特集 アジアの繊維産業(2)/識者に聞く/コロナショック下のアジア/経済成長は当初計画から下振れ

2020年09月10日(Thu曜日) 午後1時19分

 新型コロナウイルス感染拡大はアジアにも暗い影を落としている。経済成長は各国とも当初計画から下振れしている。一度は感染が下火となった地域で、第2波が襲っているところもある。感染防止策と経済政策。このバランスをどう取るのか。日本貿易振興機構(JETRO)に、インドネシア、ベトナム、バングラデシュの現況などを聞いた。

〈経済活動再開に苦慮/所得低下が内需に響く/インドネシア/JETRO海外調査部アジア大洋州課 山城 武伸 氏〉

 新型コロナウイルス感染者数が東南アジアで初めて10万人を突破したインドネシア。ASEANの中でも感染者数が多い。このほどインドネシアから帰国した海外調査部アジア大洋州課の山城武伸氏に現地の状況を聞いた。

 インドネシアでは3月2日に感染者が初めて確認された。ジャカルタでは4月10日から、東ジャワ州では4月28日から大規模社会制限(PSBB)が始まった。その後、ジャカルタでは経済再開に向けてPSBBの移行期間フェーズ1を6月5日にスタートしたが、新型コロナの感染収束のめどが立たないため、再延長が繰り返されている。東ジャワ州スラバヤ地域は6月8日にPSBBを撤廃し、市・県ごとに移行基準を発表している。スラバヤ市では夜間の外出や娯楽施設の営業が禁止された。

 現在、ジャカルタよりも東ジャワ州の方が累積感染者は多い。ジャカルタではマスクなど対策が比較的しっかりしているが、スラバヤでは7割ほどがマスクを付けず、感染者が増えたとみられる。東ジャワ州は医療施設(病床)も少なく、医療崩壊の懸念も一部でささやかれている。

 インドネシアの経済は内需が中心で、グローバルサプライチェーンとしての外需の影響は少ない。このため、景気動向は内需次第という構造。ジャカルタはフェーズ1として従業員や収容人数の50%を上限として、事業所やレストラン、小売店の操業を認める。しかし、ショッピングモールに行く消費者は少ない。所得が落ち外食も少なくなった。今後は解雇や倒産、所得の落ち込みがどうなるのかを注視している。

 6月に日系企業362社にアンケート調査したが、約半数の企業で駐在員が日本に避難帰国。再入国のタイミングも日系の課題となっている。(取材日:8月6日)

〈ダナン市中感染で警戒感/外資の動きに注目/ベトナム/海外調査部アジア大洋州課 北嶋 誠士 課長代理〉

 ジェトロの北嶋誠士アジア大洋州課課長代理は3月下旬までベトナム・ハノイに駐在していた。ベトナムには2004年から3回赴任し、経済成長を現地で見てきた。現在の新型コロナウイルス禍をどう見ているのか。

 ベトナムが経済発展した理由は幾つかある。政府が経済を自由化、市場開放したことが一つ。FTA(自由貿易協定)を活用して現在、13本のFTAが発効。8月1日にはEU(欧州連合)とのFTAも発効した。こうした積極的な取り組みで、昨年は輸出額でタイを追い抜いた。賃金上昇で縫製業は地方に進出してきたが、人口の7割近くが農村部に住み、まだまだ発展の余地は大きい。インフラや人材の質においても優位性がある。

 ベトナムの実質GDP(国内総生産)成長率は7%前後で推移してきた。コロナ禍でも20年4~6月期は0・36%のプラスを保持する。製造業は3・2%のプラス。サービス業はマイナス1・76%で、特に宿泊・飲食は28・57%のマイナスだった。これは4月1~22日に感染拡大防止策として「全社会隔離」を行ったためだ。不要不急の外出を禁止したが、工場は感染防止対策を取ることで操業できた。

 4月23日以降は全社会隔離の制限措置を緩和、5月に入って原則解除した。しかし、7月25日にダナン市で100日ぶりに市中感染が広がり、同28日にダナン市は再び全社会隔離となった。ハノイやホーチミンでも感染予防策を強化している。

 ベトナムは外資を呼び込み、雇用を生み、輸出により発展してきた。今後を予想する上では、外資の動きが鍵となる。ベトナムの輸出額を見ると前年同月比ベースで5月が底だった。7月時点で全体は0・3%増だが、外資はマイナス4・9%にとどまっている。(取材日:8月20日)

〈縫製工場はほぼ操業再開/オーダーの戻りを注視/バングラデシュ/ダッカ事務所 安藤 裕二 所長〉

 バングラデシュでは3月26日~5月30日までロックダウン(都市封鎖)が講じられ、政府機関・オフィスの営業を停止、自宅待機が要請された。5月31日以降は規制緩和が始まっている。ダッカ事務所の安藤裕二所長に現状を聞いた。

 バングラデシュの2019/20年度(7~6月)の実質GDP(国民総生産)成長率は5・24%のプラスだった。目標は8・2%だったが、新型コロナ禍の影響を受けた。1人当たりのGDPは1970ドルと、2千ドルは目前にある。20/21年度の実質GDP成長目標は8・2%としている。

 3月末~5月末のロックダウンでは受注済みの仕事については、工場稼働できた。しかし、欧米ブランドから32億ドル相当(約10億枚)のキャンセルが出て、230万人のワーカーに影響が出た。輸出を行う縫製工場は4千程度あるが、3~7月で179社が倒産・休業した。

 政府は4月に経済刺激策を講じ、無利子ローンなどワーカーの賃金支払いを支援した。外資系は対象外だったが、交渉の結果、期間限定で3カ月分の給与を親会社から借りることができるようになった。

 3月以降、衣料品の輸出額(全体の8割を占める)は大幅に減少したが、4月に底打ちした形。19/20年度の衣料品輸出は279億ドルで前年比18・1%減だった。7月単月の衣料品輸出額は前年比1・98%減で、前月比では44%増と、回復傾向にある。今後のオーダーの戻りがどの程度か注目される。

 日系縫製企業は3月末から工場を停止したが、5月末には操業を再開した企業が多く、既にほとんどが完全操業の状況にある。ただ、21春夏の日本からのオーダーは、例年よりスピード感がないという声もある。(取材日:8月20日)