メーカー別 繊維ニュース

2020夏季総合特集Ⅲ(4)/コロナショックに負けない/事例研究/わが社の戦略

2020年07月22日(Wed曜日) 午後1時3分

〈日清紡テキスタイル/“安心・らくちん・環境”追求/革新無糊製織も開発〉

 日清紡テキスタイルは“安心・らくちん・環境”を切り口とした商品開発や生産プロセス革新を追求し、“ウィズ・コロナ”時代の新たな消費構造や社会的要請に応える。

 新型コロナウイルスの感染症拡大を契機に衛生加工へのニーズが急速に高まった。同社も抗ウイルス加工「バリエックス」を積極的に打ち出しており、ドレスシャツやハンカチなどで採用が進む。さらに社会を支える必要不可欠な仕事に従事する人たち向けを中心にユニフォームでも採用の動きが強まる。

 こうした衛生加工へのニーズの高まりに応え、繊維評価技術協議会の「SEKマーク」を取得している加工で洗濯100回後も効果を確認した商品を「安心・安全・清潔シリーズ」として整備。防汚加工「ラクリア100」、抗菌防臭加工「Agフレッシュ100」、制菌加工「Agフレッシュプラス100」をラインアップした。バリエックスも工業洗濯への対応を進める。

 ユニフォームではストレッチ生地「アスタリスクPM」も重点提案。環境配慮では革新的な無糊製織技術も確立し、量産工程への導入を進める。

〈シキボウ/衛生加工を幅広い用途に/“新常態”対応の提案手法も〉

 清潔・衛生に焦点を当てた加工を得意とするシキボウ。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)を契機に注目が一段と高まった。“ニューノーマル(新常態)”に対応した営業手法も活用しながら、幅広い用途への提案を進める。

 新型コロナを契機に同社の除菌・ウイルス除去機能加工「フルテクト」や制菌加工「ノモス」などへの引き合いが急増している。従来は機能加工に関心を示さなかったカジュアル分野などでも採用が始まった。こうした流れを生かし、あらゆる分野への販売を進める。

 引き続きサステイナビリティーへの要求に対応した商品にも力を入れる。サステイナビリティーと清潔・衛生への大きな潮流に対応することで現在の“コロナショック”によるビジネス停滞を打開することを目指す。

 一方、ソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保など営業プロセスでの新たな課題も生じた。このためバーチャルリアリティー(VR)展示会などITも活用しながらニューノーマルに対応した提案手法も積極的に導入する。

〈クラレファスニング/「マジックテープ」に広がり/ウィズコロナの日常を〉

 クラレグループであるクラレファスニングが製造・販売する面ファスナー「マジックテープ」が活躍の場を広げている。ソーシャルディスタンス用テープやフェースシールドのバンドの留め具、飛沫(ひまつ)防止フィルム・パーティションの固定などに使われるようになった。

 マジックテープの販売は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、輸送分野(自動車関連、航空機、鉄道)やアパレル分野の重要が落ち込んでいる。その一方で“ウィズコロナ”の日常を支える商品として新たな重要が生まれ、引き合いが活発化している。

 その一つがソーシャルディンスタンス用テープだ。スーパーマーケットやホテル、オフィスで使われている。カーペットのループに貼り付けるだけで容易に施工でき、薄型のため足に引っ掛かりにくい。裏面に文字や記号をプリントできる。

 フェースシールドでは無段階で固定でき、締め付け具合も調整できるので長時間の装着に便利。飛沫防止フィルムやパーティションを固定する場合は交換や掃除が容易という利点がある。

〈フォークナー/テレワーク用ジャケット開発/パターン設計などに工夫〉

 帝人フロンティアグループのフォークナーは、テレワーク時に着用するジャケット「テレ・ジャケ」を開発した。生地選定やデスクワークの姿勢に合わせたパターン設計などに工夫を施した。クラウドファンディングサービス「マクアケ」で支援者を募り、締め切り前に目標に達した。

 コンセプトは、楽なのにラフに見えない、デスクワークでの作業効率向上、カーディガンのような着心地の三つ。これを実現するのが国内の丸編み地製造会社と染色会社との連携で作り上げた生地、そしてこだわり抜いたパターン設計だ。

 生地は40ゲージで編み立てたポリエステル100%、36ゲージのポリエステル・ウールの2種類。どちらもPTT(ポリトリメチレン・テレフタレート)繊維を使い、ストレッチ性やシワ軽減などを付与している。

 肩ダーツは肩甲骨を包み込むことで“前肩”の状態にして腕を前方に動かしやすくし、前振り袖も採用。長時間のデスクワークでも体への負担を軽減できる。30、40代男性をメインターゲットに置いた。

〈ヤギ/デジタル技術活用に本腰/サステとの両輪で〉

 ヤギは今年度からスタートさせた中期経営計画の中でも掲げる「次世代事業の創出」「サステイナビリティーの着実な実行」の一環として、デジタル技術の活用とサステイナビリティー商材の開発、発信を強める。

 デジタル技術活用の意図は、①「業務効率の向上」②「エシカル、サステイナブルにもつながるロス・無駄の低減。および業界の問題解決に寄与する」というもの。

 この意図の一環として、人工知能(AI)などのデジタル技術を運用する企業とこのほど業務連携した。同デジタル企業が開発するAI導入のMDをヤギが小売りやアパレルに紹介し、需要予測の精度向上、プロパー消化率の向上、余剰在庫の抑制などに役立てるという取り組みが進んでおり、サステイナブル機運の高まりも受けて好評という。

