中国・日系繊維企業 コロナ禍60日とその後(中)/特別許可で南通にとんぼ返り

2020年08月20日(Thu曜日) 午後1時30分

 ポリエステル長繊維の製織、染色加工を行う南通帝人も、春節(旧正月)休暇明けに工場を再稼働する際、地元政府から再開条件として求められたマスクや体温計の確保が最大の課題となった。マスクが中国国内で手に入らなくなる中、「日本本社やタイのグループ会社が備蓄していたマスクを急きょ送ってもらい、難を乗り切った」と三森啓章総経理(当時)は話す。

 再開に向けての地元当局との交渉は、三森氏が南通に戻った2月3日から始まった。「現地幹部が当局と毎日のように交渉し、再開条件を満たすための準備に追われた」。多人数で集まることが禁止されていたため、打ち合わせは臨時対策室となった日本人駐在員寮の食堂で、人数を絞ってひっそりと行った。

 日本人駐在員5人が、再開初日から復帰できたことは大きかった。「実務面だけでなく、ローカル社員の士気高揚につながった」。当時、駐在員4人は日本に一時帰国、1人はタイに旅行中だった。帝人グループは社員に対し、中国に戻るのを控えるよう指示を出していたが、「2月10日に再開できるか不透明な状況だったため、特別に許可を得て私は2月3日に、他のメンバーも2月9日までに南通に戻った」。

 工場再開後は順調に稼働率を高め、3月半ばには90%以上となった。現地従業員の復帰も早く、2月末時点で新型コロナウイルスの発生地となった湖北省出身以外の社員のほとんどが戻った。

 新型コロナ禍の影響で2、3月に滞った生産や出荷が動き出したことから、6月までは工場の高稼働率が続き、年初の計画通りの売り上げを達成した。

 ただ、これから中国内販、欧米向けともに苦しくなることが予想されるため、「効率化に取り組み、影響を最小限に抑えていく」。

 一方、中長期にはマーケットの流れが大きく変わることはないことから、環境対応、高付加価値化という方針を継続し、グローバルな顧客対応をさらに強化することで、この難局を乗り切っていく考えだ。

(上海支局)