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メンズインナー&ソックス特集/得意技術や独自コンセプト生かす/新型コロナに負けず需要喚起を

2020年05月28日(Thu曜日) 午後1時18分

 新型コロナウイルスの感染拡大は、メンズのインナー・靴下市場にも直撃した。主力販路である百貨店や量販店が緊急事態宣言で休業や営業時間の短縮を余儀なくされたことで、20春夏の販売は勢いを欠いた。20秋冬についても新型コロナ禍で展示会が開けず、商談が十分だったとは言えない。先行きの不透明感はかなり強いが、各社は特徴を生かした商品を打ち出し、需要喚起を図る。

 メンズインナーと靴下の市場は、吸湿発熱をうたった機能性インナーがピークアウトして以降、大型のヒット商品に恵まれていない。アウターと比べると安定しているとはいえ、盛り上がりに乏しい状況が続いていた。最近はグンゼの「エアーズ」が人気を博し、活性化の兆しが見えたが、新型コロナが水を差した。

 営業を続けていた量販店もあったが、衣料品の動きは鈍く、インナーと靴下もたぶんに漏れなかった。あるインナーメーカーは「量販店は食品や日用品(マスクや衛生材料など)の物流を優先した。衣料品は後回しとなり、店頭の商品が薄くても運ばれないケースが見られた」と言う。

 19秋冬は暖かい日が多かったことで季節商品が売れず、20春夏での巻き返しが期待された中での新型コロナ禍だった。別のインナーメーカーは「秋冬物から春夏物に商品が切り替わるタイミングで新型コロナ禍になった。春夏のマーケット動向すらつかむことができなかった」とため息をつく。

 20秋冬物、特に秋物については「売れ残った春物在庫がそのままスライドする可能性がある」と警戒感を強める。市場動向が読みにくい流れが継続しているが、各社は得意技術や独自コンセプトを生かした商品の投入、サステイナビリティー(持続可能性)を意識した取り組みの推進で消費者の購買意欲を高める。

〈“病みつき”のはき心地を/ワコール〉

 ワコールは、主力商品である「パンツ ホリック」の販売強化に力を入れる。特殊な糸の使用と編み設計を組み合わせることで、従来よりも大きな伸縮性を実現しており、ワンサイズでSからLLまでフィットする。ごろつきにくく、“病みつき”になる快適なはき心地も特徴だ。

 同社の20春夏は、3月から「ワコールメン」と「ブロス バイ ワコールメン」のリブランドに合わせて、会員制交流サイト(SNS)を活用したプロモーションを展開した。ネット販売は、3月初旬はプロモーション効果が見られたが、中旬以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響で落ち込んだ。

 20秋冬に向けては、パンツ ホリックを軸の一つに据える。サイズを選ぶ必要がなく、ギフト需要にも対応できる同ブランドの人気は高く、同社のボクサーパンツ販売を下支えする。360°伸縮(エイトウエー)する特殊生地を使用して心地よいはき心地を実現した「ヌーディーズ」では、フィット感を進化させたタイプを打ち出す。

 今後は、ワコールメンとブロス バイ ワコールメンの両ブランドともに顧客とのコミュニケーション戦略を見直す。まずはそれぞれの顧客ターゲットに合わせ、ブランドイメージを明確化して浸透させる。その手法としてSNSの活用などを検討している。

〈在宅勤務やテレワークに/グンゼ〉

 グンゼは、紳士インナーの主力ブランドの一つ「ボディワイルド」でTシャツ(トップス)の提案を強化している。20秋冬は次世代アンダーウエア「エアーズ」のウオームインナーや「ヘビーウェイト Tシャツ」を打ち出す。「YG」では改質綿を使ったベーシックインナーを投入する。

 19秋冬はこれまでにない暖冬となった。保温肌着市場では“中間的”な保温インナーの需要が縮小し、軽量保温と重防寒の二極化がさらに進むとみる。「解放感」をコンセプトにしたエアーズでは、差異化技術に磨きをかけることで軽量保温の新しい形のウオームインナーを提案する。

 カットオフ(切りっぱなし)の薄地ベア天竺を新たに開発し、一般的な軽量保温肌着と比べ約30%の軽量化に成功。襟と袖、裾に縫い目のないカットオフ仕様と独自設計による生地余りの極小化も特徴だ。半袖ボートネックや長袖クルーネックなど、冬に合うスタイルをそろえる。

 ヘビーウェイト Tシャツは、綿の16番単糸を使った比較的厚手のTシャツで、インナー・肌着という感覚よりも、アウター的な利用ができる。在宅勤務やテレワークで着用できるアイテムとして、積極的に訴求する。

