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特集 安心・安全(2)/東レ「LIVMOA」/作業現場にクールビズを/保護服で働き方改革

2020年08月11日(Tue曜日) 午後4時38分

 「安全性と快適性」――東レが販売する「LIVMOA(リブモア)」は、その両立を実現した使い切り型の保護服だ。粉じん防護用や粉じん・油汚れ対策用などがそろい、利用者からは「暑熱環境下でも汗をほとんどかかずに作業ができた」といった声が返る。温暖化もあって夏の現場作業は年々過酷になっているが、リブモアがクールビズを可能にする。

〈国内トップシェア目指す〉

 安全性はもちろん、快適に着用することができる新しい保護服が「リブモア」だ。通気性と防じん性、耐久性、快適性の四つの特徴を持つ。中でも通気度は1秒間に1平方㌢当たり96立方㌢の空気を通し、一般的な防護服の通気度(0・6立方㌢程度)を大きく上回る。衣服内湿度も他社製と比べて最大で31%Rh(足踏み地)低減している。

 これまでの保護服では考えられなかったレベルの通気性能は、先端素材「トレミクロン」によって実現した。トレミクロンは、ポリプロピレン(PP)極細繊維からなるメルトブロー不織布(MB)で、繊維1本1本に高度な電石(エレクトレット)機能を付与して、不織布内部と外部に強力な電界を作る。

 エアフィルターにも使用されている、このトレミクロンをPPスパンボンド不織布(SB)で挟み込んだ3層構造とすることで、目に見えない浮遊固体粉じん(サブミクロンの微粒子ごみ)から大きなごみまで広くキャッチ・吸着する。これによって保護服に求められる防じん性と通気性を高いレベルで実現した。

 開発のきっかけは2011年に発生した東日本大震災だった。福島第一原子力発電所の除染・復興活動では、除染作業員が着用する保護服の通気性が低く、夏季の高温環境下では衣服内の温湿度が上昇して、汗による蒸れなどで過酷な状況をもたらすという課題があった。

 安全性を備えつつ、快適に着用できる保護服が必要と考えて開発に着手した。市場にはガリバー企業が存在し、特徴のある商品の創出が不可欠で、そこでトレミクロンに目を付けた。13年に高通気タイプを、14年に防水透湿タイプを製品化し、14年8月には福島県の除染・復興作業員向けにこれらを納入した。

 16年に素材から製品までの全てを東レグループで手掛けるディスポーザブル(使い切り)型保護服の総合ブランドをリブモアに設定し、世界で1千億円と推計される市場(日本は50億円)に本格進出した。製造業、メンテナンス、食品加工、建設業、アスベスト対策など、幅広い着用シーンに提案している。

 粉じん防護用では、全体にトレミクロンを使用した高通気ハイスペックタイプ「リブモア3000」、頭と胸、背中にトレミクロンを使った高通気スタンダードモデル「リブモア2000」をラインアップ。粉じん・油汚れ対策「リブモア3500」、クリーンルーム用「リブモアCL」、感染対策衣「リブモア5000」もそろう。

 リブモア5000は、トレミクロンは使用せず、防水・透湿フィルムをPPSBで挟み、高い透湿性による快適な着用感とウイルス・細菌への安全性(高バリア性・高耐水圧)を両立した。バイオーダーが中心になるが、ウェブサイト上にアップ。研究機関(企業や大学)向けに展開を強める。

 同社機能製品事業部では、高通気シリーズの涼しさを体感してもらうキャンペーンを実施し、「通気性がかなり良い」「粉じんの侵入が少なく、全体的に通気性も満足できる」といった反応が返ってきた。キャンペーンによって「どの業種や職種でニーズがあるのかが分かったことも大きかった」と話す。

 今後の拡販に向けたキャッチフレーズは「現場にもクールビズを」。働き方改革は着実に進んでいるが、まだオフィス内における改革が中心と言える。機能製品事業部は「現場の快適性を高めるための手助けをしたい」と話し、「日本の企業として国内ではトップシェアを取りたい」と将来の目標を語った。

〈「現場作業の『働き方改革』とその行方」/熱中症は職場でも発生〉

 機能製品事業部はこのほど、「現場作業の『働き方改革』とその行方」と題した情報ファイルをまとめた。日本の夏は猛暑・酷暑化が進んでいると報告するとともに、「熱中症の実態」や「働き方改革と現場作業」などについて詳しく解説している。今回はその一部を紹介する。

 日本の夏(6~8月)の平均気温は、この100年の間に約1・5℃上昇していると言われている。過去10年間における平均気温の推移を見ると、平年値を下回っているのは、2014年と15年の西日本だけ。特に18年は東日本でプラス1・7℃となり、1946年の統計開始以降で最も高かった。

 このまま温暖化対策が取られなかった場合、21世紀末には東京の真夏日(最高気温が30℃以上の日)が現在よりも57日増えて、103日に達すると予想されている。他の都市・エリアも同様で、大阪では68日、福岡では67日増加すると言われている。

 東京をはじめとする都市部では、建築物や道路舗装が増えている一方で、緑地や水面が減少し、気温を押し上げている。暑さは日中だけにとどまらず、夜間の最低気温が25℃以上の熱帯夜が増え、30℃を下回らない「スーパー熱帯夜」という言葉も出てきた。日本の夏は大きく変わりつつある。

 猛暑・酷暑化とともに増加が懸念されているのが熱中症だ。高温環境下で「熱の生成」と「熱の放散」の調整機能が破綻し、体内の水分や塩分(ナトリウム)が失われて熱がたまり(体温が上昇する)、それによって起こる障害を指し、応急処置で対応できるⅠ度から入院・集中治療が必要なⅢ度に分類される。

 熱中症の発生場所(19年)をみると、住居が最も多く、公衆(屋内、屋外)と続くが、道路工事現場や工場などの職場での発生も12・9%に達し、9195人が搬送された。過去5年間の職場での熱中症による業種別の死亡者を見ると、建設業が42・2%で最多。製造業11・9%で続く。

 熱中症は①肉体労働②高温・多湿③休憩不足④防護服・マスク――の四つが主な発生要因と言われる。この中で今すぐできる対策は防護服(保護服)の変更。従来の防護服・保護服は通気性が犠牲にされていた部分もあったが、東レは通気性と安全性を両立した「LIVMOA(リブモア)」を展開している。

 機能製品事業部は、製造業では熱中症対策も「働き方改革」の一つと話す。高温多湿な室内環境や保護具の着用などによって体内で発生した熱の放散や汗の蒸発がうまくいかなければ、屋内でも熱中症のリスクが高まることを認識して命を守る予防策を講じる必要があると強調する。