メーカー別 繊維ニュース

特集 尾州産地総合(2)/アパレル、小売りに聞く尾州への期待

2020年03月26日(Thu曜日) 午後4時5分

〈三越伊勢丹/紳士MD統括部 新宿紳士営業部 ショップ担当 バイヤー 山浦 勇樹 氏/海外への高い発信力/ブランディングでさらに〉

  ――尾州産地との取り組みは長いですが、改めてどうご覧になっていますか。

 「ミラノウニカ」など海外の生地展に積極的に出展し、外への発信を強めていると思います。海外著名メゾンと取引する企業も幾つかある。尾州に限らず、世界のバイヤーが評価する日本の生地は、日本人バイヤーが期待するベーシックで価格が安くて普通のものとは明らかに違います。

 当社と尾州産地との重衣料を主体とした取り組みでは、製品としてのカッコ良さを想像しつつ互いに高め合える生地作りを追求しています。ビジネスシーン向けに加え、趣向性の高い装うスーツとしての開発が増え、来秋冬向けもツイーディーなものやビンテージ調、ファインな糸をあえて太引きでこなすなど多彩にチャレンジしています。

  ――尾州にとって課題と思われることは何ですか。

 技術力は高くアイデアも豊富ですが、ブランディングが苦手な点でしょうか。他の産地にも共通して言えるかもしれません。次のステップヘ進み世界で戦うには、クオリティーや色柄、ストーリーなど総合的にプロデュースする必要があります。明確なディレクションを持ったバンチ(生地見本帳)作りも不可欠です。オリジナルの生地開発を通して互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、その一端を担っていければと思っています。

  ――それにより尾州の職人的な技や感性も生きてくる。

 今最も世界で評価されている日本の職人は靴職人でしょう。欧州やアジアの20、30代富裕層が、高価でも2、3年待ってでも手に入れたいと熱望するビスポークシューズが人気です。そこまででなくとも、尾州の企業が自社の価値を高め売り上げを安定させるには、価値に見合った高い値段で売れるビジネスの構築が鍵になるでしょう。

 その有望な売り先の一つがテーラーです。尾州同様スーツ地が主力の英国とイタリアのミル(織元)、マーチャント(毛織商社)では明暗が分かれてきた。中間価格帯向け中心のイタリアは不調ですが、テーラー主体の英国は好調です。

 世界的評価の高い日本のテーラーも増えています。彼らが尾州の生地を使えば、欧州のテーラーの目に留まる機会も出てくる。テーラーとの接点作りでは、当社がお手伝いできる部分もあると思います。

 工場の稼働率の問題などもあるでしょうが、欧州のミルやマーチャント並みにストック・サポートし始めたら、手ごわい存在になるはずです。

〈オンワード樫山/メンズカンパニー 五大陸Div.長 後藤 優太 氏/世界トップの品質管理/伝えきれていない良さ〉

  ――尾州産地をどの ように見ておられますか。

 日本のモノ作りの代表的な産地です。例えば、「正確性」という点では、品質管理は世界でもトップレベルです。物性もそうですが、色柄の再現性といった点においても。日本人ならではの“きめ細かさ”に起因すると思います。

  ――色使いという面ではイタリアの評価が高い。

 日本でテキスタイルデザイナーは、ファッションデザイナーほどメジャーではありません。しかし、イタリアや英国では大学にもテキスタイルデザインの学科があります。カラーからシーズンを打ち出す提案力が弱いのもそのためです。

 産地には「こういうテクニックがある」と聞きますが、そこで止まってしまう。この技術を生かして、こうできる、こういう企画を提案するといった力が足りない。もったいない。

  ――提案力とともに ブランディングにも力を注いだ方がいいですね。

 欧米の企業は生地でもブランディングに注力しています。会社のロゴマーク一つをとっても、そのデザインに工夫を凝らしています。

 欧州は高速のレピア織機が標準です。日本は製織や加工にこだわり、織機にしてもシャトル機や、低速レピアを使用している。生産性よりも、風合いへのこだわりを優先しています。それをストーリーとして消費者に向けて伝えられたらいいのですが、伝え切れていません。糸の染色でも綛(かせ)染めがあります。時間をかけることで、糸がリラックスして染まり、風合いやストレッチ性にプラス面があります。

  ――尾州産地とサステイナビリティー(持続可能性)という観点では。

 やはり生産者の顔が見える点でしょう。トレーサビリティー(追跡可能性)ができる。20秋冬の「五大陸」では、サステイナブル(持続可能な)志向として新商品を出します。昨年、豪州の牧羊場を回って、シワになりにくい、軽いなどの生地を作るための原毛を探しました。この原料を尾州産地で染色し、生地にします。トレーサビリティーも明確で、安心・安全なモノ作り。かつ原料から一貫した生産となります。

 「J∞クオリティー」認証のスーツは、尾州の山栄毛織、新木染工さんの協力を得ました。こうした産地の皆さんとコラボレーションしたオリジナル素材で差別化していきます。