明日へ これが我が社の生きる道 染色加工編(75)

2020年07月31日(Fri曜日)

レースなどの見本を染色  ケーワイ染芸

新型コロナウイスル禍は、改めて言うまでもなく染色業界にも暗い影を落とす。しかし、ほとんど影響を受けていない工場もある。新商品用サンプルとして試作されるレースや編み地の染色を請け負うケーワイ染芸(大阪府四條畷市)は、来年、さらには再来年向けサンプルの染色に追われている。

 同社は、「この道50余年」の山本健一氏(75)が2000年に創業した「工房」で、夫婦二人で運営している。山本氏は、大阪市立泉尾工業高校の色染工業科を卒業後、大阪の編み地染色工場に勤め、同工場の役員になった。ところが同工場が廃業したため、同じ大阪の別の編み地染色工場に請われて役員に就任する。しかし、その工場も廃業してしまう。そこで独立することにした。幸いにも、染色を行うのに適する場所が見つかり、小口の注文に対応できる設備を備えた工房を設け、サンプルなどの染色を受託し始める。

 独立前に勤めていた二つの工場は、大手企業からの大口の注文に対応していたが、サンプルの染色にも応じていた。当時の顧客は、山本氏の独立を知ると、同氏にサンプルの染色を依頼し始めた。このため、山本氏の工房は順調に立ち上がり、その後も安定的に注文を得ている。

 現在、名古屋、石川、神戸、岡山、広島、四国など幅広い地域から注文が舞い込む。いずれも、人的つながりで取引が始まった。今後も、無理して顧客を増やすつもりはなく、現在の顧客を大切にしていきたいと山本氏は言う。

 実は同社は、昨年4月にホームページを開設した。これを見て、販売代理店として同社の受注の窓口になりたいといの依頼が来たが、断ったという。「顧客を増やすために開設したわけではない」からだ。

 山本氏は、メーカーやクリーニング業者、輸入業者、個人商店などからの、色落ちなどの染色にまつわる相談にも有料で応じている。これらトラブル相談の顧客から、同社工場を見たいとの要望が寄せられた。ところが同社工場は、まだ世に出ていない新商品のサンプルを扱っているため、部外者の出入りを禁じている。このため、ホームページで工場内の一部の写真を公開することで、トラブル相談の顧客の要望に応えることにしたという。

 トラブル相談を通じて山本氏は、海外製に品質上の問題が多いことを再認識した。「国内で付加価値の高いモノ作りを行うことで、染色業の展望を切り開くことは可能だ」と、この道50余年の匠(たくみ)は語る。

(毎週金曜日に掲載)

社名:ケーワイ染芸

本社:大阪府四條畷市南野

   5丁目3-32

代表者:山本健一

主要設備:ドラム式染色機3台、レース用ウインチ染色機1台