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特集 アジアの繊維産業Ⅰ(9)/わが社のアジア戦略/シキボウ/各拠点連携が加速

2020年03月30日(Mon曜日) 午後3時53分

 シキボウは今年1月、ベトナムのホーチミンに事務所を開設した。これによりグループ会社である新内外綿の海外子会社を含めると中国、インドネシア、ベトナム、タイに拠点を持つことになる。各拠点が連携することで、アジア地域での糸・生地販売の拡大を狙う。

〈海外でもSDGsを追求/加藤 上席執行役員〉

 シキボウ繊維部門の海外拠点は現在、中国に寝装品縫製の上海敷島家用紡織、寝装生地プリント・加工の湖州敷島福紡織品などがあり、インドネシアには紡織加工のメルテックスがある。新内外綿がタイに商社のJPボスコを持つ。

 加藤守上席執行役員繊維部門長は海外拠点に関して「2019年度は採算が改善し、海外子会社は全て黒字を維持している」と話す。

 加えて近年はベトナムでの糸の委託生産やニット製品の縫製も拡大を進めた。特に糸は特殊精紡交撚糸など高付加価値品の生産も可能となり、日本向けだけでなく現地での編み立て・織布・縫製に向けた販売にも力を入れている。こうした中、今年1月にはホーチミン事務所を開設し、現地での市場調査や情報発信によるマッチングなどの取り組みがスタートした。

 加藤上席執行役員は「これによりアジアにおける生産、販売の拠点を中国、インドネシア、ベトナム、タイに持つことになる。各拠点が連携し、東南アジアから欧米へのサプライチェーンに参画することが重要」と強調する。20年度はそのためのルート開拓に取り組む。特に高級ゾーンをターゲットにすることで国内生産する糸を東南アジアで編み立て・織布する可能性も模索する。

 世界的にSDGs(持続可能な開発目標)への対応が求められている。このため環境配慮素材の拡充を国内外で進める。特に科学的農法で栽培される米綿は最もサステイナブル(持続可能性)な繊維であることを打ち出していることを国際綿花評議会(CCI)が生かし、CCIが認証する「コットンUSA」マークの認定サプライヤーとしてマークを積極的に活用する。こうした取り組みも海外拠点が一体となって進めることになる。

〈注目高まる衛生関連加工〉

 新型コロナウイルス感染症の(世界的流行)でシキボウの抗ウイルス加工「フルテクト」などへの注目も急速に高まった。現在、マスクの増産を進めているが、加工への引き合いは海外でも高まる。メルテックスでも加工が可能なことから、アジア各地の拠点が連携することで社会的ニーズに応えることを目指す。

 もう一つ海外で注目が高まっているのが悪臭を芳香に転換する悪臭対策機能剤「デオマジック」。現在、中国の畜産業などに提案を進めており、現地の協力会社に量産設備も導入した。世界的に衛生への関心が高まる中、デオマジックの普及にも期待がかかる。

〈メルテックス 社長 藤井 英司 氏/連携でASEAN域内販売を〉

  ――インドネシアの繊維産業の現状は。

 米中貿易摩擦の影響で中国品がインドネシアにも流入しており、糸・生地全体に相場が下落しています。縫製のASEANシフトの話もありますが、他のASEAN諸国との競争もあって、インドネシアではまだ本格化には至りません。

  ――今後の課題と戦略は。

 当社は既に生産する糸の75%が精紡交撚糸になっています。こうした特殊構造糸や複合糸などローカル企業が生産できない糸や、それを使った生地が重要。それにより内販の拡大に取り組みます。ポリエステル・レーヨン混織物など現地ニーズに合った商品も拡充します。シキボウのホーチミン事務所とも連携し、ベトナムへの糸売り、あるいはベトナムの糸を当社で生地にするといったオペレーションも拡大します。新内外綿のタイ子会社であるJPボスコは再生セルロース繊維「テンセル」糸も扱っています。こうした連携でASEAN域内での糸・生地販売拡大を目指します。

  ――新型コロナ感染拡大の影響は。

 インドネシアの繊維業界でもかなり神経質になってきました。当社の抗ウイルス加工「フルテクト」への引き合いも急増しています。また、中国製生地を縫製して対米輸出していた保税工場の中には、原反の供給が滞ったことからインドネシア製生地で代替する動きが一部であります。こうした需要への提案も重要です。

〈ホーチミン事務所 所長 井口 勝雄 氏/独自性のある糸・生地を提案〉

  ――ベトナムの経済情勢は。

 ベトナム政府は2020年のGDP成長率見通しを6・8%としています。ただ、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響で7年ぶりに6%を割り込む可能性が指摘され始め、先行き不透明。米中貿易摩擦の影響で生産拠点が移転してきているというプラス面はあるが、新型コロナによる経済的ダメージは大きいでしょう。

  ――現在の活動状況は。

 1月から業務を開始し、市場調査や顧客開拓、PR活動を始めました。新型コロナへの懸念も含めてシキボウグループが提供できる商材の市場調査、商材の開発を進めます。米中貿易摩擦の影響で縫製は中国からベトナムを中心としたASEANへとシフトすることが予想されますから、そこに独自性のある原糸・生地を提案します。ベトナムでも排水規制など環境規制が一層厳しくなることが予想されます。環境配慮型商品やサービスの提供体制の構築が必要になります。

  ――新型コロナ感染拡大の影響は。

 中国との貿易が減少し、それが長期化すればベトナム全体に深刻な影響が出ます。繊維製品も中国から原材料を調達しているものが多く、納期面でも悪影響が懸念されます。このため日本向けは、インドネシアを含めた中国以外のサプライチェーンの構築を一段と進めることで悪影響をミニマイズすることが重要になります。