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2020年春季総合特集Ⅳ(4)/top interview/豊島/社長 豊島 半七 氏/今よりも成長した企業へ/サステや海外販売などを推進

2020年04月23日(Thu曜日) 午後3時14分

 豊島の豊島半七社長は10年後の同社の将来像として「今よりも成長している企業になっていたい」と語る。そのためにも世界的な潮流となっているサステイナビリティー(持続可能性)やトレーサビリティー(追跡可能性)への取り組みを同社の社会貢献の姿勢としてアピールする。さらに、各国のニーズに合わせた商材を提案するなどして海外販売の強化も今まで以上に進める。新型コロナウイルスの感染拡大が進む中、「当面は供給責任を果たすことが最重要」と強調する。(インタビューは4月1日)

  ――10年後に繊維産業はどうなっているのか考えをお聞かせください。

 原料から製品までを含めた繊維産業を考えると、もちろんなくなってはいないでしょう。日本は少子高齢化によって人口が減少していますが、世界的に見れば人口は年々増えていますからね。そうした中で生き残れる企業にしていくことが大事になります。あくまで日本の市場が主力ですが、アジアや欧米などの市場も見据えて戦略を練っていくことがより重要になるでしょう。

  ――それを踏まえて貴社の10年後の将来像を教えてください。

 正直、半年先のことも分からない状況の中で10年後はなかなか考えにくいですが、あえて言うなら今よりちゃんとした企業でありたいです。現状では新型コロナの感染拡大や市況の悪化など極めて厳しい状況にありますが、今よりも発展し成長している企業となっていればいいですね。

  ――世界中で新型コロナ感染が広がっていますが影響はありますか。

 この状況は相当長引くでしょうね。今までの日常は生活面もビジネス面も劇的に変わるでしょう。当社で言えば、在宅勤務については会社のパソコンを自宅に持ち出すということでセキュリティーの問題がある上に、どうしても仕事の効率は落ちてしまいます。デザイナーやパタンナーはそのパソコンも持ち出せず出勤せざるを得ませんので、行政が求める在宅勤務を実現することはなかなか難しい面もあります。

 巣ごもり消費などでネット販売は好調ですが、それも現状では綱渡りの状態と言えるかもしれません。今は国内の物流も動いていますが、感染拡大が進めば運送できず物流が停滞する可能性もありますから、私としてはあまり楽観視していません。ただ、当社のお客さまの中にもネット販売が好調な企業はありますので、そうした方々に迷惑を掛けないためにも、物流が動いているうちは責任を持ってきちんと商品を供給していきます。

  ――さて、今期(2020年6月期)の業績見通しはいかがですか。

 第三四半期までは製品が好調なこともあり堅調に推移しましたが、新型コロナの影響もありそれ以降は厳しい状況です。そのため通期では減収を見込んでいます。綿花相場も1ポンド50セントを割り込む水準にまで落ち込んでおり、今後さらに厳しくなる可能性もあります。ただ、営業の方は本当に頑張っており、12月半ばまでは営業・経常利益ともに過去最高益になると思っていたのでそれを考えると大変残念です。ただ新型コロナの影響で厳しい状況の中ですが、良いお客さまに恵まれていると感じます。大多数のお客さまが納期遅れの分もキャンセルせずに「きちんと引き取ります」と言ってくれている。それは本当にありがたい話で、こんな時だからこそ余計に感じますね。

  ――サステイナビリティーを打ち出す企業が多い中で、いかに差別化するかが重要ですが取り組みを教えてください。

 持続可能性を考えたときに天然由来の素材はもちろん、出所が明らかで流通や生産の工程がはっきりしているものが本来のサステイナビリティーであり、エシカル(倫理的)であると考えます。サステイナビリティーということを突き詰めていけば、結局はそれがトレーサビリティーにつながります。トレーサブル(追跡可能な)かつサステイナブル(持続可能な)な素材。そこが他社とは少し違うところで、当社の企業姿勢として訴えています。売り上げとしてはごく僅かですが、これからもそういう会社であり続けたいです。

 具体的にトルコ産のオーガニックコットンは1年以上という時間を掛けて準備してきました。きちんとコンセンサスを取ってトレーサビリティーを実現しています。廃棄食材を活用する「フードテキスタイル」も厳格な管理でどのような流通工程を経たのかが分かる仕組みを構築しています。昨年12月にはWWF(世界自然保護基金)とパートナーシップの締結もしました。幾つかのブランドからは既に声も掛かっています。

  ――昨年12月からクラウドファンディングを展開するマクアケとの協業も進めています。

 新しいビジネスを模索する中、ボトムアップで自然派生的に出てきたことです。若い社員が主動しており、特にウール製のマスクは好調で最終的に3千万円以上の支援が寄せられました。ボトムアップの良い成功事例になったと思います。アイデアを出せば取り上げてくれるという風潮が若い社員に広がったので良いきっかけになりました。

  ――国内の衣料品市場が減少する中で海外販売はこれまで以上に重要性を帯びていますが今後の戦略を教えてください。

 香港や上海といった海外の拠点はもちろん、国内の部署も視野に入れて、それぞれが得意とする商材を提案していきます。サステイナブル素材なら欧米向けに提案するなど、どのマーケットを狙うかによって臨機応変に対応することが重要だと考えます。新型コロナの影響で先行きは不透明ですが、やれることをやっていくことが大事です。

〈10年前の私にひと言/大きな判断ミスなくホッと一息〉

 「大きな間違いがないから今があるんだ」。10年前を振り返るとリーマンショックの直後でその余波がまだ残っており、大変な状況が続いていた。現在の新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な不況と重なる部分もある。さらに、ちょうどその頃は同社がインドネシアに進出したとき。しかも、ほかの企業が撤退する中での決断だった。長期出張で2年近く綿密な調査を実施し進出に向けて準備を進めてきた。「今思えば判断ミスではなかったんだ」と胸をなでおろす。

〈略歴〉

 とよしま・はんしち 1985年豊島入社、90年取締役。常務、専務を経て、2002年から現職。