 改質綿では発熱する「ホットオンコットン」をYGなどで展開。温かさや蒸れにくさ、吸汗、優しい着心地が特徴。

〈アジアや米国にも視線/TOOT〉

 紳士アンダーウエア製造・販売のTOOT(東京都港区)が海外市場での販売を増やしている。海外では台湾に常設店を持つほか、香港やシンガポール、米国などにブランドが浸透し、主力のネット販売での海外比率は30%に達する。商品の充実を図ることでアジアや米国のユーザー拡大を加速する。

 ボクサーブリーフを中心とする紳士下着ブランドの「TOOT(トゥート)」をメイン商材とし、宮崎県日向市の自家縫製工場でモノ作りを行う。自社サイトや百貨店、大手ショッピングサイトを通じて展開している。

 デザイン性のほか、はき心地や耐久性も特徴で、30、40代を中心に、50、60代まで幅広い層から支持を得ている。その中でも特に評価が高いのがはき心地であり、リフトアップする立体的なフロントカップ、立体裁断によるパターン設計、厳選された生地などによって快適な着用感を生む。

 海外販売は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、一時的に売り上げが落ち込んだ国・地域もあるが、既に回復基調が見えており、継続して力を入れる方針だ。ネット販売が主力となるが、世界の主要都市でのポップアップショップ展開も検討する。

 同社は2000年10月に創業し、今年が20周年。記念企画では東京をテーマにしたデザインの商品を打ち出す。

〈パッケージなどで環境配慮/フジボウアパレル〉

 フジボウアパレルは、インナーウエアブランド「BVD」でサステイナブル(持続可能な)対応を強めている。パッケージに環境配慮型プラスチックを採用するほか、製品に付ける下げ札にはFSC森林認証取得の紙を使う。やれる範囲のところから取り組むと話し、20秋冬物から順次切り替える。

 副資材製造卸のテンタック(東京都新宿区)が展開する「グリーンナノCO2オフ」をパッケージに用いる。通常のプラスチック製パッケージと比べて焼却処分時の二酸化炭素(CO2)排出量が抑制できる。ハンガーやフックなどへの採用も検討する。

 下げ札にはFSC森林認証を取得している紙を使う。この認証は、国際非営利組織の森林管理協議会が定めた基準の下で、適切に管理されていると認められた森林から切り出した木材で生産した製品や加工・流通過程に与えられる。

 商品面では、洗濯100回後でも吸水速乾性が持続するインナー「エバードライ」を20春夏に続いて提案する。身生地にハイカウントのポリエステルを使用しており、綿100%のフライス生地を使った肌着の約半分の時間で乾く。生地が縮みにくく、型崩れしないほか、抗菌防臭性やストレッチ性も兼ね備えている。

 「BVDゴールド」や定番ボクサーなどの通年商品の展開も強化する。

〈セブン&アイ・ホールディングス/再生ポリ使用のインナー〉

 セブン&アイ・ホールディングスは、機能性肌着「セブンプレミアム ライフスタイル ボディクーラー」を展開している。ポリエステル繊維の一部にペットボトルを原料とした再生糸を使用し、環境への配慮と機能性を両立した。グループの店頭で回収したペットボトルを応用した衣料品の販売は初めて。

 同社は、グループの環境宣言「グリーン チャレンジ2050」を定め、二酸化炭素排出量80%以上削減、プラスチック対策、食品ロス・食品リサイクル対策、持続可能な調達に取り組んでいる。プラスチック対策では、イトーヨーカドーなどの店頭にペットボトル回収箱を設置し、再利用する取り組みを進めている。

 ボディクーラーには店頭で回収したペットボトルから再生したポリエステルを使用(一部)。再生糸の肌着への活用は、再生ペレットの黄ばみがネックだったが、東レと協栄産業(栃木県小山市)との連携のほか、「洗浄したペットボトルを持ってきてくれるお客さまの協力で可能になった」としている。

 1枚でペットボトル約8本分を使う(このうちグループの店頭で回収したペットボトルは4本分)。トレーサビリティー(追跡可能性)についても東レや協栄産業の協力を得ており、問題はないとしている。2月に登場し、SDGs(持続可能な開発目標)に対応する商品として大きな話題を集めている。

 紳士では天竺半袖シャツやメッシュインナーなどをラインアップする。脇の汗染み軽減、通気性、抗菌防臭などの機能を付与している。婦人もカップ付タンクトップなどがそろう。

〈防寒商品の機能を進化/アズ〉

 アズは20秋冬、疲労回復を切り口にした「ドクターリカバリー」や、メリノウールのオールシーズン対応商品を新たに打ち出す。防寒肌着は堅調な「ブリーズテックス」をさらに進化するとともに、強みである国産起毛肌着にも引き続き力を入れる。

