特集 アジアの繊維産業Ⅰ(5)/わが社のアジア戦略/富士紡ホールディングス/生産管理を高度化

2020年03月30日(Mon曜日) 午後3時48分

〈「BVD」生産の主力工場/藤岡 常務執行役員〉

 富士紡ホールディングスの繊維事業ではこれまで主力インナーブランド「BVD」の生産拠点として国内のほか中国とタイの子会社が重要な役割を担ってきた。近年、アパレル製品市場は流通構造の変化の波が押し寄せる。このため同社のインナー製品事業も改革に迫られる。アジアの生産拠点を活用した製品OEMの拡大など新たな取り組みの重要性が高まった。

 繊維事業統括である藤岡敏文常務執行役員によると2019年度(20年3月期)はBVDを中心とした製品の販売が減少傾向となった。「インナー製品は流通構造変化の影響を大きく受けている。BVDはGMSや量販店が主力販路だが、こうした取引先はいずれも衣料品売り場を縮小しており、さらに残された売り場でもプライベートブランド(PB)との競争も激化した」と分析する。

 一方、インターネット販売は拡大が続いており、既に自社サイトやネット通販モールを通じたBVDの販売は売上高の10%を占めるまでになった。このため引き続きインターネット販売や電話受注など新チャネルでの販売拡大がインナー製品事業の重点テーマとなる。

 流通構造の変化に合わせて事業構造を改革する中で、生産を担う海外拠点の役割も変わる。BVDはこれまで国内工場のほかはタイのジンタナフジボウ、紡績・編み立て・縫製のタイフジボウテキスタイル(TFT)が生産の主力。日本での販売数量が減少したことを受けて人員規模を適正化しながら採算を維持する戦略をとってきた。

 こうした中、ジンタナフジボウでは生産コスト管理を強化する取り組みを進め、19年度で新しい管理手法も確立した。紡績の生産管理手法を応用し、生産性やコスト、操業状況などを明確な数値で管理することが可能な体制になっている。生産管理を高度化したことを生かし、今後は「生産設備を生かした製品OEMの受注拡大を進める」と言う。

 TFTの紡績、ニット生地でもOEM受注の拡大を目指す。富士紡グループの糸販売は既に国内生産、海外生産ともに受注生産型となっているが、こうした流れをさらに加速させることになる。そのために紡績の生産体制の再編も検討する。

 タイではバーツ高傾向が続いていることや、最低賃金の引上げもあって他のASEAN諸国と比較して繊維産業の競争力が一段と低下傾向にある。こうした事業環境の中で競争力を維持する上でも生産管理の高度化による効率化は重要な意味を持つ。

 OEMの獲得で稼働率や採算を下支えしながら、BVDなど自社ブランドの販売拡大で製品事業全体の利益率を高める戦略が加速する。そのためにタイ子会社2社の役割は大きい。

〈中国の生産/体制も効率化〉

 中国での生産体制も効率化を進めた。従来は協力工場で委託生産する縫製の生産管理を富士紡〈常州〉服装が担っていたが、1月からこの機能を富士紡〈上海〉商貿に移管した。

 こうした生産体制の再編によって、筋肉質な事業構造を作ることを目指している。

〈タイフジボウテキスタイル/多能工化で効率高める〉

 タイ子会社のタイフジボウテキスタイルは紡績、編み立て、縫製の3部門を持つ。紡績は日本での原糸販売向けのほかインナーブランド「BVD」用が主力。編み立てと縫製もBVDの生産を担う。これまで進めてきた多能工化による部門間の人員配置効率化をさらに進め、生産性の向上に取り組む。

 2019年度の業績は増収増益を確保した。ただ、日本の衣料品市況が振るわないことから受注状況に勢いがない。このため20年度も受注状況に合わせた生産対応力の強化に取り組む。

 具体策の一つとして多能工化を進めることで部門間の効率的な人員配置を可能にすることに取り組む。こうした取り組みで20年度も増収増益を計画する。

 一方、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響への懸念も高まった。現段階でどれだけの影響があるのかは未知数とするが、マイナス方向での影響が出る可能性が高い。このため受注が大幅に落ち込んでも、可能な限りダメージを吸収できる体制づくりにも取り組む。

〈ジンタナフジボウ/生産・納期対応力を強化〉

 タイ子会社のジンタナフジボウは、インナーブランド「BVD」の主力縫製工場の役割を担ってきた。現在、定番品だけでなくシーズン商品や婦人物の生産比率を高めており、これまで以上に生産・納期対応力の強化に取り組む。

 現在、富士紡グループのタイでのインナー生産はジンタナフジボウのほかタイフジボウテキスタイル(TFT)が担っている。2018年にTFTが縫製能力を増強したことから、定番品を中心にジンタナフジボウから生産を移管した。

 このためジンタナフジボウは今後、シーズン商品や婦人インナーなどの生産を拡大する。生産品種が多様化することで従来以上に生産・納期対応力の強化に取り組む。

 生産性、コスト、操業状況を明確に数値化する管理手法も導入した。こうした取り組みで20年度は増収増益を計画する。