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特集 アジアの繊維産業Ⅱ(3)/インドネシア/内販、三国間販売が一段と重要に/在インドネシア日系企業の戦略

2020年03月31日(Tue曜日) 午後1時23分

 米中貿易摩擦の影響がインドネシアの繊維産業に重くのしかかる。中国から安価な糸・生地が流入し、競争が激化した。にもかかわらず日系繊維企業の間では、インドネシア内販やASEAN域内と欧米への三国間販売に活路を求める傾向が一段と強まる。背景にあるのは「日本向けだけに依存していては生き残れない」という強い危機感だ。

 国際通貨基金(IMF)によるとインドネシアの2019年の実質GDP成長率は5・0%となり、前年から0・1ポイント低下した。米中貿易摩擦による中国経済の成長鈍化が東南アジアにも波及する中、かろうじて5%台を維持した形だ。ただ、景況感は悪い。19年の自動車販売台数は103万126台(インドネシア自動車工業会調べ)となり前年比10・5%減と落ち込んだことは象徴的だろう。

 繊維産業の事業環境はさらに悪い。米中貿易摩擦の余波でアジア市場に安価な中国品が流入し、市況を下押しする。このため工場の操業停止や廃業するローカル企業も増加した。事態を重く見た政府は19年11月から繊維製品に対するセーフガードを発動している。

 こうした環境にもかかわらず、日系繊維企業の多くはインドネシア内販やASEAN域内販売など三国間輸出への志向を強めた。背景にあるのは日本国内の繊維市況低迷。多くの日系企業は日本向けに依存することに限界を感じている。

 米中貿易摩擦によって縫製のASEANシフトが続いていることから、ASEAN域内での販売拡大の余地は大きいという判断は各社に共通する。糸・生地から縫製まで一貫のサプライチェーンがあることもインドネシアの強みとなる。

 インドネシア独特の事情もある。インドネシアでは国内産業保護のために小売業に対して一定割合の国産品を扱うことを政府から要請される。このためインドネシアで販売拡大を目指している日系を含むSPAやアパレルは同国での生産・調達を増やさざるを得ない。こうした需要への期待も大きい。

 一方、課題も大きい。内販、三国間輸出ともに中国品や他のASEAN諸国、そしてインドネシアのローカル企業の生産品との競争が不可避であり、価格競争力では日系企業に勝ち目はない。このため、いかに他社が生産できない独自性のあるモノ作りを提案できるかが鍵となる。そのためには日本や他の海外拠点との連携が不可欠となる。

〈TYSM/インドネシア/新たなヒット商品を開発/ローカル企業への販売も模索〉

 豊島のインドネシア子会社、TYSMインドネシアは素材で差別化した製品の開発に力を入れる。これまで好調だったローゲージのセーターに続くヒット商品の開発に取り組む。

 安価な中国品の流入などでインドネシアの市況が悪化し、2019年度は同社も大きな影響を受けた。綿花販売など原料事業が紡績の稼働率低下で苦戦。糸・生地販売は上半期こそ好調だったが、下半期に入ってから失速した。日本向けの製品事業は中国との競争が激化して勢いがない。

 このため20年度に関して吉村修社長は「特に日本向けの製品事業は素材で勝負する」と強調する。製品はこれまでローゲージのセーターなどが販売をリードしていたが、ここに来てトレンドが一服した。このため特殊原料や紡績糸使いなどの開発を強化し、新たなヒット商品を生み出すことを目指す。

 一方で日本向け製品OEMや日系企業向けの原綿・糸・生地販売だけでは将来性に限界があるとの認識も強い。このためローカル企業への販売拡大の必要性が高まる。ただ、売掛金の回収などで課題も多い。こうした問題をどのようにクリアするかの模索も続けている。

〈信友インドネシア/内販、三国間貿易も視野/アジア拠点の連携進める〉

 信友のインドネシア子会社、信友インドネシアはアジア地域の拠点が連携することでインドネシア内販や三国間貿易の仕組み作りを模索している。

 同社はインドネシアの日系企業や現地資本企業への紡績糸・生地販売と信友がインドネシアで調達する紡績糸・生地の管理・サポートが主要業務。売上高の約80%が紡績糸、約20%が生地であり、加工・縫製後の最終仕向け地は日本が大部分を占める。

 日本の衣料品市況が振るわなかったことで、2019年度は同社の業績も前年実績を下回った。矢島洋幸部長は「日本の市況が良くなく、それに合わせてインドネシアでの糸・生地販売数量も減少した」と分析する。

 こうした中、インドネシア内販や三国間貿易の必要性が一段と高まった。「定番糸・生地で競争力を発揮するのは難しい。特殊構造糸や特殊混紡糸など独自性のある商品提案で市場開拓を進める必要がある」と話す。

 そのために信友のタイ・バンコク事務所などアジア地域の拠点が連携し、インドネシアだけでなくタイ、ベトナム、インドなどからも原料や商品を調達し販売する仕組み作りを進める。これにより東南アジア域内の織布・編み立て・縫製需要への糸・生地販売を目指す。