メーカー別 繊維ニュース

特集 SDGs(5)/“サステイナビリティーマネージメントを推進”

2020年06月25日(Thu曜日) 午後4時5分

〈カセイソーダ不使用を実現/大和紡績〉

 大和紡績は、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)を事業運営の軸に据え、独自の原料や加工、革新的な製造加工プロセスを積極的に導入する“ファイバー戦略”を推進している。その一つとしてカセイソーダ不使用の染色加工プロセスの実用化で「エコセーフPR」「エコセーフCS」を開発した。

 同社は1980年代からオーガニックコットンの活用やケミカルフリーの染色加工を実用化するなど環境負荷に配慮したモノ作りに取り組んできた。この流れを受け現在も「エコロジー・サステイナブル・プロジェクト」を推進している。

 その一つとして実現したのがカセイソーダ不使用の染色加工プロセス。カセイソーダは綿の精練漂白などに幅広く使用される基礎化学品だが、強アルカリ性のため使用方法によっては繊維にダメージを与える。中和工程も必要なため環境負荷も小さくない。

 これに対してエコセーフの加工はカセイソーダ不使用に加え、水の汚染度合いを示すBOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)が低い薬剤・染料を使用しているため排水の環境負荷が小さい。使用する加工剤は可能な限り自然界で分解するものを厳選している。

 綿へのダメージも少なく、不純物であるワックスやペクチン、金属塩などをしっかりと分解除去できるため吸水性も損なわない。安全性に関しても国際基準をクリアする。

 同社は染色加工や機能加工で安全性の国際的認証である「エコテックス規格」も全面的に導入している。加工剤の安全性には特に注意を払っており、抗ウイルス加工「クリアフレッシュV」の加工剤を従来の有機化合物系からより安全性の高い無機系に変更した。製造・加工プロセス全体でSDGsに取り組む。

〈「ループラス」を“見える化”/クラボウ〉

 クラボウの繊維事業部は「ヒューマン・フレンドリー発想」を基本理念にサステイナブル(持続可能な)素材のラインアップを拡充するなどSDGs(持続可能な開発目標)を組み入れた事業運営に取り組む。その一つとして「ループラス」の拡大を進める。

 ループラスは、縫製工程で発生する裁断くずを反毛し、紡績原料にアップサイクルするもの。このほどエドウインとの取り組みがスタートした。エドウインが自社縫製工場で発生する裁断くずを供給し、クラボウがデニムに再生する。

 昨年、紡織の安城工場(愛知県安城市)にインディゴ染め素材の専用ラインも導入し、ループラスによるデニム生産が本格化した。エドウインへの供給に加えて、「クラボウデニム」として輸出にも取り組む。数年をかけてクラボウデニムを全てループラスに切り替える構想も進む。

 一方、新型コロナウイルス感染拡大の影響で従来とは異なる営業スタイルの必要性が高まった。現在、クラボウデニムのネット受注システムの構築を進めている。さらに外部プラットフォームの活用も検討する。

 原料から生産工程、製品までのトレーサビリティー(追跡可能性)も極めて重要。このためループラスの“見える化”を推進している。例えばパンフレットやタグにQRコードを付け、製造工程を映像で見ることができる仕組みを作った。

 産地の織布企業などにも呼び掛け、ループラスの糸売りも検討する。さらに安城工場には島精機製作所のホールガーメント横編み機も設置しており、これを活用した製品開発にも取り組む。

 ループラス以外にもSDGsに対応した商品として水使用量削減につながる色落ちしないデニム「アクアティック」、再生ポリエステル生地「アフターペット」、抗菌・抗ウイルス機能繊維加工技術「クレンゼ」などの提案も加速する。

〈レーヨンの持続性打ち出す/ダイワボウレーヨン〉

 ダイワボウレーヨンは、レーヨンが持つ生分解性を打ち出すことや、リサイクル技術の実用化に取り組む。レーヨンがサステイナブル(持続可能な)素材であることを発信し、SDGs(持続可能な開発目標)に欠かせない繊維であることを多くの一般消費者に認知させることで国産レーヨンメーカーとしての存在感を発揮することを目指す。

 近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染問題への関心が高まる中、同社は生分解性を確認したレーヨン短繊維「エコロナ」を打ち出す。海洋プラスチック問題の解決を目指す企業団体「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」にも加入した。今後、販売するレーヨンを全てエコロナに転換することも視野に入れる。

 加えて同社のレーヨンは森林資源の適正利用を認証する「森林認証(FSC)」、染色加工などの安全性に関する国際規格「エコテックス規格100」、米国農務省が再生可能資源から作られた製品を認証する「バイオベース製品認証」、食品接触の安全性認証「ISEGA」などを取得している。こうした第三者認証も積極的に活用する。

 廃棄される綿布・製品を原料として再利用して生産するレーヨン短繊維「リコビス」も注目の商品。スウェーデンのベンチャー企業と連携し、使用済み綿製衣料や裁断くずなど廃棄綿布・綿製品を原料に再利用して生産することに成功した。綿の新たなリサイクルシステムとしてレーヨンの活用への期待が高まる。

