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2020年春季総合特集Ⅲ(1)/繊維産業 10年後の未来/次世代自動車産業に貢献している/「CASE」が生み出す新たな商機

2020年04月22日(Wed曜日) 午後4時16分

 これからの自動車産業の方向性を示す「CASE」。遠い未来の自動車の姿ではなく、実現が目前に近付いてきた。CASEという言葉が登場して数年が経過し、概念も一部変わりつつあるが、多くの企業・産業が新たな商機と見て、さまざまな角度からの参入を試みている。素材・材料で自動車産業を支える合繊メーカーにもチャンスは広がっている。

 「CASE」は、コネクテッドの「C」、自動運転の「A」、シェアリングの「S」、電動化の「E」を組み合わせた造語。2016年に登場した言葉で、自動車産業の将来を占う重要な鍵を握り、自動車メーカー各社はもちろん、材料を供給する素材メーカーの事業の方向性を示すキーワードとされる。

 CASEを目指す背景には従来の延長線上では産業が成り立たなくなるという自動車メーカーの危機意識があったと言われる。とはいえ、16年から4年が経過した今も「想定されていたほど進展していない」との声が聞こえるのも事実で、中には「CASEという言葉が一人歩きしている」と指摘される。

 その概念も変わりつつある。その典型とも言えるのがコネクテッドのCで、自動運転のAと切り離すことができない密接なかかわりがある。

 一つは道路交通情報をリアルタイムにカーナビに届けるシステム「VICS(ビックス)」、アクセルやブレーキ操作を自動で行う「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」などの車のコントロールに関するもの。これらの技術を活用した自動運転の実用化を自動車メーカーが中心になって目指している。

 もう一つがインフォテイメントだ。主に自動車(車載システム)について用いられる語で、「情報の提供」と「娯楽の提供」を実現するシステムの総称を指す。こちらは自動車メーカーではなく、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)の主導権争いになっている。

 コネクテッドと自動運転にあるこの二つの大きな流れに加えて、忘れてはならないと言われているのが、ドライバーと自動車を結び付けること。ウエアラブルデバイスを通じて計測・数値化した人間のバイタルデータを自動車とつなぎ、事故を未然に防ぐことなどが求められる。

 自動運転については、ドライバーがすべてを操作するレベル0に始まり、レベル1(システムがステアリング操作、加減速のどちらかをサポート)~5(場所の限定なくシステムがすべてを操作)までがあるが、どこまで進むかは未知数だ。ある地点からある地点だけを低速で結ぶロースピードビークルの考えも出てきた。

 シェアリングのSは海外を中心に広まり、国内でも少しずつ浸透してきた。ただし、新型コロナウイルスの世界的な流行がシェアリングの方向性を変える可能性も出てきた。エレクトリックのEはこれまでの電動化だけでなく、広く「エナジー」と定義が変わるかもしれないといった意見も聞こえてくる。

 CASEは概念を変えながらも進展を見せる。当初の想定ほどのスピード感はないかもしれないが、素材メーカーは「実現に向けて着実に進んでいる感覚がある。チャンスも大きくなっている」と手応えを示す。

〈東レ/素材・材料で産業支える〉

 東レは、「CASE」という言葉が登場する以前から「軽量化」「電動化」「快適性」「安全性」に資する材料・素材を自動車産業に提供してきた。特に炭素繊維複合材料は軽量化に対して貢献を続けており、「業界内でも十分認知されている」と自負。今後も素材・材料で、自動車産業を支える。

 CASEについて同社は「当初のスケジュール通りかどうかは別として着実に進んでいるという感覚」と話し、「技術と素材の開発は盛り上がっている」との認識を示す。同時に競争もこれまで以上に熾烈(しれつ)になっているが、「どのような需要、要求があったとしても対応できるよう準備」を進めている。

 軽量化や安全性などに加えて、ニーズが拡大するとみるのが車内空間の快適性向上だ。従来の運転席が“応接間”のようなイメージに変わり、スエード調人工皮革「ウルトラスエード」をはじめ、ファッション分野や家具・インテリア分野で評価されている素材の引き合いが強まっている。

 炭素繊維複合材料やエアバッグの展開にも継続的に力を入れるが、ポイントとして浮上しているのが環境対応。リサイクルはもちろん、バイオ由来原料の使用にも焦点が当たり、ウルトラスエードやグループ会社であるアルカンターラ社(イタリア)の「アルカンターラ」などに好機が訪れているとした。

〈帝人/幅広いシーンで活躍〉

 帝人は、「CASE」のそれぞれで「チャンスが大きくなる」と捉えている。自動運転関連では豪州のスタートアップ企業とコラボレーションによる低速電気自動車(LS―EV)を製作した。超軽量ボディーやシンプルなシステムなどが特徴だが、同社グループのさまざまな素材・材料を生かしている。

 LS―EVはあくまでも一例にすぎず、自動運転だけでなく、幅広いシーンで同社グループの素材の活用の余地が大きくなっている。

 コネクテッドではアラミド繊維の採用が増えそうだ。パラ系アラミドでは「トワロン」が光ファイバー用ケーブルに用いられる。「テクノーラ」を複合した強化プラスチックは軽量であるほか、絶縁性があり誘電率が低いため電波障害が起こりにくいことから広く浸透する可能性がある。

 シェアリングについては、新型コロナウイルスの世界的感染拡大で潮目が変わると予想する。シェアという大きな流れは変化しないものの、「パーソナライズ化が求められるようになる」とし、シートの“着せ替え”需要などに対応していきたいと話す。

 Eについては電動化だけでなく、エネルギーと広義に捉える。エンジンとモーターの覇権争いが続くとみるが、モーター分野ではアラミドペーパーやメンブレンといった素材が活躍できると強調する。