2020年春季総合特集Ⅳ(8)/top interview/モリリン/社長 森 正志 氏/変化する市場に臨機応変に/一貫生産背景強みに総合力結集
2020年04月23日(Thu曜日) 午後3時17分
モリリンの森正志社長は繊維産業の将来について「サプライチェーンの構造変化に対応できなければ厳しい」と指摘する。その中で「変化する市場に臨機応変に対応することが必要」と話す。原料や原糸、ファッションや産業資材まで、一貫した生産背景を強みに手掛けるオールモリリンの総合力を結集。10年後の将来に向け、全社を挙げた議論をスタートする。(インタビューは3月24日)
――10年後の日本の繊維産業をどのようにみていますか。
厳しいの一言に尽きますね。その中で個性派と言われる企業や、独創的な光るモノ作りを行う企業は存続するでしょう。
サプライチェーンの構造も大きく変わるでしょう。現状の主要販路も10年後は先細りになる可能性も高い。時流に対するアンテナの感度を高め、ビジネスの整合性を常に意識し変化に対応することが大事です。
ファッションは多様化・細分化が進みますが、産業資材といった非衣料分野は伸張が見込めるのではないでしょうか。その分野に繊維産業の可能性はあると思います。世界の市場に目を向けると、中国と人口増加が続く東南アジアに商機が広がるでしょう。
――その中で、10年後へのビジョンと取り組みについて教えてください。
原料から製品までの一貫した生産背景を強みとし、次々に変化する市場に臨機応変に対応し続けることがモリリンの使命だと考えます。事業単位での対応が前提ですが、オールモリリンとしての総合力を結集することが大事になります。
次に、将来に向けてモリリンがどう変わらなければならないかを、今から全社で議論する必要があります。2021年度から新たに中期3カ年計画を実行しますが、今期はその骨子をまとめる準備期間に充てます。営業部署単位の「縦」と、若手・中堅・女性といった「横」の単位での意見交換を行います。その集約を10月に行う予定です。
今回の人事で幹部クラスを若返りしました。今後10年の各事業の在り方や将来を想像しつつ運営と指揮に当たってもらえるよう期待しています。
――改めて、20年2月期の業績はいかがでしたか。
前年比で減収でしたが、増益を確保できそうです。昨年は台風や暖冬といった天候面の不順に加え、消費増税もあり店頭状況は厳しかったです。その中で売上高を伸ばすのは難しいため、採算重視の取り組みを行った結果利益は計画通りに推移しました。
――今期の方針を教えてください。
まずは適時・適価・適量の商品供給を徹底します。顧客のニーズに合わせた商品計画と、ロスの排除を徹底的に行います。
温暖化や暖冬を踏まえMD(商品計画)の見直しを進めます。既存のMDでは単価の高い冬物に偏重となり、店頭消化が進まずミスマッチが起きる。春・夏・秋の3シーズンを意識した提案に変更することが肝要です。
さらに、自己を高める意味でも新しい人脈構築に努めてほしいです。一例ですが、取引先の経営者から政策や考え方を学ぶのも大事です。新たな商売のヒントが得られるかもしれません。
海外には中国・インドネシア・タイ・ベトナム・カンボジアと拠点があります。国内だけでなく、海外拠点間の連携をより深め、現地での内販活動も強化します。
――事業別の展望はいかがですか。
マテリアルグループ(G)は糸と生地販売は減少傾向です。半面、合繊メーカーとの取り組みは順調に推移しています。そのパイプを生かしつつ、新しい商流の構築を目指します。
オレフGとクリエイティブGは、ベーシック性の高い商品の適切な供給体制を整えます。それぞれの顧客に沿った付加価値のある提案を行います。
リビングGはテレビショッピングやネット通販を中心に堅調に推移しています。今後も新規販路の開拓へチャレンジを続けます。
繊維資材Gも主力のミシン糸やユニフォーム事業が堅調です。産業資材Gは内装資材や農業用資材で新たな販路と用途拡大に注力しています。非衣料分野の開拓を担う面でも、将来はより大きな柱になるのではと期待しています。
――働き方や環境への取り組みにも注力していますね。
今年3月に「健康経営優良法人2020(大規模法人部門)」の認定を頂きました。今後も従業員の働きやすさや健康面に配慮しつつ、福利厚生の見直しや業務の棚卸しを行い、満足度や生産性向上に努めます。今期より「ホワイト500」の取得に向け「健康経営推進委員会」を立ち上げます。
日本ユネスコ協会連盟の維持会員として活動を支援しています。環境保全やサステイナビリティー(持続可能性)に配慮した企業活動はマストです。モリリンとしても将来に向けて何を残せるか、持続可能な社会の創造を続けます。
〈10年前の私にひと言/変化対応への連続。拡大は将来に〉
社長に就任して丁度10年を迎える森さん。当時は「モリリンをさらに大きくする」意欲に満ちあふれていたが、振り返ると「市況に伴う変化への対応の連続だった」と言う。当時の製品の主な販路は量販店だったが、セレクトショップや専門店にシフト。ウールや綿糸の販売も大幅に減り、丸編み生地の受注も減ったが、合繊メーカーとの取引でカバーした。森さんはモリリンの将来を考える社内の委員会で、近くこの10年の歩みを発表するそうだが、「拡大への夢は将来に託す」と話す。
〈略歴〉
もり・まさし 1980年モリリン入社。95年取締役、2004年常務、07年専務、09年副社長。10年11月から現職。