タイ/下着大手がネット販売に活路/店舗2カ月間閉鎖で、マスク製造も

2020年07月28日(Tue曜日) 午後1時25分

 タイでは新型コロナウイルス感染症対策として飲食店や商業施設、小売店が一時閉鎖されたことを機に電子商取引(EC)が拡大している。2カ月近くにわたり販売店の閉鎖を余儀なくされた大手下着メーカーもオンライン販売に活路を見いだそうとしている。下着作りの技術を生かし、新型コロナ禍で需要が拡大しているマスクの製造にも乗り出した。

 タイの女性用下着市場でシェア2位のサビナは、同国政府の命令により3月下旬に全国に展開する販売店585店が一時閉鎖されたことを受け、自社のウェブサイトや会員制交流サイト(SNS)を通じたオンライン販売やテレビ通販を強化。販売店の店員1200人の一部を動員し、SNSでの販売を担当する従業員を30人増員した。

 これらの戦略が功を奏し、2020年第1四半期(1~3月)のオンライン売上高は前年同期比で49%増加した。同社のブンチャイ最高経営責任者(CEO)は、第2四半期も好調を維持し、前年同期比で20%増加するとの見方を示す。

 一方で、同社の第1四半期の連結決算は、純利益が26・0%減の7044万バーツ、売上高が12・0%減の6億8159万バーツと2桁%の減収減益となった。

 ブンチャイ氏はNNAに対して、「過去4~5年間で減収となったのは初めて。オンライン販売は好調だったが、店舗の一時閉鎖による影響をカバーし切れなかった」と話した。

 タイでトップシェアを握るタイワコールもオンライン販売を強化している。タイワコールの担当者によると、自社のウェブサイトのほか、「ラザダ」「ショッピー」といったECサイト、得意先である流通大手セントラル・グループのECサイトを駆使し、販売を促進している。

 同社が国内に展開する約800店の販売店も政府の命令により一時閉鎖を余儀なくされた。第1四半期の国内の売上高は前年同期比20・3%減の6億6800万バーツに落ち込んだ。

 女性用下着の場合、購入する際に採寸や試着を希望する消費者が多く、オンライン販売は難しいとされる。40代の女性会社員は「下着は服と異なり、ぴったりのサイズでなければならない」と話す。20代の女性会社員も「サイズが合わないと困るので、下着はオンラインで購入したことがない。購入する前に生地の肌触りを確かめることも重要だ」と指摘する。

 このような消費者の声に応えるため、サビナは、タイで人気のインフルエンサー(インターネット上などで影響力を持つ個人)を起用し、動画のライブ配信を通じて下着のデザインや肌触り、着け心地など細かい部分まで紹介し、消費者が試着しなくても購入しやすいように工夫している。

〈技術生かしマスク20万枚製造〉

 タイワコールは、下着作りの技術を生かし、下着の素材を使用して3月にマスクの製造を開始した。同社の担当者によると、4月末までに約20万枚を製造し、タイワコールの近隣住民やタイの政府機関に寄付したほか、日本のワコールの社員用に供給した。

 サビナも下着の製造を一時停止し、布製マスクの製造・販売に乗り出した。地元紙クルンテープ・トゥラキットによると、国内の工場5カ所で製造体制を整え、5月半ばまでに20万枚を病院に供給した。

 同社は現在、個人向けにも1枚100バーツで販売している。タイでは新型コロナの感染の第1波はほぼ収束しつつあるが、第2波が起こる可能性があるほか、以前から問題となっている微小粒子状物質「PM2・5」への懸念からマスクの需要は今後も拡大していくと予測。工場の従業員2千人を動員して、増産していく方針を示している。

〈下着市場、年6.5%成長〉

 タイワコールは、1970年にワコールと消費財大手サハグループの中核企業サハ・パタナピブンの合弁会社として設立、83年にタイ証券取引所(SET)に上場した。

 現在、ワコールが33・61%、サハグループの持ち株会社サハ・パタナ・インターホールディング(SPI)が23・06%を出資し、東部チョンブリ県、プラチンブリ県、北部ランプン県の工場4カ所で女性用下着や子供服を製造している。タイワコールの担当者によると、年産能力は2019年時点で2千万枚(うちブラジャー850万枚)。製品の80%をタイ国内で販売し、残り20%は日本を中心に輸出している。

 タイ投資委員会(BOI)によると、国内の女性用下着市場は120億バーツ規模で、11年以降、年平均6・5%の成長率を維持している。タイのティスコ証券によると、市場シェア(売上高ベース)は18年時点でタイワコールが38%でトップ。サビナが26%で続き、欧州のトリンプが4%となっている。堅調に拡大している女性用下着市場だが、今年は他の業界と同様に新型コロナによる影響が見込まれる。〔NNA〕