ベトナム最新情勢/欧米商権への食い込みが鍵/新型コロナで足元は厳しい

2020年08月26日(Wed曜日) 午後1時4分

 2020年1~6月のアパレル輸入統計で、ベトナムからの輸入は重量ベースで前年同期比5・4%、金額ベースで同3・0%減少した。1位の中国、3位のバングラデシュが共に15%ほどの減少だったことと比較すると、2位ベトナムの減少幅はかなり小さい。しかし、欧米向けシェアの高い縫製工場が多いベトナムの現状は楽観視できるものではなく、廃業や規模縮小によるスタッフの大量解雇も頻発している。在ベトナム日系商社の今後を探る。(吉田武史)

 ベトナムの2020年1~6月GDP成長率は前年同期比1・8%だった。ここ10年は5~7%で推移していたため、同国全体の苦境が読み取れる。新型コロナウイルス禍の影響で4月から1カ月間ロックダウン(都市封鎖)を行い国民の安全を守ることはできたが、経済活動の停滞によって飲食店やホテルなどの閉鎖が相次ぎ、失業率も過去10年で最高の2・5%にまで上昇した。

 徹底した感染予防策で約3カ月間、市中感染が発生せず、「オーダーが回復基調」(日系商社)との声も聞かれたが、7月下旬に中部の観光都市ダナンで感染者が確認された。その後“第2波”の感染拡大が続いており、日系商社からは「再び先が見通せなくなった」との声が挙がっている。

 在ベトナム各社の今後の見通しは楽観視できない状況にある。「マスクや防護服関連資材などの特需があり計画通りの推移」(清原ベトナム)、「新型コロナ禍の影響で5、6月は苦戦したが、コロナ前の新規案件や中国からの生産移管で上半期は増収」(島田商事ベトナム)など服飾資材商社を中心に直近業績を拡大する例もあるが、商況は総じて厳しい。

 三井物産アイ・ファッションの同国における縫製品OEM事業は、スポーツやユニフォーム関連の好調により20年3月期まで堅調に拡大していたが、今期は「新型コロナ禍の影響が大きく全般的に生産減が続いている」。生地販売の蝶理ベトナムも上半期は売上高、利益ともに前年同期と比べ落ち込んだ。糸、生地、縫製品まで一貫展開する豊島ベトナムの4月以降の業績は「おおむね前年並み」と健闘しているが、「今後の見通しは厳しい」と言う。カケンテストセンターベトナム試験室の試験依頼件数も、機能性素材の依頼が増えてはいるものの、全体としては減少傾向だ。

 先行き不透明感が強まる同国繊維事業だが、「新型コロナ禍の影響で生産拠点を中国からベトナムにシフトしたいという要望がさらに強まった」(蝶理ベトナム)との声も挙がる。欧州との自由貿易協定(FTA)の発効や激化する米中貿易摩擦によって「欧米商権は今後著しく増加する」(島田商事ベトナム)との予測もある。

 米国、欧州、日本の新型コロナ感染状況と経済活動の動きを注視しつつ、加速する見込みのチャイナ・プラスワン潮流の着実な取り込みと、欧米商権にいかに食い込めるかが日系商社の当面の戦略になる。