両角みのりのイタリアモードの今(26)

2020年06月12日(Fri曜日)

新型コロナに揺れるイタリア5

新たな価値観の時代へ

イタリアは6月3日からフェーズ3へ移行した。国内移動が可能となり、欧州連合(EU)諸国の入国も認められた。パンデミック(世界的大流行)後初めて観光客を迎えたとの明るいニュースも入った。半面、長期に及んだロックダウン(都市封鎖)は繊維・ファッション業界に大きな影響を与えた。

 公的機関の調査では、1月から4月までの間の自宅待機時間の合計は5千万時間を超え、昨年より3分の1の労働時間、生産量はマイナス70%という衝撃的な数字が示された。

 繊維市場の現状はどうか。1960年創業のeurojersey(ユーロジャージー)社はスポーツ、衣料、下着、水着の分野で評価の高い機能性生地「センシティブファブリック」を用いた企業。ゼネラルマネージャーのアンドレア・クレスピ氏とマーケティング部のミケーラ・デッレ・ドンネ氏が回答してくれた。

 ロックダウン中の状況について「4月27日からの再開では一部の部門(至急の納品のための生産ライン)を稼働し、5月4日からは各部門100%通常稼働をしている」と答えた。いち早く再稼働ができた理由は「パンデミック以前からスマートワーキングを取り入れていた。コレクションのサンプル準備を既に始めており、再稼働後すぐに動ける準備が整っていた。商品の製造販売過程を一元化しており、外注に頼ることなく稼働できた点が大きい」と言う。

 衛生面では「ロックダウン中に既に再開に向けての準備を進めていた。具体的には事務所と工場の清掃消毒作業に始まり、ソーシャルディスタンス表示、体温検査機の購入、従業員に配布する衛生キット(手袋・外科マスク・除菌ジェル)などを実施」。現在行っている感染対策は、入口での体温検査と衛生キットの配布。公共部分の清掃と消毒作業。手洗いの推奨。社員食堂は過密にならないように交代制。20人を上限とし約20分の時間制とした。またランチボックスを予約しデスクで食べることも可能とした。

 取引業者においても社員と同様の措置を取り、現状でも約半数のオフィス従業員がスマートワーキングを行っている。レイオフについて尋ねると、「幸い過去2年間の業績が良かったため、従業員を解雇してはいない」と言う。政府からの補償金もなく、100%自分たちで支えているという。

 発注キャンセルや納期遅れはあった。国内では支払い期限の猶予など問い合せもあるが85%が輸出のため、米国市場が今後どうなるか観察中。備蓄があったため、ロックダウン期間のみの生産遅れにとどまったのは幸いだった。

 今後については「新しいチャンス。昨日まで当たり前だったことが今日はもう違う。新しい日常は明らかに違ってくるだろう。だがわれわれはそれに立ち向かう準備が出来ている」と語った。

 以前から開発の重要性を認識しており、昨年の「ミラノ・ウニカ」では繊維業界で初めて環境負荷を製品に明示したテキスタイルを発表し話題となった。テクノロジー、イノベーション、サステイナビリティー(持続可能性)は一貫した戦略に従って行うべきと語るクレスピ氏に売り上げ減少率を訪ねると、「楽観的に見てマイナス20%」と答えてくれた。

もろずみ・みのり 15年前にイタリアに渡り、建築デザインとファッションを中心とした企業視察や通訳を務める。2016年からImago Mundi代表。