産資・不織布通信(38)

2020年06月08日(Mon曜日)

ナノファイバーで新領域開拓

長谷虎紡績(岐阜県羽島市)は1887(明治20)年創業の名門紡績であり、現在も衣料、インテリア・車両内装材、産業資材・生活資材など幅広い分野で糸・生地・製品を製造している。1月には新会社も設立し、ナノファイバーを活用した商品開発に取り組む。長谷享治社長は「独自性のある素材から付加価値を生み出すことが今後の基本戦略。既存事業とのシナジーも発揮し、事業領域を開拓する」と話す。

 同社は関係会社であるファーベスト(東京都中央区)が販売する高純度微粒子セラミックス配合繊維「光電子」の紡績で知られる。光電子は大手スポーツアパレルが採用し、保温素材として人気が一段と高まってきた。

 こうした特殊繊維の紡績技術は産業資材分野でも発揮されている。消防服に使用されるアラミド繊維など難燃素材の紡績への評価は高い。取り扱いの難しいフェノール繊維の紡績も得意としており、耐熱材として宇宙航空研究機構(JAXA)の「H―Ⅱロケット」「イプシロンロケット」にも使われている。ポリプロピレン(PP)紡績糸はフィルター用途が好調。同社は特殊紡績による極太無撚糸の生産も可能で、PPやアクリレート繊維、綿の極太無撚糸が油吸着や水分除去用糸巻きフィルターなどに採用されている。

 カーペット、自動車・航空機内装材、人工芝などインテリア分野も同社の主力事業の一つ。組織改革も行い、自販とOEMともに営業とデザイン企画が一体で取り組む体制を作った。

 新たな取り組みも始まった。長谷虎紡績、ファーベスト、そしてナノファイバーを研究開発・製造販売するエム・テックス(さいたま市)と合弁でスピタージュ(大阪市中央区)を設立した。ナノファイバーを活用した商品開発と事業化に取り組む。現在、衣料・寝装用中わた、人工羽毛、透湿防水膜、車両向けを中心とした消音・吸音材、フィルターなどの開発を進める。新たな機能性を実現することを目指す。

 既存事業とのシナジーも大きな狙い。「光電子やナノファイバーなど独自素材を活用することで紡績事業とインテリア事業に横串を通し、新しい付加価値を生み出すことや新領域を開拓することを目指す」と長谷社長は話す。

 一方、「優れた機能があっても、環境に配慮した商品でなければ今後の市場で受け入れられない」とも強調。このため2030年までに生産する商品の80%(数量ベース)を何らかの形で環境配慮型商品に切り替える「3080」を数値目標として掲げる。“機能”と“エシカル(倫理)”を両立する企業への進化を目指す。

(毎週月曜日に掲載)