メーカー別 繊維ニュース

不織布新書20春(3)

2020年03月19日(Thu曜日) 午後4時1分

〈東レ 不織布事業部/長短総合へ基盤固め/「アクスター」でも次を構想〉

 東レは4月からスタートさせる次期中期経営課題の実践で世界でもあまり例のない長短総合不織布メーカーとしてのポジションを固める。衛材、自動車関連資材、フィルターを軸に事業拡大に取り組む。

 現中計で主力の衛材向けポリプロピレン(PP)スパンボンドを当初計画通りに拡大。今後は中国やインドの新工場を立ち上げ、引き続き規模でアジアナンバーワンの座を堅持する。

 同時に質的充実も加速。滋賀事業場の試験設備を駆使した新規原反のラインアップを増強する。「従来にない新しい触感が少しずつ認知され採用が増えてきた」としており、衛材プレミアムゾーンでのシェアアップを計画する。

 ポリエステルスパンボンド「アクスター」でも積極策を考えており、主力のフィルターで高まると見通す高性能品への要求にはアクスターのアップグレードで対応。土木、建材向けの販売も伸ばし「次のステップに進みたい」考えだ。

 フィルターでは、中国のバグフィルター向けに展開するPPS繊維「トルコン」の拡販を計画。南通の東麗繊維研究所〈中国〉との連携で極細タイプ(0・9デシテックス)の市場浸透を目指す。

 短繊維による原反販売にも意欲を示しており、難燃・遮炎不織布「ガルフェン」による新展開を計画している。

〈三井化学/衛材用と産業用の両面で/高付加価値品を軸に成長〉

 三井化学の不織布事業部は、2020年度の基本方針として、衛材用途と一般産業用途の両面で販売拡大を志向する。衛材は厳しい市場環境が続いているが、柔軟高強度不織布「エアリファ」を中心に拡販に取り組み、産業用途はポリオレフィンの極細繊維を使った「シンテックスnano」を積極投入する。

 衛材用途の多くを占める紙おむつ市場は“爆買い”の消滅などで盛り上がりに欠け、同社不織布事業の19年度も市場低迷が響く。新型コロナウイルス感染防止からマスク増産の動きはあるが、パイは小さく、おむつの減少をカバーできずにいる。産業用途は産材開発室を設置して体制強化を図った。

 衛材用途で拡販を図るエアリファは、柔らかさと強さを兼ね備えた高機能不織布だ。独自のポリオレフィン紡糸技術を駆使して繊維を薄肉の中空構造とし、ソフト感や均一性を高めている。薄肉中空構造によって使用するプラスチック原料が削減できる。日本やタイなどでの供給体制を構築している。

 シンテックスnanoは極細ポリオレフィン繊維による新たな価値として提案しており、同素材を使ったメルトブロー不織布を高性能ろ材として提供する。産業用向けの不織布の生産は、グループ会社であるサンレックス工業(三重県四日市市)がメインとなる。

〈ユニチカ/原反の高度化目指す/環境配慮型を拡充〉

 ユニチカは2020年度からスタートさせる新しい中期計画で、環境に配慮した商品群の充実、「アクアパック」に代表される新商品の拡販、既存用途でのシェア維持を重点方針に掲げる。

 不織布業界でも今後は「サステイナブル(持続可能な)への対応が当たり前になる」と見通しており、既に販売する綿のスパンレース「コットエース」に加えて、主力のポリエステルスパンボンドでも自動車の軽量化に資する資材などの開発を重点的に進めたい考えだ。PLA繊維「テラマック」でもさまざまなアイテムをターゲットとする開発を急ぐ。

 コンクリート用湿潤養生シート「アクアパック」では、「全国各地から問い合わせがきている」と言い、20年度は当初想定通りの販売量を確保できると見通している。

 昨年から量産を開始した消臭「ユニダイヤ」、異形「ディラ」に続く高機能品のラインアップを目指すとともに、改めて「原反そのものの高度化を強化したい」考えだ。

 増設を終えたタイの拠点タスコは米中摩擦や新型コロナウイルスの影響を受けているものの、リサイクル素材使いを含む独自原反の品種拡大に取り組み、21年度中のフル稼働を目指す。国内生産品を合わせた輸出比率を40%前後に引き上げており、20年度で50%台に乗せたい考えだ。

〈東洋紡/水平連携で高度化狙う/CFにも乗り出す〉

 東洋紡は4月1日付の組織改正で生活・環境ソリューション本部を発足し、その傘下に本体や関連会社の不織布事業を配置する。これに伴う水平連携を推進し、複合品、多層構造品を含む特化素材の開発でスパンボンド事業の高度化を目指す。

 2020年度は前年並みの業績確保を目標に掲げており、重金属イオン吸着シート「コスモフレッシュNANO」での取り組みを強化する。

 ある大学と連携しNANOがどのような物質に効果を発揮するのかを確認するための実証実験を進めており、実験で得られたデータを改めて訴求し、早期本格販売につなげる。

 輸出拡大も計画する。昨年、米国に駐在員を派遣し市場調査から着手。メキシコでは外注拠点を確保し日本から輸出する原反を自動車資材に加工し米国に供給する新規商流を開拓している。東南アジアでも同様の取り組みを検討していく。

 周囲の環境によりマッチするよう、迷彩柄をプリントした防草シート「迷彩柄防草シート」を開発。「世の中に受け入れられるかどうかを問いたい」とクラウドファンディング(CF)による販促に取り組んでいる。

