産資・不織布通信(40)

2020年06月29日(Mon曜日)

自動車内装シート縫製で高い技術

渋谷商店(岡山県倉敷市)は1969年の創業以来、自動車内装シートの縫製を手掛けてきた。大手自動車メーカー向けの内装シートの縫製だけに「1㍉のずれも許されないほどの精度や、納期が求められる」(渋谷敏夫社長)。設備の拡充や技術継承をしながら内装シートを供給してきた。

 同社の強みは、座席の背もたれの上部にある枕状の部位、ヘッドレストの縫製だ。ヘッドレストは、形の違った曲線同士を縫い合わせ、立体的に作り上げなければならない。高度な技術が求められるほか、手間がかかるため「工場はあまりやりたがらない」と渋谷社長は話す。

 自動車内装シートの縫製拠点の海外シフトが進んできたことに加え、2008年にリーマンショックが起こる。この影響で「当時地元に10社ほどあった内装シートの縫製工場の大半が閉鎖した」。ただ、同社は07年にヘッドレスト専用工場を新設するなど、量産体制を確立。ヘッドレスト生産に軸足を移し始めていた時期だった。

 ヘッドレストは、海外で生産するには精度が低く、コストが合わなかったことから国内の技術が必要だった。そのため、同社はリーマンショックの影響を最小限に抑えることができた。現在は、主に三菱自動車工業とマツダ向けのヘッドレストを生産する。

 これまでに、ウエルダー溶着機やレーザー加工機などを導入し、特殊な加工にも対応。11年にはCAM(自動裁断機)を導入した。これによって、裁断から縫製までの一貫体制が整い、作業の効率性が上がった。内装シート縫製の技術を生かし、保冷ボックスの縫製も行う。

 今年に入り深刻化している、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を同社も受けている。内装シートの受注は大きく落ちていないものの、ヘッドレストは3月下旬から落ち込んだ。通常は1日約6千個を生産していたが、4月は1カ月に約4千個と生産数が激減。現在は1日約3千個と、受注が戻りつつあるが、先が見通しにくい状況が続く。

 本業の受注が落ち込む中、同社は3月中旬からマスクの生産を開始。これまでに約3万枚のマスクを生産し、一部は寄付するなど社会貢献に一役買っている。

(毎週月曜日に掲載)