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2020年春季総合特集Ⅳ(12)/top interview/宇仁繊維/社長 宇仁 龍一 氏/人は服を着る⇒生地が必要/各種プロジェクトを強力推進

2020年04月23日(Thu曜日) 午後3時20分

 宇仁繊維は今期(2020年8月期)を初年度とする5カ年計画をスタートさせた。売上高を単体で100億円(現状は74億円)に、グループで120億円(同94億円)に引き上げる。そのために、各種プロジェクトを立ち上げ、生地の高級化も進めて大手ブランドとの取引拡大を狙う。宇仁龍一社長に今後の戦略を聞いた。(インタビューは3月17日)

  ――10年後に業界はどう変わっているか、貴社がどうなっているべきか、展望してください。

 人は裸では歩かない。これはおそらく不変です。衣料品とそれを作る生地はいつの時代も必要だということです。10年後には日本の経済も発展していると思いますので、今よりも高級品が台頭してくるはず。それを皆と一緒に作っていく。そういう会社になっていてほしいですね。当社がここ数年生地の高級化を方針に掲げているのはそのためです。

 日本のモノ作りに関しては、その規模は縮小しているかもしれません。ただ、コストダウンを徹底し、人間味が感じられるようなモノ作り、物語のあるモノ作りをしていけば、活路はあると考えています。

 サステイナビリティー(持続可能性)も重要なテーマになっていきます。人間が地球との共生を真剣に考えなくてはいけない時代に突入しています。そこに繊維製品も関われるはず。これまでと同様、楽しみながら、生地に特化しながら10年先を見据えていくつもりです。

  ――上半期(2019年9月~20年2月)が終わりました。

 単体の売上高は37億円で、前年同期比1%減、売上総利益も1%減です。環境が良くない中では健闘できたほうだと思います。健闘できたのは、ジャカード生地の増強など各種社内プロジェクトが進展し始めたためです。伸ばしたかった輸出は3%減でした。本来であれば商量の大きい2月が特に苦戦しました。欧米市況の悪化に新型コロナウイルスの感染拡大が加わったためだと思います。

  ――国内大手アパレルへの拡販戦略も立てています。

 ここに来て進み出しました。当社はオリジナルの生地を広範に備蓄しつつ、設備も保有してクイックに生産できる体制を整えています。この機能を生かして小規模アパレルを中心に幅広い顧客に小口、短納期対応をしてきました。一方で大手アパレルにはあまり供給できていなかった。小規模アパレル向けに加えて大手アパレルへもしっかり売っていこうというのが趣旨です。

 アパレルごとの提案ではなく、ブランドごとの提案に細分化したところ、成果が表れ始めました。ピンポイントな提案ができてきているということです。高級化戦略や、北陸や播州産地に自家工場を持って国産でもコストダウンを図れていることが評価されてきているのだと思います。新型コロナの前までは欧州のメゾン向けも好調でしたしね。

  ――新規分野の開拓やサステイナブル(持続可能な)対応は。

 サービス系のユニフォームが少しずつですが開拓できてきています。他にも芽が出つつある分野もあります。サステイナブル対応としては、再生ポリエステルや「テンセル」を増強中です。

  ――下半期以降の重点戦略は。

 新型コロナによって先行きが本当に見えなくなってきました。国内も輸出も心配です。そうした中で力を入れたいのがネット販売です。

 切り売り向けでアマゾンに、輸出でアリババにサイトを開設する予定です。EC(電子商取引)の専任担当も置きます。既存口座の掘り起こしにも着手します。過去に口座を開設しても、取引が止まっているところなどにネットを活用してアプローチしていきます。

  ――今期は5カ年計画の初年度です。

 拡大戦略で臨みましたが、新型コロナによって待ったがかかった格好です。早期の終息を願いつつ、中長期でブランド深掘り戦略の進展に期待するしかありません。

 既に成果を出しているジャカードプロジェクトのほか、デジタルプリントを増強するプロジェクト、数量がまとまれば定番品を安価で提供するプロジェクト、各種機能加工をスピーディーに供給するプロジェクトなどを立ち上げていますので、これらの進展にも期待したいと思います。

  ――輸出については。

 苦戦中の中国向けは手法を変えて再構築する予定です。その他では、オセアニアグループを4月に課に昇格させ、拡大を狙います。欧州については、外出禁止令が出るなかで、「今は生地を送ってくるな」というブランドもあります。出社できないのだから仕方ないですよね。この影響は受けざるを得ない。しばらく回復は難しいでしょう。

 国内、海外ともに心配は尽きませんが、平時に戻った際の準備を進めておくしかありません。

〈10年前の私にひと言/社員が成長。この先が楽しみ〉

 1999年創業の宇仁繊維はこれまで右肩上がりの成長を続けてきた。「若い女性を中心としたスタッフや取引先の皆さんのおかげで成長させてもらった」と宇仁さん。10年前の2010年8月期の売上高は40億円。19年8月期は74億円に拡大した。10年前を振り返ると、「もっとできたことはあったかもしれないが、大きな後悔はない」と言う。最近は「若手男性社員の成長が目覚ましい」。10年前にはいなかった勢力である。男女のパワーが融合された宇仁繊維。宇仁さんも「今後が楽しみ」と目を細める。

〈略歴〉

 うに・りょういち 1999年桑村繊維を退職後、44年余りの経験、実績を基に一部商権と商品を引き継いで宇仁繊維を創業。