 加えて、AIを装着したデジタル広告の機械を店舗に勧め、顧客データの蓄積に資するという取り組みも始めた。

 専門学校の東京ファッションテクノロジーラボ(東京都渋谷区)とは産学連携を開始した。7月29~31日に東京で開催予定の21春夏向け生地展示会で、リアルの生地と3Dコンピューターグラフィック(CG)の生地を並べて展示する。3DCGは、何度もサンプルを作成する手間と時間を大幅に短縮できる。商談に活用すれば先行受注、生産が実現され、ロスや無駄を低減できる「問題解決につながる取り組み」だ。

 サステイナブルな取り組みも多彩に進める。その一つがオーガニックコットン農場の普及を支援する「PBPコットン」。同コットン財団との協業展を近く開催する予定だ。ヤギは2006年にGOTS認証を取得しており、“先駆者”としてオーガニックコットンの発信を強めていく。

〈マスダ/“TEIBAN”と“ヒト”/新たな商流を創造〉

 生地・製品備蓄販売のマスダ(名古屋市中区)は良質な“TEIBAN(テイバン)”と“ヒト”の力を武器に新たな商流の創造を進める。

 マスダの“テイバン”は日本製が売りだ。日本製合繊素材が主体の生地定番は182品番、生地・縫製を国内で一貫生産する商品も豊富な製品定番は118品番そろう。45年間継続販売するロングセラー商品もある。

 片岡大輔社長は「定番とはいつの時代にも求められる本質。『モッタイナイ』や『カイゼン』と同様に世界に誇れるサステイナブルなワードとして『テイバン』を表現していきたい」と話す。

 常に最適な提案を行う“ヒト”もマスダの武器だ。新型コロナウイルス禍により新たなビジネス構築を模索する顧客ニーズに対し営業スタッフの提案力を生かして応える。ファッションから資材まで多分野を幅広くフォローし、顧客の要望や課題を解決するアイデアを豊富に蓄積し共有している。

 顧客の悩みに対し、適時・適品・適量の供給体制と提案力を組み合わせて形にする。その柔軟性を強みに、今後も商流の変化に対応し創造を続ける。

〈サカイオーベックス/染色と販売の連携強化/清潔・安全加工を拡販〉

 サカイオーベックスの2020年3月期は染色加工事業、繊維販売事業とも増益だった。染料・薬剤コストの高止まりや婦人衣料市場の低迷など市場環境は厳しかったが、数量は前年比横ばいを確保。加工料金の適正化や生産ロスの削減、省エネ、産廃処理費用の削減などに取り組んだ成果が出た。繊維販売事業では、ユニフォームの生地販売が、関係会社との連携で拡販に取り組んだことで増収増益となった。

 足元は新型コロナウイルス禍の影響を受け、上半期の稼働率は70%に届かない可能性もある。このような中、今期は「環境の変化をしっかりと見据え、まずは新型コロナから社員とその家族を守り、雇用を含めた社会的役割を果たすことを優先して取り組む」とする。

 同時に新型コロナ収束後に向けた手を打つ。異業種との協業を含めて資材用途の拡大を図るほか、産地の織布企業やニッターとの連携強化、染色加工事業と繊維販売事業の連携強化に取り組む。染色加工事業では、清潔・安全加工や快適・機能性加工の提案を強化し、抗菌加工、抗ウイルス加工、退色防止加工、防汚加工の提案を強める。繊維販売事業は商流の変化への対応を重視し、ダイレクト商流の構築に取り組む。

〈ササキセルム/新手法の販促・企画提案/若手中心にSNSで〉

 婦人ボトム・スーツ生地を主に扱うササキセルム(愛知県一宮市)は新しい手法で企画提案・販売促進を精力的に行う。若手の発案を中心に会員制交流サイト(SNS)で商品企画の紹介を行い顧客への提案に生かす。

 販売促進の主動的な役割は・商品企画・営業の20~30代社員が担う。新型コロナウイルス禍で顧客との対面商談が難しい中、SNS投稿でのプロモーションに活路を見いだした。佐々木晃司社長は「若手の柔軟な発想とセンスが投稿のアイデアに生きる」と話す。

 主に活用するのは動画や画像の投稿サイト。動画の内容は21春夏企画の紹介から在宅勤務導入期間中の社内の様子まで多岐にわたる。画像投稿サイトで動画投稿のフォロー告知を含めた連動を図り、見る側に飽きさせない工夫を凝らす。

 5月から新しい試みも始まった。生地の特徴訴求の一環でマスクの販売を開始。6月に自社ホームページでオンラインショップを立ち上げた。佐々木社長は「生地販売も含めたネット通販もさらに強化したい。ストールなど首回りの雑貨の出品も検討する」と今後について語る。

〈ブラザー工業/自動化とネットワーク化推進/顧客ニーズに対応し課題解決〉

 ブラザー工業は自動化とネットワーク化を軸に顧客のニーズに応じた工業用ミシンの販売を推進する。新型コロナウイルスの影響を受けている縫製工場に対し、省人化や生産効率の向上に貢献する。

 新型コロナによって工場の稼働停止や減産体制となり現場では今まで以上に生産効率を高め、省人化を進めていくことが必要になる。同社としてはそうした顧客の課題解決に向けて自動化とネットワーク化の提案を図る。

 大型縫製エリアを搭載した「ネクシオBAS」シリーズは布送りが容易になるブリッジ型の機構を採用。この機構を生かしたさまざまな自動化の提案を行っていく。衣料品から靴や鞄、エアバッグなどの自動車関係にまで対応している。

 ミシンをネットワーク化する同社のIoTシステムは縫製ラインの見える化のほか、生産管理レポートを自動生成し情報を把握。ミシンの稼働状況・時間といった情報を集約し一元化できるのも大きな利点だ。小ロット多品種が求められる中、生産効率や生産性、品質向上に寄与する。