産資・不織布通信(47)

2020年09月07日(Mon曜日)

環境特性を生かしながら  ▼ 旭化成「ラムース」

 旭化成が販売する「ラムース」は、独自製法による3層構造のスエード調人工皮革。1980年代に販売を開始し、40年にわたって高い評価を得てきた。自動車内装材からITアクセサリー、ファッションまで幅広い用途で使われているが、持続的成長に向け開発に力を入れている。

 ラムースは表面層、中間層、裏面層で構成され、各層では超極細繊維が3次元に絡みあう。中間層には薄手の特殊織物を用いて寸法安定性と強度の向上を図っている。上質な肌触りや多彩な意匠性に加えて、再生ポリエステルや水系ポリウレタンを使用するなど、環境特性に優れていることも特徴の一つだ。

 展開を開始してから2010年代初めまではソファをはじめとする家具用途が主力だった。リーマン・ショックなど、苦しい時期もあったと言うが、開発力や商品力で乗り越え、現在は自動車内装材を中心に多用途で採用される。生産設備の増強も順次実施してきた。

 そんなラムースも新型コロナウイルス感染拡大の影響は避けられなかった。米国や欧州の自動車工場の操業が休止し、3月末から5月中ごろまで自動車内装材向けの動きが止まった。一方でアジア生産が多く、巣ごもり需要の恩恵もあり、ITアクセサリー用途は順調な推移を示した。

 自動車は米国などで生産・販売に回復の基調が見られ、ラムースを使う電気自動車(EV)も増えている。タブレットやパソコンは個人に加えて学校などでも需要が増え、ITアクセサリーの引き合いも続くとみる。19年度には届かないものの、20年度の売り上げは“悪くない”としている。

 とはいえ、世界の自動車生産台数が19年並みに戻るのは、4、5年かかるという観測もある。このため環境に配慮した人工皮革という特性を前面に打ち出し、サーキュラーエコノミー(循環型経済)やサステイナビリティーへの意識が高い顧客の需要を取り込む。

 その一環として環境対応のための開発に注力する。使用するポリエステルを将来は再生糸100%とし、ポリウレタンの原料を検討。再生可能エネルギーへの転換や二酸化炭素(CO2)の削減、使用した水の回収・再利用など、多様な取り組みを進めている。

 新たな用途についても探索を続ける。過去には大きな塊にならなかった用途などでも新型コロナ禍で価値変容が起こり得るとして、さまざまな分野にアプローチを仕掛ける。3層構造を生かしたフィルター分野など、産業資材の深耕も図っていくとしている。

(毎週月曜日に掲載)