横山達也のチャイナ・アウトサイト(33)/どんどん増える職業分類

2020年07月27日(Mon曜日) 午後1時24分

 新型コロナウイルスが一向に収束せず、Go Toナントカで迷走する日本と違い、中国は着々と経済回復を続けている。そもそもの原因は?火事場泥棒もどきじゃないの?など、筆者も多くの読者と同じ思いはあるが、それは別の機会として、とにかく中国は経済も政治も暮らしも、以前の状況に戻す努力を続けている。

 例えば、疫病対策の現地責任者の追求と処断、強引な隔離措置、雇用と企業資金の確保に特化した経済緊急対策など、手法はともかく、目的と効果がはっきりと説明できる施策がバンバン打ち出されている。

 一方で、疫病対策や経済への手当てが少し落ち着いてきたのか、中国の最近のニュースでは、新型コロナ以外の話題も増えてきた。そんな中で、微妙に気になったのが、新しい職業名称の制定である。

 7月6日に中国政府の人力資源社会保障部(労働に関わる政策を扱う部局)等が制定したもので、新たに九つの職業が決められた。職業名まで政府が決めるのかと思う人もいるだろうが、この国では全てが管理の対象であるので、さもありなん、である。

 そもそも、中国では計画経済全盛期の1970年代まで「職業分配」という制度があり、大学などの教育機関を卒業する際に、国が個々人の職業を決めていた歴史がある。失業率はゼロだし、就活もしなくて良いが、将来は何になりたい?という質問も存在しない時代だ。

 以前、中国のベテランの現地スタッフから、「大学を卒業した時に、銀行か運転手かを選べたんだ。当時は、資本主義の権化の銀行なんて嫌だ、時代の最先端は運転手だろうと思ったけど、大失敗だった」との嘆きを聞いたこともある。なんだかんだ言っても、日本は自由な国である。

 で、新しい職業名だが、「防疫員」「消毒員」「公共衛生補助サービス員」は、新型コロナ下での影響だろう。でも、消毒員って……ひたすら消毒液をまくのが仕事だろうが何だか切ない。他には、「ネット検査員」「ライブ販売員」など、どうにも裏事情を考えたくなる職業名がある。

 気になったのは、「高齢者能力評価師」。高齢者の生活や認知能力、健康・精神状態を把握して要介護レベルを評価するもので、これは日本の介護認定調査員に相当する。中国でも高齢化が進み、いよいよ介護保険などの制度整備が本格化するという意味も含まれるとみられ、中国で介護事業に取り組む人にとっては注目の動きかもしれない。

 ちなみに中国政府は、あらゆる職業名を網羅した「職業分類大典」という職業一覧を2015年に定めているので、興味のある人は探してみてはいかが?インターネットも使いながら商品をPRしまくるライブ販売員があるくらいだから、ユーチューバーやハッカーがあるかも。

 よこやま・たつや:1971年兵庫県生まれ。静岡新聞記者を経て2001年、北京に留学。02年から日中経済協会。12年5月同協会上海事務所長(成都事務所長兼務)。17年8月に帰任。現調査部次長