 ドクターリカバリーは、タナテックスケミカルズ(オランダ)の機能素材「チテックス」を採用した。アルミナ、カルシウム、ナトリウム、酸化ケイ素、マグネシウム、鉄の6成分を配合し、疲労回復につながるとされる血流活性化を促す。「美と健康」を切り口にした商品開発に力を入れていることなどから天候に左右されにくい商品として企画した。

 オールシーズン対応のメリノウール使いも打ち出す。保温性や吸湿・放湿性などウールの機能により、寒い時も暑い時も快適に過ごせる商品とした。乾燥対応として蜜蝋(ろう)加工も施している。

 防寒商品ではスポーツテーストの「ブリーズテックス」を進化させる。20秋冬は使用する防風透湿フィルムを2マイクロメートル薄くして13マイクロメートルとし、防風性能を維持しながら蒸れ感の軽減など快適性をさらに向上させる。

 起毛の日本製防寒肌着にも引き続き力を入れる。マイクロファイバー、バルキー糸、起毛加工の3段階で保温効果を出す「暖かさね」、東邦テキスタイルの発熱・保温素材「ソリスト ヒート」を使った「温ふわり」、東洋紡の吸湿発熱素材「エクスハイパー」を使った「熱ちから」などを展開する。

〈経営基盤を強固に/平松工業〉

 平松工業はここ数年、大手量販店向けの清潔・衛生機能インナーの売れ行き好調を背景に、売上高で前期比10%を超える急成長を遂げてきた。しかし、今期(2020年7月期)はインナー販売の環境悪化に伴い、成長が鈍化する見通し。

 上半期(19年8月~20年1月)は、異例の暖冬で防寒・保温機能インナーが打撃を受けた。下半期には新型コロナウイルスの感染拡大による消費の低迷で苦戦している。こうした環境のため、今期は来期以降に飛躍を遂げるための経営基盤を固める期と位置付ける。これまでよりも販路の多様化や在庫の削減を進め、不況にも強い財務体質を目指す。

 20春夏の企画では接触冷感糸「クールビーム」を使ったインナーを打ち出す。「冷涼感。」と銘打った肌着は、その名の通り酷暑でも肌に当たると冷たく感じる涼感機能が売り。ポリエステル90%・ポリウレタン10%でストレッチ性も高い。バングラデシュ縫製。

 綿100%、2枚セットの定番シリーズでは今年に入ってから米綿使いの商品に切り替えた。米綿は肌触りが滑らかで上質な質感であることに加え、持続可能な環境にも配慮して栽培されている。パッケージには「コットンUSA」マークもつけ原綿へのこだわりを伝える。

〈“読みにくい”時代乗り切る/三笠〉

 靴下製造卸の三笠(横浜市)は、新型コロナウイルス感染拡大の中で堅調に売り上げを伸ばしている。無店舗を主力販路としているが、緊急事態宣言による外出自粛が商品を吟味する時間を生み、同社ならではの靴下に注目が集まった。ただ20秋冬は“読みにくい”状況にあり、ネット販売を強化する。

 法人向けのEC(電子商取引)は従来から行ってきたが、今後は消費者への直販にも力を入れる。専任のデザイナーと営業担当者を配置し、商品も素材を厳選するなど、専用のアイテムを作る。現状のメインターゲットよりも少し若い年代のゾーンを取り込みたいとしている。

 B2Cは大手ショッピングサイトを活用してきたが、自社サイトでの展開は同社としては初の試み。シリーズごとにドメインを変更するなど、多様な形を模索しながら、6月にも本格展開を開始したい考えだ。EC化率の目標などは定めていないが、会員制交流サイト(SNS)などを使って浸透を図る。

 生産や物流では国内を拡充する。物流については横浜市内にセンターを持っているが、奈良県内に新たな拠点を設ける。新物流センターは約3千平方メートル規模(土地)を予定している。奈良県内の自家工場増強計画にも継続して取り組む。

〈楽しい靴下多数そろえる/福助〉

 福助は、19秋冬から展開している「ディズニー」デザイン靴下のラインアップに紳士用を加える。細やかな編み目と柄が特徴の同シリーズは、大人っぽさとかわいらしさが同居しており、ビジネスとカジュアルの両方のシーンで着用することができる。全国の百貨店などで10月から販売する。

 今回は新たなデザインを採用(紳士だけでなく、婦人も)している。人気の高いキャラクターをピクセル柄に落とし込み、ベースもそれぞれのキャラクターを想起させるカラーとした。キャラクターはドナルドダック、デイジーダック、グーフィー、くまのプーさん、ピグレット、ウッディ、バズ・ライトイヤーが登場する。

