中国のアパレルブランド/在庫拡大、資金繰り悪化/新型コロナで深刻な打撃

2020年03月25日(Wed曜日) 午後1時11分

 中国のアパレルブランドが、新型コロナウイルスの感染拡大の打撃を受けている。店舗休業で春物の販売が進まず、在庫が拡大。2カ月近く店舗の売り上げがなくなり、資金繰りが悪化している。社会は正常化に向かっているが、冷え込んだ消費は簡単には戻らない。(岩下祐一)

 中国では、春節(旧正月)休暇が始まった1月24日から新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国の街から人影が消えた。集団感染が発生し、封鎖措置が採られた湖北省はもちろんのこと、上海などの大都市の商業施設でも閑古鳥が鳴いた。

 アパレルブランドの多くの店も休業に追い込まれた。フランス発の高級メンズブランド「ダニエル エシュテル」を運営する華創服飾は、春節から40日間、中国全土の約150店の9割を閉めた。

 消費への影響は甚大だ。2020年1~2月の社会消費品小売総額(小売店舗やネット通販の合計)は、前年同期に比べ2割減り、1994年に統計を始めて以来初のマイナスだった。そのうち衣料品は3割も落ち込んだ。

 実店舗が休業したことで、製品の在庫を持つブランドは春物処分に追われた。これまでネット通販を手掛けていなかった中小ブランドも含め、“直播(ライブ動画配信)”を活用したネット通販(ネット版テレビ通販)に一斉に乗り出した。

 大手の一部は、こうした販売で成果を上げている。スポーツ最大手の安踏体育用品は、社員や加盟店関係者など約3万人が個人間取引サイト「微店(ウェイディエン)」に店舗を開設し、日販1千万元近くを売り上げた。カジュアルブランド「ピースバード」の太平鳥集団も直播を積極活用し、日販800万元超を稼いでいる。

 もっとも、こうしたケースはまれだ。特に急ごしらえでネット通販を始めた中小ブランドは、経験不足などから効果は限定的で、失った売り上げをカバーできていない。

 ネット通販専業ブランドへの新型コロナの影響は相対的に軽微だが、消費マインドが低迷したことで、多くは芳しくない。アリババの通販サイト「淘宝(タオバオ)」専業の大手高級レディース「D家」の売り上げは回復傾向にあるものの、いまだ前年同期に比べ7、8割で推移している。

 在庫を持たないネット通販専業ブランドは、工場の再稼働の遅れで、製品の供給不足にも直面した。中高級レディース「ダディンコワ」を運営する青島紫墨服装の楊純総経理は「縫製工場が一時的に素材不足に陥った」と述べる。

 こうした中、中小ブランドを中心に資金繰りに苦しんでいる。高級セミオーダー「タオレイ ワン」の王陶董事長は、「キャッシュフローに悪影響が出ている。資金不足になれば、次の企画などに影響が出る。みんな同じ状況だと思う」と述べる。

 足元では国内での感染が抑えられ、社会は徐々に正常化に向かっている。ただ、いったん落ち込んだ消費マインドは簡単には戻らない。上海久光百貨の来店客数は、いまだ前年の4割程度。売り上げも生活必需品が中心で、アパレルなどは少ない。

 海外での新型コロナの感染拡大も懸念材料だ。輸出型企業が打撃を受け、景気が冷え込めば、ブランド各社も大きな影響を受ける。「街を歩く人がみんなマスクを外したときに、やっと正常化する」とあるブランド関係者は話すが、正常化は当分先になりそうだ。