 健康もSDGsのターゲットの一つだが、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)を契機に衛生機能素材への要望も高まる。同社ではカルボキシル基練り込みによるpHコントロール機能レーヨン「パラモス」に抗ウイルス加工を施した「パラモスプラス」を打ち出す。

〈世界の綿花でSDGs/大正紡績〉

 オーガニックコットンを活用した綿糸で代名詞的存在の大正紡績(大阪府阪南市)。「10年以上前からオーガニックコットンを通じて環境に配慮したモノ作りに取り組んできた」(酒井信二社長)と言うように、SDGs(持続可能な開発目標)の実践でもパイオニア的存在であることを自負している。

 コットンを中心に環境配慮や綿花産地の雇用創出に貢献する同社の基本方針は、SDGsが社会的に大きな潮流となる現在ではますます存在感を高めている。オーガニック素材の国際規格である「グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード(GOTS)」認証を取得し、契約農家から原綿を調達するほか、糸の販売先である産地企業やアパレル・デザイナーとチームで取り組むモノ作りはトレーサビリティー(追跡可能性)の確立にもつながっている。

 綿と複合する原料にも再生ポリエステル、生分解性のあるレーヨンやキュプラなどを活用することで機能性と環境配慮を両立した糸を実現する。生産プロセスに関しても二酸化炭素や廃棄物の削減に数値目標を定めて取り組む。反毛を活用した商品開発も進めており、自社工場に反毛設備も導入して試作も始まった。取引先からの注目も高い。

 こうした取り組みをSDGsと的確に結び付け、消費者にアピールすることが重要になる。このため社内にSDGsに関する勉強会も立ち上げた。コットンを通じて持続可能な社会に貢献しようとする同社の取り組みが一段と進化する。

〈リネン軸に多彩な展開/帝国繊維〉

 110年以上にわたり日本のリネン産業をけん引する帝国繊維。21春夏向けでは改めて、SDGs(持続可能な開発目標)やサステイナビリティー(持続可能性)に適したリネンの特性に焦点を当て新たな素材を提案する。

 リネンは亜麻科の一年草。品質の向上と安定のため、小麦やジャガイモなどとの輪作で栽培される。農薬や化学肥料の必要もほとんどなく育ち土壌にも人にも優しい。茎からは繊維や資材、実からはペンキや印刷インクなどに使われる亜麻仁油がとれるなど、捨てる部分もほとんどない。

 21春夏企画では、そうしたリネンの持続可能性を訴求しつつ、最終製品にしたときの使い勝手や風合いなどを高めた素材を打ち出す。その核となるのが、異素材複合でプラスアルファの付加価値を追求する「アルケミックリネン」ブランドだ。

 リネン潤紡糸をベースに展開。リサイクルポリエステルとの複合糸をはじめ、芯糸にポリエステルを用いて形態安定性を持たせシワになりにくくした精紡交撚糸、高いバルキー性のあるアクリルを芯に使い厚地でも軽さを実現する糸を開発した。それぞれロゴやストーリーを付けてバイヤーの視覚と聴覚に訴え、アルケミックリネンを細分化してブランディングしていく。

 加工で多彩な表情を持たせたラミーやヘンプもそろえ、衣料用途からバッグなどの雑貨用途までカバーする。

 これらの新作は、新型コロナウイルスの影響で開催できない総合展の代わりにデジタル展示会で紹介。「リネンミュージアム」と称し、6月中旬から同社HPでテーマ別に公開している。

〈残反や縫製品を糸に“彩生”/新内外綿〉

 新内外綿は、これまで廃棄されてきた残反や不良在庫となった繊維製品を再び糸にして提供する取り組みに力を入れる。不要な在庫を引き取り反毛し、そのわたを原料としてリサイクル糸を紡績して取引先に供給する。廃棄物を原料に糸を作るため、資源の節約や廃棄物の削減につながる。

 捨てられる繊維を多彩な表情を持った糸に再生することから、この取り組みを「彩生(さいせい)」と名付け、今年から対外的なアピールを強める。このリサイクルシステムを始めたのは昨年12月。新内外綿が、取引先の在庫反や製品を引き取り、グループ紡績子会社のナイガイテキスタイル(岐阜県海津市)で反毛、紡績して取引先に提供する。今年6月現在、編み地・織布製造業、産元商社、アパレルなどにも取り組み先が広がっている。

 編み地からでも布帛からでも再び糸にできる。製品ではTシャツ、タオルなどの糸へのリサイクルを想定する。

 相手先の要望に沿って新内外綿の新たなわたを混ぜ、リサイクル糸にアレンジを加えることもできる。例えば、オーガニックコットンを入れたり、生成の反毛わたの中に色のついたわたを新たに入れたりすることで付加価値を高め、回収物のみではできない外観や物性の糸も作れる。

 リサイクル糸の色柄、番手、混用率は提供される繊維がどのようなものかによって決まる。繊維製品を回収してから1カ月ほどで糸にして納められるという。

 最近では新内外綿のタイ子会社、J.P.ボスコでもこの取り組みができる体制を整えている。

 今日25日に開くシキボウグループのバーチャル展示会にも出展し、国内の繊維事業者に向けて彩生の取り組みを発信する。