 CFでは、同シートが環境配慮型であることも訴求。長繊維不織布使いのため繊維が脱落しにくくマイクロプラスチック対策になることなどを打ち出している。

〈クラレ クラフレックス/メルトブロー21年でフルに/輸出拡大にも力〉

 クラレクラフレックスは2020年で中期計画の最終年度を迎えており、増設を進めるメルトブロー不織布での取り組みを重視。11月から新設備を立ち上げ、「21年中にフル稼働させる」との意欲を示す。乾式「クラフレックス・カウンタークロス」では、引き続き海外市場の開拓に力を入れる。

 メルトブロー不織布を年産1800トンから同2700トンに増設する設備投資を進めている。主力のフェースマスクで、かねて香港やドイツでの展示会出展を通じ新規ユーザー開拓に取り組んでおり、フィルターなどでの拡販も強化し21年中のフル稼働を目指している。

 メルトブローの新設備を既存設備のある西条工場ではなく岡山工場に導入。岡山で生産するスパンレース不織布やクラフレックス・カウンタークロスなどとの多層構造品の開発を急ぎ、新規用途・アイテムを掘り起こす。

 クラフレックス・カウンタークロスでは、この間、ワイピングクロス「カウンタークロス」を海外市場に売り込んできた。海外進出した日系外食チェーン店などへの販促とともに、食品関連の海外展への継続出展で新規販路を開拓。年々、販売量を伸ばしてきた。

 衛生管理への関心が高まるに伴い東南アジアでは今後も引き合いが増すと見通しており、20年はカウンタークロスの輸出で倍増を目指した販促ワークに力を入れていく。

〈ダイワボウポリテック/“環境”をテーマに開発/除菌関連で課題解決に貢献〉

 ダイワボウポリテックは世界的にサステイナビリティー(持続可能性)への要望が高まっていることを受け、不織布や熱接着繊維、不織布製品で環境を切り口にした商品開発を強化する。

 播磨工場(兵庫県播磨町)の原綿生産能力を生かし、ポリ乳酸(PLA)・ポリブチレンサクシネート(PBS)複合の熱接着繊維「ミラクルファイバーKK―PL」やダイワボウレーヨンのレーヨンの活用などを進める。PLA、PBSともに生分解性があり、成分の75%は植物由来となる。レーヨンも木材パルプが原料の生分解性繊維であることを打ち出す。

 同社を含むダイワボウグループ4社は4月1日付で中間持株会社の大和紡績と統合する。これを生かしてコットンの活用にも取り組む。国際綿花評議会(CCI)が認証する「コットンUSAマーク」で、不織布での認定サプライヤーとなった。こちらはフェースマスクなど製品での活用を狙う。

 紙おむつも重要分野。近年は特に大人用の需要が拡大傾向にある。大人用は乳児用以上に着用感などが問われることから、細繊度わた使いによるソフトタイプなど最適な商材の開発を進める。

 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を受けて除菌シートなど清潔・衛生のための商材への要望も急激に高まった。こうした用途に向けても積極的に取り組むことで社会的な課題解決に貢献することを目指す。

〈フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン/靴や建材向けを伸ばす/複合・加工で開発強化〉

 独フロイデンベルググループのフロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパンは2020年、建材や靴向けで拡販を計画するとともに、他の不織布との複合、後加工で原反の商品ライン拡充を進め新規用途の掘り起こしを急ぐ。

 同社はカーペット基布、建材、フィルター、靴・スポーツシューズなどを主力用途にグループの台湾工場から輸入するポリエステルスパンボンドを販売している。

 現在、本国が台湾工場を年産2万トンから同3万1千トンへと増設する設備投資に取り組んでおり、今年6月ごろから新設備が動き出す。

 新設備の稼働を踏まえ、20年はこの間、キャパシティー不足のため受注できなかった建材や靴向けを伸ばすことで、3~5年後と見通す台湾工場のフル操業に貢献したい考えだ。

 台湾工場に端材やB反をリサイクルポリエステル用の原料に再生する設備を構えており、かねて同社はリサイクル原料で商品化した原反の拡販に力を入れてきた。

 同社は靴・スポーツシューズ用の原反でGRS認証を取得している。スポーツシューズ系の欧米大手ユーザーにこの点を同社の強みとして打ち出しリサイクル原反の拡販を目指す。

 カーペット、建材などに続く新規用途の開拓を重視しており、そのために他素材との複合、加工で「少しひねった商材を充実させたい」考えだ。

〈ダイニック/多彩な技術を使い開発/インクジェットも活用〉

 日本不織布産業の先駆者であるダイニックは、1956年に不織布事業に進出して以降、多彩な技術を組み合わせた“個性派の製品”を開発・提案してきた。今後も優位性のある製品群を、自動車内装材やカーペット、家電フィルター、建築資材分野に積極展開を図り、成長へとつなげていく。

 同社の強みは開発力(機能付与)。多孔質化によって比表面積をアップする吸拡散技術や生乾き臭などを抑える抗菌防カビ技術は家電用フィルター分野で高い評価を獲得している。そのほか、自社工場に評価試験ルームを持ち、フローリング裏材の吸音性能などが検証できる。

 新商品の提案も強めており、インクジェットプリントで意匠性を高めたニードルパンチ不織布(NP)を訴求している。自動車の内装材やインテリア関連用途(家具やパーテーション)などが主体となるが、耐久性に問題はなく、市場での評価は高い。見本帳も新たに作成した。

 展示会用のカーペットも主力の一つ。埼玉工場(埼玉県深谷市)でNPカーペットを年間約300万メートル生産しており、このうちの80~90%が展示会場用やイベント会場用という。東京五輪・パラリンピック開催で大規模展示場が使えなくなるという逆風が吹く。カーペット設備を生かした新製品開発に活路を見出す。