変わるワークウエアの開発思想(9)

2020年08月26日(Wed曜日)

高機能でタウンユースにも  防寒・軽防寒・レインウエア

 ここ数年、暖冬が続いたことでワークウエアメーカーの防寒商品に対する開発意欲が薄らいだ。17秋冬は記録的な大雪が降り、この10年間で秋冬物の売り上げが最も大きかったが、それでも「過去にもっと売れた年もある」との声も聞かれ、電動ファン(EF)付きウエアの存在の高まりと相まって、秋冬物の売り上げのウエートは全体に下がりつつある。

 ただ、既にこの連載で取り上げた電熱式保温(EH)ウエアの広がりに加え、カジュアル化の流れもあり、防寒商品の開発も新たなステージへ移行しつつある。ワーカーのニーズはもちろん、一般ユースを捉えたデザイン、機能を兼ね備えたウエアが増えてきた。

 20秋冬ではアイトス(大阪市中央区)が高純度超微粒子セラミックスを均一に練り込んだ「光電子」わたを使った軽防寒ジャケットを開発した。中わたはたった60㌘。通常の中わた120㌘相当の保温性があり、かなり軽量化した。

 デニムとの相性が良い綿100%防寒も18秋冬以降、増える傾向で20秋冬ではクロダルマ(広島県府中市)が綿ツイル100%のカジュアルライクな防寒を打ち出した。

 保温性を高めるボア素材を内側に使うだけでなく、外側にデザインの一環として取り込む動きも。19秋冬で藤和(同福山市)がバルキーフリースジャケットを開発。20秋冬ではクロダルマがボアと天竺のハイブリッドによる防風ハイブリッドジャケットを打ち出した。

 一方で近年、気候変動の影響で突発的な激しい雨が降る日が増えてきた。そんな雨の中でも快適に過ごせるレインウエアとしても使える新たなウエアの開発も活性化し、20秋冬ではその傾向がより顕著になった。中国産業(岡山県倉敷市)のテクニカルフードジャケットは、袖の取り外しが可能で半袖にもなり夏場でも使用できる。アタックベース(福山市)のソフトシェルジャケットはカラーでブラックだけでなくホワイトもそろえタウンユースでも着用しやすい。旭蝶繊維(府中市)も防水透湿性の高い生地「ゴアテックス」を使い、普段使いでもおかしくないコート、パンツを打ち出した。

 撥水(はっすい)性では洗濯耐久性が売りの商品も増加。シンメン(府中市)や藤和が20秋冬から展開するウエアはある程度、洗濯しても機能性が維持でき、ハードな現場でも使い勝手が良い。

 さらに藤和ではナノサイズの穴から湿気だけが通り抜ける透湿性、耐水圧に優れた新素材のフィルム「TSテックス」を採用した全天候型の防風ジャケットも投入。3層構造でありながらソフトな質感で着心地の良さにもこだわった。

 寅壱(倉敷市)のマルチレイヤーシェルは高透湿撥水・ストレッチ機能に加え、アウターだけでなくミッドレイヤーとして上着の下にも着用できる面白い提案。着脱のためのジッパーが前ではなく裾にあり、かぶるタイプでスタイリッシュな印象だ。以前、“かぶり物”は敬遠される傾向にあったが、アノラックパーカがトレンドになる中、抵抗感がなくなってきたようだ。