メーカー別 繊維ニュース

2020年新年号/世界を見渡せば、市場はまだまだある

2020年01月01日(Wed曜日) 午後4時9分

 輸出と聞けば欧米や中国向け、そして中東の民族衣装向けを思い浮かべがちだが、日本の繊維を高く評価する市場は他にもたくさんある。事例を追った。

〈早くからアフリカに注目/現地キャラバンに乗り出す/カネカ「カネカロン」〉

 カネカがモダクリル繊維「カネカロン」でアフリカ市場に注目したのは80年代後半だった。セネガルの関税特区に進出したユーザーへの販売に着手し、当時のアフリカで力を持っていたレバノン人などとの取り組みにも広げた。

 資源バブルでアフリカ経済が急成長した2007年頃からカネカロンの販売はナイジェリア向けを中心に急増。現地の購買力拡大が続き、カネカロンの好調も7~8年に及んだ。その後の「リーマンショックの影響も受けなかった」と言う。

 原油安などによるアフリカ経済の混迷で16年頃から下降局面を迎えたものの、昨年で市況は底を打ち、カネカは再び成長路線を維持するための対策に取り組む。

 15年から始めたビューティーコンテストを見直しのため19年度は中断。代わりにインドのユーザーとともにクリスマス商戦をターゲットとするアフリカ3都市でのキャラバンを立ち上げ、カネカロンを直接、消費者にPRする販促に取り組んだ。最近は付け毛だけでなくウィッグ(カツラ)での需要が伸びているといい、主力のナイジェリア向けで拡販を計画するほか、周辺国への普及・浸透にも力を入れる。

 ポートフォリオの変革も重視しており、ヘアケア製品(ドライシャンプー)のアフリカでの販売を計画。現在は人手をかけて行っているカネカロンをウィッグに植毛する作業の機械化技術開発にも意欲を示す。

〈旭化成「ベンベルグ」/洋装にも照準/今後もインドに貢献〉

 旭化成のベンベルグ事業にとって、インド向けの販売は全生産量の30%弱を占める基幹ビジネスだ。「ベンベルグ」の売れ行きが良くなかった76年ごろ、マーケットとしてのインドに注目し、地道に商品開発、ユーザー開拓に取り組んできた結果、じわじわ販売量が増えていった。

 ビジネスの形態は原糸輸出。現地コンバーターが織って染めて民族衣装向けに販売する。織布、加工が難しいベンベルグを上手に料理してもらうまでの「技術指導が大変だった」と言う。

 長年の取り組みで民族衣装における強固なポジションを固めた旭化成。次に狙っているのは、洋装化への対応だ。インドでは民族衣装のテイストを残した婦人服が増えているといい、同社は洋装開拓への意欲を示すコンバーターとの連携で素材開発に取り組んでいる。

 一方でブランドとしての認知度向上も大きな課題。

 ファッション系専門学校への出前授業、卒業制作を対象とするベンベルグによるコンテストなどを続けてきた結果、「デザイナーの卵たちへ徐々に『ベンベルグ』が浸透してきた」との手応えを示す。

 インドにおける取り組みで国連開発計画が主導する「ビジネス行動要請」にも参画。今後もインドでの人材育成、雇用創出や経済への貢献に力を入れていく。

〈中東へファッション素材/ドバイ展に出続けて成果/宇仁繊維〉

 日本製生地への需要が中東にあると聞けば、トーブなどの民族衣装素材を思い浮かべるだろう。しかしそれだけではない。宇仁繊維は同地域へ、ファッション衣料用生地を輸出している。

 現地法人がある中国以外への輸出は、輸出専門部署として10年前に設けた営業第三部が担う。中東へのファッション衣料素材の輸出も同部が行っている。

 継続出展しているパリの「プルミエール・ヴィジョン」に、中東の女性バイヤー4、5人が毎回仕入れに訪れていた。それを見て同社は、中東で開催される展示会にも出てみようと思う。女性バイヤーの1人から、ドバイでファッション衣料素材の展示会が年2回開催されていることを聞き、4年前に初出展した。すると、同社が提案したようなカラフルな生地が他にはなかったため注目され、3日間の会期中の商談件数が100に達したという。同展にその後も出展し続けており、顧客は着実に増えている。

 同部は、パリ、ミラノ、ニューヨークで開催される有名生地展はもちろん、それ以外の都市で開催される展示会もウェブなどで探し、出展してきた。現在も、タイ、ベトナム、インドネシア、トルコ、ロシア、ドイツ、英国、香港などで開催される展示会に出展し続けている。中東での成果は、このような不断の努力のたまものだ。

〈糸を軸に新しい用途を開拓/インドのシャツ地を拡大/一村産業〉

 一村産業はポリエステル紡績糸でファッション用途の拡大を図る中、インドのシャツ地やマレーシアのスカーフなどの用途も順調に拡大している。特にインド向けのシャツ地は、従来のポリエステル綿混とは違う新しい商品として市場で受け入れられている。

 インドのシャツ地やマレーシアのスカーフなど新しい用途の開拓は、日本品でのトップシェアを持つ中近東向け織物輸出とも関連している。同社の商品展開はまず軸となる糸を決め、それをさまざまな生地に展開していく手法を取る。中東の民族衣装用はポリエステル短繊維織物が主力で、その紡績糸を使って別の織物を作り上げ、インドのシャツ地やマレーシアのスカーフ地に展開している。

 同社が扱うポリエステル紡績糸の約3分の1を中近東向けが占める。この数量を背景に紡績糸、生機でのコスト競争力を確保できることが、新規用途開拓の上で強みの一つとなっている。それを同社が持つ製織や染色加工などの生産背景やモノ作りのバリエーションを柔軟に使ってファッション用途へ展開してきたが、近年はさらに新たな用途に挑戦している。

 同社の上半期(2019年4~9月)は売上高が前期比9%増、営業利益が同30%増となり、この10年で2番目に高い水準を確保した。繊維事業も売上高が同8%増、営業利益が同40%増と好調で、各用途が順調に伸びた。

 背景の一つには従来の販売・商流を変えて新しい商流を構築する取り組みを続けてきたことがあり、藤原篤社長は「取り組みがうまく進み出した」と話す。インドのシャツ地もその一つ。従来はポリエステル綿混の領域をポリエステル短繊維に置き換える動きはあまりなかったというが、その提案が成果につながり出した。

 インドの気候では速乾性などポリエステルの機能性が生き、商品特性が受け入れられた。「中東のトーブと事業構造は似ている」というようにインドの高級シャツはオーダーメード主体で、価格的に受け入れられる余地があったこともターゲットに定めた理由の一つだった。

 今後、織物だけでなく、ポリエステル短繊維のトリコットを同市場に展開していく計画もある。現在、トーブ地で最も価格が高いゾーンはトリコット。「他社との差別化ができている商品」であり、そのノウハウを生かした生地をインドのシャツ地などに提案していくことを視野に入れる。