かれました。26に向けて国別目標が再提出されると思いますが、今後、消費者の環境意識がより高まり、顧客からの要望も加速していくでしょう。

 欧州のラグジュアリー市場は落ち着く兆しがあり、トルコも内需が回復傾向にあります。しかしブレグジット問題がどう影響するか。世界的にデニム市場がどうなるか。20年は国際情勢を含めて非常に読みづらくなっています。

  ――YKKとして今年の方針、課題は。

 「スタンダード」(ボリュームゾーン)向けの商品・モノ作りの競争力強化は継続していきます。「より良いものを、より安く、より速く」顧客に提供することで、更なる量的成長を目指すことに変わりありません。厳しい市場環境が続くと見込んでいるものの、顧客満足度をより一層高める活動を行うことで、顧客数を広げていくことができると考えています。

 また商品面では、サステイナビリティー(持続可能性)に関連するご要望が増えてきています。昨年4月には「ファスニング・サステナビリティ推進室」を設置しYKK全体で横断的な取り組みを進めています。サステイナブル(持続可能な)の視点からも高付加価値商品の開発に力を入れていきます。

  ――黒部事業所への投資も行っています。

 古御堂工場は24時間稼働モデル工場を目指して、工程内の物流の自動化やデジタル化などで、生産設備の無停止・無人・省人化に取り組みます。

  ――非衣料向けは。

 車両用・紙おむつ用・鞄などの汎用資材分野についても新たな需要創造につなげていきます。

〈「天日干し」をサステとして/産地活性化にもつなげる/柴屋〉

 生地商社の柴屋(大阪市中央区)は「天日干し」シリーズの拡販に力を注ぐ。これまでは独特の風合いや質感をアピールして人気を集めてきたが、「機械乾燥しない」ことが環境配慮につながることに着目。2020年の拡販戦略では各種データも示しながら、サステイナビリティー(持続可能性)の高い生地として訴求を強める。

 同商品は、生地の染色加工の最終工程として不可欠な乾燥を、機械ではなく実際に天日で干すもの。干す場所は静岡県の遠州灘周辺。紫外線や風によって「生地が傷む」ものの、逆にその粗野で独特な風合いが新しい切り口を求めるアパレルから好評を得ていた。

 こうした特徴はそのままに、エコロジーの観点を加えて訴求し直す。機械乾燥を経ないことで、重油、電気、水の使用量を大幅に抑制でき、二酸化炭素排出量も低減できる。機械乾燥時と天日干し時のエネルギー使用量の違いを数値で示すため、現在はデータ取りを進めている。

 奥野雅明社長は「今後は和紙使いなどと合わせてサステイナブル(持続可能な)素材として打ち出していく」と意気込む。アパレルなどでサステイナブル素材を求める声が高まっていることに対応するものだが、奥野社長は「この切り口自体が日本の産地活性化につながるかもしれない」と話す。

 天日干しには「相応の風と日光が必要」。遠州地方は「遠州のからっ風」という言葉があるほど風が強いことで知られ、日照時間も長い。「ここで作る意味がある」ということであり、この切り口が海外生産との比較の際に強みになる。「遠州以外にもその土地ごとに特徴があるはず」とし、今後もさまざまな切り口を探す。

〈注目高まる生産管理システム/サードパーティー製の強みも/ディーアイエスソリューション〉

 ダイワボウ情報システムグループのディーアイエスソリューションは、早くから製造業向け生産進捗(しんちょく)管理システム「TX―ネットⅢ」を販売している。繊維業界では織機モニタリングや検反データ管理システムとして豊富な実績を重ねてきた。あらゆる物がインターネットでつながるIoTへの関心が高まる中、生産工程のデータ収集に有効なシステムとして改めて提案を強めている。

 TX―ネットⅢは織機の糸切れ、回転数、停台要因などさまざまな稼働データを収集し、織り上がり予測なども自動計算する。検反データ管理システムもあり、織機の稼働データと連動させることで高度な生産管理が可能になる。これにより設備の非稼働要因分析、稼働状況の見える化ができ、データを生産効率改善のために活用することができる。繊維企業向けでは豊富な納入実績があり、近年はIoT化の流れを受けて再びニーズが高まりつつある。

 同様のシステムは織機メーカーも用意しているが、基本的に自社製品向けのシステムとなる。しかし織布企業の多くは複数のメーカーの織機を保有し、年式もさまざま。こうした設備構成では織機メーカーが提供する管理システムを導入するのは難しい。これに対してTX―ネットⅢはどのメーカーの織機にも搭載することができるなど、サードパーティー製の強みを打ち出す。

 停台情報を携行型端末に通知する機能も新たに実装した。これによりオペレーターの作業効率向上につながる。さらに今後はAI(人工知能)の導入も検討する。

〈インド拠点に強み磨く/サステや秋冬向けも対応/小泉アパレル〉

 婦人服製造卸の小泉アパレル(大阪市中央区)は、インドを拠点とする自社商品生産やOEMに力を入れる。同国製でサステイナビリティー(持続可能性)に対応したオーガニックコットン使いの製品提案や秋冬向け素材開発も進める。

 同社の主要生産拠点は中国で、仕入れ額の70%ほどを占めるが、次いで25%ほどがインド製となっている。同社は40年以上前からインドで衣料品の生産に取り組んできた。2007年には同国のメーカーの協力を得て検品センターを設け、11年には生産・品質管理を担う同社全額出資の法人、コイズミ・リエゾン・サービスをデリーに設けた。近年は同国内での糸や生地からの一貫生産にも取り組む。

 20春夏向けでは、インドで生産したオーガニックコットン100%のシャツやブラウスの織物製品をGMSへ卸売する。オーガニックコットンもインドで栽培されたもので、GOTS(グローバル・オーガニック・テキスタイル基準)認証を取得している。小売価格は通常綿使い並みに抑える。

 素材開発は、秋冬向けと合繊をテーマに取り組む。ポリエステル・レーヨン混でストレッチ性がある生地を使った製品も、同国で一貫生産できるようになった。秋冬向けではコーデュロイをはじめ、中わた、起毛素材も扱う。

 インドで生産した新ブランド「フェアリー・ムーン」をはじめとしたノンエージ企画にも力を入れ、専門店向けOEMやGMS向けを強化する。

 同社はGMSを主用顧客とし、卸売りと、コンセンショナリーショップ(GMSの中に同社ブランドのコーナーを設けて消化取引あるいは委託取引で販売)の運営を通じての販売を主事業としている。海原耕司社長は「インド生産とコンセのノウハウを掛け合わせて強みを磨く」としている。