中国・日系繊維企業/コロナ禍60日とその後(上)/工場再開の条件はマスク

2020年08月19日(Wed曜日) 午後1時24分

 新型コロナウイルスの発生地となった中国は当初の2カ月間、感染拡大などで緊張を強いられたが、その後は徹底した都市封鎖や感染者の追跡調査でコロナを抑え込んでいる。企業活動は現在、ほぼ正常化しているものの、市場回復は分野によってまだら模様だ。日系繊維企業各社のトップに、コロナ発生からこれまでを振り返ってもらった。(上海支局)

 首藤和彦・在中国東レ代表は2月初め、春節(旧正月)休暇で戻った日本で、新型コロナの情報収集と対策に追われていた。まず取り組んだのが、休み明けに中国に戻る出向者の優先順位の作成と、戻った際の安全対策だ。「工場再稼働に必要な人材から戻ってもらうことにした」と振り返る。

 現地の総務・人事部スタッフとも頻繁に連絡を取り合い、工場再開に向け地元政府との交渉も進めた。「うちは現地化が進んでおり、その分交渉はスムーズだった」と言う。

 「コロナ感染が深刻化してから、まず思いついたのがマスクのことだった」。日本の本社や工場には、災害対策用のマスクの備蓄がある。「それを拠出してもらい、春節明けに優先的に中国各地に戻る50人ほどの出向者に持って行かせた」。

 案の定、地元政府から工場再開の絶対条件として、従業員のマスク着用を言い渡された。当時マスクが現地で入手できなくなる中、日本から持ち込んだマスクが重宝された。

 政府の工場再開の条件を満たせず、再稼働が遅れた他社工場もあったが、東レグループはほぼすべての工場が春節明けに操業を再開できた。「中国の従業員は約1万人だが、今のところ1人も感染者を出していない」と胸を張る。

 コロナ禍後の繊維事業の商況は、分野ごとに明暗が分かれている。衛生材料向け不織布は、“巣ごもり消費”の追い風もあり、絶好調だ。一方アパレル向けは厳しい。「これから年内まで大変苦しい状況が続く」。

 今年は全体的に大きな落ち込みが予想されるが、内需はいずれ回復する。「そこに向かって素材の高度化を図っていく」と言う。