メーカー別 繊維ニュース

2020年春季総合特集Ⅱ(11)/top interview/オーミケンシ/専務 前田 利文 氏/生分解性繊維への要望拡大/レーヨン事業の利益率改善へ

2020年04月21日(Tue曜日) 午後5時6分

 オーミケンシは従来の“レーヨン繊維メーカー”から“セルロース総合メーカー”への転換に挑戦する。「サステイナビリティー(持続可能性)への要求がさらに加速することは間違いない。セルロースを核に衣食住全ての領域に入っていくことができる」と前田利文専務は指摘する。そのために産官学連携による革新的な開発を加速させる。(インタビューは3月31日)

  ――10年後の繊維産業や、その中でのオーミケンシの立ち位置をどのように構想していますか。

 現在、サステイナビリティーやSDGs(持続可能な開発目標)の実現への取り組みが不可欠になりました。こうした流れは今後も一段と加速するでしょう。そこで例えば生分解性素材への要望がさらに大きくなっていきます。レーヨンなどセルロース素材は天然由来原料を使用し、生分解性のある素材ですから、一段と注目が高まることが期待できます。

 そうした中で当社は従来の“レーヨン繊維メーカー”から、セルロースを核にしたメーカーへと位置付けを変えていくことを目指しています。そのため現在、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプログラムにも採択されているタイヤコード用カーボンナノチューブ(CNT)複合溶剤法セルロース繊維の開発に取り組んでいます。京都大学などと共同で高バリア性や耐水性を持つセルロースの研究開発にも取り組んでいます。セルロースナノファイバーを応用したもので、繊維だけでなくフィルム・樹脂にも応用が可能ですから、プラスチック代替としての需要開拓を狙えます。さらに可食セルロースの実用化にも取り組んでいます。こうした開発が進めば、衣食住全ての領域でセルロースを活用することができます。そうした領域に商品を供給するメーカーへと転換することが目標です。

  ――2019年度(20年3月期)を振り返ると。

 全体としては非常に苦しい1年でした。特にレーヨン短繊維事業が苦戦です。原料や薬剤などの価格が上昇するなどコストアップが続いたにもかかわらず、販売価格に十分転嫁することができませんでした。機能レーヨンの中国販売も伸び悩みです。中国では米中貿易摩擦の影響による需要減退と過剰生産でレーヨン短繊維の需給バランスが失調しており、市況が悪化しています。このためわた値も下落したままで、その悪影響が機能レーヨンの販売にも及んでいます。

 生活雑貨製品事業はオフィス通販向けが昨年12月まで好調でしたが、年が明けると勢いが鈍化しました。やはり景気後退の影響がじわじわと出始めたということでしょう。仏事・ギフト向けも苦戦です。特に仏事は家族葬の増加など葬祭の在り方が変わり、ますます需要が縮小しています。テキスタイル・製品事業も良くありません。特にカジュアル分野が苦戦です。最終製品の価格が上がらない中、当社のテキスタイル・製品の生産の中心は中国ですから、どうしてもコスト面で対応が難しい部分が増えています。

 そうした中で新型コロナウイルス感染拡大の問題も起こりました。中国での生産・流通活動がストップしたことで委託生産している商品の出荷が滞り、レーヨン短繊維の販売もストップしました。このため現地法人である近絹〈上海〉商貿の売上高も一時的に激減しています。

  ――20年度の課題と戦略は。

 やはりレーヨン短繊維事業の採算を改善することが最重要です。当面、レギュラー品の市況は改善が見込めませんから、やはり高付加価値品の比率を高める必要があります。高付加価値品のウエートを高めるためには、高付加価値品の生産・販売を拡大することと、低採算のレギュラー品を中心に生産規模をある程度縮小するという二つの方法があります。全体的な採算性を見ながら、バランスをとった生産と販売を行う必要があります。そして、高付加価値品を作るだけでなく、それをどこに、そのように売っていくのかを考えることが重要です。海外販売戦略も必要でしょう。中国に加えてカンボジアやベトナムに販路を広げることを考えています。一方、生活雑貨製品はアイデア勝負です。やはり付加価値の高い商品をどれだけ企画できるかにかかっています。

 ただ、新型コロナが収束の兆しを見せない中で、なかなか先行きが見通せません。東京五輪・パラリンピックも延期されましたから、その影響も出てくるでしょう。今期は業績の予想も難しいというのが正直なところです。一方で新型コロナの影響から除菌製品向けなどでレーヨン短繊維の受注が急増しています。今後は抗菌機能を持つキチン・キトサン繊維「クラビオン」などへの注目も高まる可能性が出てきました。こうした社会的要請に対しても応えていきたいと思います。

〈10年前の私にひと言/早くオーロラを見に行きなさい〉

 「それこそ10年前ぐらい前に妻とオーロラを見に行く約束をしたのですが、なかなか果たせずにいます」という前田さん。忙しさにかまけて、ついつい計画を先延ばしにしてしまい、最近は奥さんから“いつになったら連れて行ってくれるのよ”と文句を言われてしまったとか。「いつでも行けると思っていたのですが、そこで新型コロナ問題です。オーロラどころか、海外へ行くこと自体が難しい状態に。今となっては『早くオーロラを見に行きなさい』と言ってあげたいですよ」と笑う。

〈略歴〉

 まえだ・としふみ 1973年オーミケンシ入社。2004年執行役員加古川事業部長、06年生産・技術開発事業部長、10年取締役、17年6月から代表取締役専務。