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特集 快適・衛生機能の繊維素材(3)/新型コロナ禍で活躍する検査機関/カケン、QTEC

2020年05月26日(Tue曜日) 午後1時21分

 新型コロナウイルス禍の中で、繊維の検査機関も重要な役割を担っている。カケンテストセンター(カケン)にはマスク関連試験が殺到。日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は抗ウイルス性試験依頼が急増している。安心・安全な生活を支える。

〈カケン/マスク関連試験に殺到/機能性試験のキャパ拡大〉

 カケンテストセンター(カケン)の大阪事業所はマスク関連の試験を行っているが、4月10日から試験受け付けを一時的に中止している。新型コロナウイルスの感染拡大で、マスク関連試験依頼が殺到し、対応能力を大幅に超えてしまったためだ。

 マスク関連試験とは、マスクなどのフィルター部が、微粒子などを物理的に捕集(ろ過)する性能を試験するもの。BFE(バクテリア飛沫捕集効率)、VFE(ウイルス飛沫捕集効率)、PFE(微粒子捕集効率)のほか、人工血液バリア性試験などがある。

 「マスク試験は2月くらいから試験依頼が増えており、3月以降は特に急激な増加となった。これまでマスクを扱ったことのない企業からも問い合わせが多い。(カケンの)海外ラボを通じた依頼や問い合わせもある」と言う。

 「医療用や一般用マスクを販売したいが、何か規制はあるか」「新型コロナに対するバリア性や抗ウイルス性試験はできるか」「マスクの試験の基準値はあるか」「マスクを販売するに当たりどのような表示をしたらいいか」といった質問があるようだ。

 BFE、PFE、人工血液バリア性はASTM(米国試験材料協会)規格による試験である。VFE試験はカケンが開発した独自法となる。

 抗ウイルス性試験も、マスク試験同様に試験依頼が急増した。「新規参入企業からの問い合わせも多い」状況にある。カケンはプラスチック製品やセラミック製品などの非浸透性表面の抗ウイルス効果も評価し、SIAA(抗菌製品技術協議会)の定める抗ウイルス加工SIAAマークの性能基準に採用された試験を行う。

 カケンはJIS(日本産業規格)に採用された新規試験を積極的に開発・導入する。

 防蚊性試験は2018年12月にJIS化された。カケンは昨年1月から防蚊性試験の受付を開始した。夏のレジャーシーンでの広がりを期待し、「問い合わせから徐々に依頼につながりつつある」。昨年1月には「紫外線遮蔽(しゃへい)」性もJIS化され、カケンはこの試験にも対応する。メーカーの品質基準も従来法からJIS規格に移行しつつある。

 遮熱性と光吸収発熱性の試験方法も昨年3月にJIS化された。ベースとなる試験方法にはカケンが開発したものが使われている。「試験依頼が増えたため、大阪事業所に加え、京都検査所と東京事業所にも設置し、設備を増強した」。接触冷感性評価方法も2月に、JIS L1927として制定され、試験対応する。

 「機能性試験は今あるもののキャパシティー拡大に注力する。検査も物流の一部。データがないとモノが動かない」

〈QTEC/抗ウイルス性試験が急増/コロナ禍でも試験体制維持〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)の神戸試験センターは微生物試験を得意とする。「抗ウイルス性試験依頼は2月中旬から急増。3~4月も多くの試験依頼が続いている」という。

 電話やメールでの問い合わせも相次いでいる。「試験内容や納期、価格についての質問が多い。米国の学会誌に論文を掲載したためか、米国、欧州、アジアからの試験依頼や問い合わせも増えている」。新型コロナ禍は世界に広がっている。

 神戸試験センターは抗菌や抗カビの試験で定評があるが、抗ウイルス性試験に着手したのは2009年の新型インフルエンザ流行が契機である。「今後はウイルスに対する試験も必要になる」と、3年かけて形にした。

 その後、経済産業省の国際標準共同研究開発事業(11~13年度)で、繊維評価技術協議会、バイオメディカルサイエンス研究会との3者共同で、繊維製品の抗ウイルス性試験方法の研究開発を行った。ISO/TC38/WG23エキスパートとして国際会議に参加し、14年9月にISO18184(繊維製品の抗ウイルス性試験方法)が発行された。

 この試験は試験ウイルス液を試料に接種、25℃で2時間作用させる。洗い出し液を加えて繊維上からウイルスを洗い出し、宿主細胞に感染させて、ウイルス感染価を測定する。対象ウイルスはA型インフルエンザウイルスとノロウイルスの代替のネコカリシウイルス。

 ウイルス感染価の測定法は二つある。ウイルスが感染・増殖し、細胞が死滅した部分が透明なまだら状に見える部分をカウントするプラーク測定法。もう一つが感染によって培養細胞の形態的変化を顕微鏡下で観察して測定するTCID50測定法である。「SEKの抗ウイルス性試験はプラーク測定のみで行う。TCID50法は細胞の変性を見るには熟練した目が必要で、人によって差が出る可能性がある」ためだ。QTECはこの二つの測定ができる。

 SEKの抗ウイルス加工マークには「繊維上の特定のウイルスの数を減少させる」とあり、ウイルスの働きを抑制するものではない。ウイルスは体内に入って感染・増殖する。薬事法的に治療や予防に使うものではなく、誤認させないためである。

 こうした試験を行うには「技術と知識、設備が必要」と話す。ウイルスを取り扱う以上、「一つでも欠ければ、安全性を失う」。経験とラボの設備の両方が必要である。

 プラスチック製品に対する抗ウイルス性試験としてISO21702が昨年5月に制定された。「プラスチックの業界からも試験依頼や問い合わせが多い」ようだ。

 「検査機関としてこの新型コロナ禍の中でも製品開発を支える。職員の安全を最優先するが、時差出勤、一部在宅など工夫しながら試験体制を維持したい」