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2020年春季総合特集Ⅱ(13)/top interview/ダイワボウレーヨン/社長 福嶋 一成 氏/持続可能性への要求強まる/商品ラインアップを整備

2020年04月21日(Tue曜日) 午後5時7分

 「今後、サステイナビリティー(持続可能性)への要求が一段と加速することは間違いない」――ダイワボウレーヨンの福嶋一成社長は強調する。こうした流れにレーヨンを武器に乗ることが同社の基本戦略となる。海水中生分解性レーヨンへの注目も高い。新型コロナウイルスの感染拡大を背景に抗菌や抗ウイルスの機能レーヨンへの関心も高まる。(インタビューは4月2日)

  ――10年後の繊維産業と、そこでのダイワボウレーヨンの立ち位置をどのように構想していますか。

 やはり世界の市場に打って出ることが不可欠です。日本の繊維産業は原料・テキスタイルに強みがありますから、その技術で存在感を発揮することが重要でしょう。そして世界的にサステイナビリティーへの要求が一段と加速することは間違いありません。こうした流れに対して当社はレーヨンという素材で乗っていくことを目指しています。例えば土中だけでなく海水中での生分解性を持つといった特性やリサイクルの技術などの重要性が高まるでしょう。

 人工知能(AI)などの発達によって、より精密な需要予測なども可能になるはずです。それにより繊維製品も従来のような過剰生産・大量廃棄が抑えられる時代が来るでしょう。そうした中でもしっかりと利益を確保できるモノ作りが重要になります。

  ――2019年度(20年3月期)を振り返っていただくと。

 日本国内は暖冬で衣料品消費が振るわず、中国でもレーヨン市況が低迷するなど厳しい環境が続きました。そうした中で、原料サプライヤーにも助けられて1月までは例年並みの業績を維持することができました。ところが2月以降は新型コロナの影響で状況が急速に悪化しました。アパレル向け、中国のコスメ向け、対米輸出いずれもオーダーが一時的にストップしています。このため売上高も減りました。

  ――20年度がスタートしましたが。

 新型コロナの感染が中国だけでなく欧米にまで広がったことで、対米輸出は商談も出荷もストップしています。コスメ用途を中心とした中国向けも一時的に止まっています。中国では不織布製品の製造・組み立てラインが衛生マスクの生産優先になっているためです。国内のアパレル向けも減少しています。日本でも感染拡大を防ぐために外出自粛が続けられていますが、そのために衣料品の店頭消費が大幅に減少するなど大きな影響が出てきました。この調子では、現段階でも今期は2カ月分の売上高が消滅するぐらいの想定で事業戦略を立て直す必要があります。

 一方、新型コロナの影響でやはり除菌製品向けなどの注文が急増しています。レギュラーわたが中心ですから決して採算は良くありませんが、社会的要請ですから応えていかなければなりません。同時に、今回の新型コロナの感染拡大を契機に清潔や衛生に対する社会全体の認識が変わるかもしれません。実際に国内外で抗菌や抗ウイルスといった機能を持つ当社の機能レーヨンに対する注目が高まっています。日本の機能素材の意義が世界でも評価されるようになるのではないでしょうか。そしてレーヨンは、機能付与を原料段階で実現できる点でメリットも多いはずです。そこで現在、抗菌や抗ウイルスといった機能を持つレーヨンの商品ラインアップを再整備し、改めて打ち出すことを進めています。

  ――サステイナブル(持続可能な)素材としてのレーヨンへの注目も高まりました。

 海水中での生分解性を確認したレーヨン「エコロナ」を採用した商品企画もアパレルで始まりました。衣料用途だけでなく不織布向けでも通常のレーヨンからエコロナに原料を切り替える動きがあります。食品接触時の安全性認証「ISEGA」も取得していることから食品包材用途でも提案を進めています。使用済み綿製品などを原料として活用するリサイクルレーヨン「リコビス」も特に海外で注目されています。既に環境関連のイベント商品などで採用もありました。引き続き提案を進めていきます。

 商品だけでなく生産プロセスにおける環境負荷低減にも取り組まなければなりません。例えば漂白工程も非塩素による処理を増やしていく考えです。従来、ビスコース法によるレーヨン製造プロセスは環境負荷が大きいとされてきました。しかし当社では既に薬剤や副生物の回収・処理などで環境負荷を低減する設備投資や取り組みを実施しています。まだ消費者やアパレル・流通の間ではレーヨン=化学繊維という認識が強く残っています。レーヨンが天然由来原料による生分解性素材であり、製造プロセスも環境負荷低減に配慮していることを改めて打ち出すことで、環境配慮素材としてのレーヨンの存在を広く認知してもらうことにも取り組まなければなりません。

〈10年前の私にひと言/グループ全体を考えるのが基本〉

 2010年、旧・大和紡績はダイワボウ情報システムと経営統合しダイワボウホールディングスが発足する。11年にはオーエム製作所も加わり、ITインフラ流通、繊維、産業機械の3事業体制に。戦略事業推進室長として3事業の連携に取り組んだのが福嶋さんだった。「全く性格の異なる事業の連携はハードルも高かった」と振り返る。ただ、結果として「ファイバーを軸に繊維事業の連携は急速に進んだ」とも。「グループ全体を考えるのが基本。これは次の10年を支える人たちにも考えてほしい」と話す。

〈略歴〉

 ふくしま・かずなり 1982年大和紡績(現ダイワボウホールディングス)入社。2011年ダイワボウホールディングス戦略事業推進室長、13年ダイワボウレーヨン専務、16年大和紡績取締役兼ダイワボウレーヨン社長、17年6月から20年3月までダイワボウホールディングス執行役員。