特集 アジアの繊維産業Ⅱ(1)/米中摩擦に新型コロナ 厳しさ増す環境/中国繊維産業の19年回顧と20年見通し/内需、外需ともに振るわず

2020年03月31日(Tue曜日) 午後1時22分

 2019年の中国繊維産業は、世界的なアパレル不振や米中貿易摩擦の影響で、外需、内需ともに振るわなかった。足元では新型コロナウイルスの感染拡大で、資金繰りが悪化する企業も増えている。19年の回顧と20年の見通しをまとめた。(上海支局)

〈生産〉

 国家統計局によると、2019年1~11月の繊維主要品目の生産量は、紡績糸が2679万トン(前年比0・5%減)、生地が443億㍍(2・2%減)で、共に前年を割った。15年から双方の伸び率は10%台前半から中ほどで推移し、18年はそれぞれ0・6%、1・4%に縮小していたが、ついに両者とも前年を下回った。

 化学繊維は5493万トンで13・5%増えた。大手メーカーが川上、川中投資を積極化したことが影響し、伸び率は前年同期に比べ5・9ポイント拡大した。

 一方、ASEAN地域への移管が続いている衣類生産は、布帛製が98億着で6・0%減ったが、ニット製は122億着で0・5%増とわずかながら前年同期を上回った。

〈国内消費〉

 中国国家統計局によると、19年の社会消費品小売総額は41兆1649億元で、前年比の名目伸び率は8・0%だった。うち衣料品(衣類・靴・帽子・ニット品)は、1兆3517億元で2・9%増えた。伸び率は前年から5・1ポイント下がり、消費の“アパレル離れ”が鮮明になった。

 政府系調査機関、中華全国商業情報センターがまとめる、百貨店を中心とする全国重点小売企業100社の19年衣類販売額の増減率は、0・7%増だった。18年は百貨店不振を受け、2・3%減だったが、わずかながら盛り返した。同販売額は、社会消費品小売総額とは異なり、ネット通販を含まない。

〈輸出〉

 中国紡織品進出口商会によると、紡織品(紡績糸・生地)と衣類(服飾雑貨含む)を合わせた19年繊維品輸出額は、前年に比べ1・9%少ない2718・94億ドルだった。16年以来3年ぶりに前年を割った。政情不安に陥った香港や、米中貿易摩擦の影響を受ける米国向けが落ち込んだ。ベトナム向けも3年ぶりに前年を下回った。

 下落幅が最も大きかったのが香港。輸出額90・76億ドルで、前年から27%も落ち込んだ。下落幅は前年に比べ21・8ポイントも拡大した。主因は、逃亡犯条例改正案をきっかけに19年春から始まった香港市民の政府への抗議活動だ。

 輸出額トップの米国向けは、452・06億ドルで7・7%減った。米中貿易摩擦をきっかけとしたASEANシフトが影響した。貿易摩擦を警戒し、18年に駆け込み輸出が増えたことも落ち込みの要因だ。

 「チャイナ・プラス・ワン」をけん引するベトナム向けは、19年は6・0%減った。前年割れするのは16年以来3年ぶり。現地で素材生産が充実してきたことが背景。

 輸出額2位の日本向けは198・98億ドルで、4・7%減った。アパレル不振やベトナムなどへの生産移管を反映している。

 エリア別で気を吐いたのが、中東とアフリカだ。双方とも200億ドルの大台を超え、日本向け輸出額を抜いた。両エリアでは、政府の広域経済圏構想「一帯一路」に呼応し、欧米向け縫製工場など中国企業の進出が続く。

〈輸入〉

 中国紡織品進出口商会によると、19年のアパレル(服飾雑貨含む)輸入額は、前年に比べ8・0%多い89・36億ドルとなった。伸び率は18年に比べ7・3ポイント縮小。欧州連合(EU)、ASEAN地域ともに堅調を維持した。最も伸びたフランスは、17・7%増だった。

 国・地域別輸入額でトップのベトナムは、16・39億ドルで、11・4%増えた。タイも16・7%増の2・66億ドルで、欧州や日本のメガSPAの製品を中心に、ASEAN品の流通が増えていることをうかがわせる。

 一方、消費のアップグレードを背景に高級ブランド品の輸入も堅調を維持した。イタリアは16・01億ドル、フランスは1・94億ドルで、それぞれ15・4%、17・7%増えた。

 9位の日本は、1・43億ドルで9・9%増だった。

 地域別ではEU(13・1%増)、ASEAN地域(9・8%増)が伸長した半面、中国からの紡織品(紡績糸・生地)の輸出が増えているアフリカと中東は、前年割れした。両地域の縫製工場が、欧米向けを中心に手掛けていることを示している。

〈20年見通し〉

 19年末から始まった新型コロナウイルスの流行で、20年は内需、外需ともに非常に厳しい立ち上がりとなった。

 中国海関総署がこのほど発表した貿易速報によると、紡織品と衣類を合わせた20年1~2月の中国繊維品輸出は、前年同期に比べ21・8%減の298億3千万ドルだった。紡織品、衣類ともに前年同期を割った。

 新型コロナ対策のため、中国全土で春節(旧正月)休暇から約20日間の“自宅待機”が続き、商業施設では閑古鳥が鳴いた。その後も消費マインドの回復は進まず、多くのアパレルブランドが資金繰りに苦しんでいる。

 中国繊維産業が出足の遅れを取り戻せるかは、国内外での新型コロナの収束と、消費マインドの回復にかかっている。