 紳士6型(婦人も6型)で展開する。ギフトで使える専用ボックスも新たに用意した。キャラクターを使った三角屋根の家型のデザインを採用し、積み重ねることが可能。店頭用のオリジナル什器(じゅうき)も提案する。

 そのほか、古いカセットテープやビデオテープから流れてくるさまざまな年代のミュージックシーンをイメージしたユニセックスブランド「ザ カセッツ」も訴求する。2シーズン目の20秋冬は、「UK ガレージ」をテーマに、英国のインディーズシーンを盛り上げている若いバンドに焦点を当てたデザインを打ち出す。12型をそろえ、百貨店などで販売する。

〈100周年でコラボ企画/ナイガイ〉

 ナイガイは、10年以上のロングセラーとなっている商品のブランドカテゴリー「ナイガイ トラディショナル」で展開している紳士のためのソックス「F&H」で、人気アートディレクターである祖父江慎氏との協業商品を提案している。創業100周年を記念した商品の一つ。

 F&Hは紳士のため、心地よいフィット感(Fit)と足の健康(Healthy)を大切にするというコンセプトから生まれた。全体が「J」の形に緩くカーブし、締め付け感が少なく、ずり落ちにくいのが特徴で、疲れを感じにくいことなどからビジネスマンを中心に愛用者が多い。

 祖父江氏は、“初めて地上で歩いた怪魚”「つちふみくん」を生み出した。F&Hの特殊な形状に着目した同氏は、その形状が際立つようにシンプルな黒と白を組み合わせたしま模様を施した。つちふみくんは足裏の滑り止めのプリント柄に施している。

 100周年企画では、オリジナルブランド「ナイガイ スタイル」で著名なクリエーターとのコラボレーションをスタートしている。その第1弾として、イラストレーターの飯田淳氏のイラストデザインを取り入れた靴下を投入した。飯田氏は花、靴、顔、伝言、東京の五つをテーマにオリジナル作品を起こした。

〈爽やかな着るデオドラント/セーレン〉

 セーレンは、高性能消臭アンダーウエアブランド「デオエスト」を販売している。メンズの新商品ではオールシーズン対応の「消臭アンダーシャツ・Vネック(シンプルカット)」を投入している。新商品の打ち出しで、シンプルカットシリーズは全7アイテム(婦人含む)になった。

 「シンプルカット」は、独自開発によるエイトウエー(全方向)ストレッチ素材の「フレックスムーブ」を使用し、高い消臭機能を持ちながら「究極の動きやすさ」や「忘れるほどの着心地」を実現している。襟、袖口、裾を無縫製にしているため、肌当たりが優しく、アウターに響きにくい。通年で快適に着用できるよう、吸放湿性に優れたレーヨンを使っている。

 デオエストブランドでは、2018年からシンプルカットの商品を展開し、高い消臭力と着心地の良さで好評を博す。顧客から通年アイテムの要望が多かったことから新商品を発売することにした。シンプルカットシリーズにはボクサーブリーフやニーレングス、夏用Vネックなどがそろう。

 同社は、消臭ニーズの高まりを受け、広島大学の大毛宏喜教授監修の下、高性能消臭製品の研究・開発を05年に開始。加齢臭や汗など、体から発せられる多様な臭いを瞬間的に消臭し、洗濯耐久性を持つ素材を開発した。10年からデオエストとして販売している。

〈抗ウイルス「ヴァイアブロック」に期待/東洋紡STC〉

 東洋紡STCは「爽快コット」「アグリーザ」を主力にメンズインナー・肌着素材を展開している。

 爽快コットは優れた吸水速乾性能、肌離れ、ドライタッチなどを併せ持つ綿の高機能素材。アグリーザは銀イオンによる除菌性能が特徴のアクリレート繊維。黄色ブドウ球菌、大腸菌、白癬菌といった幅広い菌類に効果を発揮するという。

 19春夏商戦では「まずまずの結果を残せた」と言うものの、20春夏は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で苦戦に転じており、21春夏で巻き返しを図るべく、テレワークを駆使したユーザーとの商談、企画提案に力を入れている。

 21春夏では爽快コット、アグリーザとともに、「ここに来て引き合いを集めている」という抗ウイルス素材「ヴァイアブロック」を重点的に打ち出す。

 数年前からマスクや寝装、フィルター向けの販売を先行させており、同シーズンでは綿70~80%・ヴァイアブロック20~30%の紡績糸をアウター用途も含めて売り込んでいく。