特集 アジアの繊維産業(6)/コロナショック下の現地企業は今/他国に比べ影響は軽微/ベトナム

2020年09月10日(Thu曜日) 午後1時23分

 1~6月のベトナムのGDP成長率は1・81%増だった。新型コロナウイルス禍の影響で経済活動が停滞した。ただ、他のアジア諸国と比べるとベトナムの新型コロナ禍被害はまだましと言える。世界銀行などの各機関による2020年のGDP成長率予測では東南アジア全体がマイナス成長になっているのに対し、ベトナムは2・7%から4・1%増となっている。在ベトナム日系繊維企業の現状を紹介する。

〈糸、生地、製品の一貫化/日系の優位性生かす〉

 縫製品OEM/ODM事業とミシン糸販売を手掛けるモリリンベトナムでは、11年の法人設立以降、ミシン糸販売で着実にシェア拡大が進んでいる。さまざまな品種のミシン糸を多品種・小ロットで供給でき、別注依頼に細やかに対応し、ベトナム国内での染色も可能といった機能が受け入れられている。

 生成りで展開していた「テンセル」100%のミシン糸「エムセル」でカラー展開を始めたところ、サステイナビリティーの要素もあって欧州大手アパレルとの商談が進行中という。今後もミシン糸販売のシェアアップを狙うとともに、縫製品事業ではタイ法人と連携するなどで独自性を発揮していく。20年12月期は新型コロナ禍で苦戦を強いられるものの、前期比横ばいを目指している。

 糸・生地販売のクラボウ・ベトナムは18年12月の設立以来、現地協力工場との連携を深めてきた。新型コロナ禍の影響で今期は計画比減収、減益を見込むものの、対日だけでなく、既にスタートしている内需向けをさらに拡大することで難局を乗り切る構え。

 糸・生地販売と縫製品生産管理を行うトーレ・インターナショナル・ベトナムの新型コロナ禍における商況は現時点で前年同期並みと健闘している。ただ、生地コンバーティングを主体に事業拡大を推進していたことから計画比では15~20%ほど下振れする見込みと言う。今後は新規顧客開拓、糸・生地から縫製までの一貫提案を加速させるとともに、生地の品種バリエーション拡充や生産ロット小口化を推進する。

〈ベトナムシフトさらに進む/内需獲得が今後のポイント〉

 糸、生地、縫製品に携わる豊島ベトナムの商況は、2、3月に中国リスク回避の流れを取り込んで受注を増やし、4月以降も前年並みと堅調な推移。「今後は厳しくなってくる」と読むが、素材部門、製品部門の連携を強め、東南アジア、南アジアを中心に第三国からの仕入れルートを開拓するなどで乗り切る。

 生地販売を主力とする蝶理ベトナムの上半期は売り上げ、利益とも昨年と比べて落ち込んだが、緊急事態宣言解除後は追加オーダーもあり回復傾向という。今後は「生産拠点のベトナムシフトの声がさらに増えてきた」とし、蝶理の再生ポリエステル糸「エコブルー」の拡販に力を入れるほか、組織管理の強化などに取り組む。

 三井物産アイ・ファッションのベトナム事業は4月以降、新型コロナ禍の影響で生産減少を余儀なくされている。日本市場の悪化が響いた。今後は引き続きカジュアル系素材の開発に注力するとともに、既存縫製工場との取り組み強化、ベトナム素材への対応強化、欧州向け拡大などに取り組む。

 国営繊維企業グループ、ビナテックスと連携する伊藤忠グループのプロミネント〈ベトナム〉は内需の取り込みを課題とし、「レニュー」や「ライクラ」「クールマックス」といった戦略素材を核とした原料素材縫製一貫のバリューチェーン構築に力を注ぐ。

 ヤギ・ベトナムの対日縫製品OEMの1~6月は、前年同時期を上回る取扱高だった。メンズ拡大方針や生活雑貨拡大戦略が奏功した。昨年から始めた生地の備蓄販売も徐々に伸びている。新型コロナ禍の影響は徐々に強まっているが、生地販売の拡大、生活資材分野の深耕に加え、内販や対日以外など「トライアンドエラーで法人ならではのスキームを作っていく」。

〈おおむね堅調な服飾資材/検査機関は機能素材が鍵〉

 服飾資材の島田商事〈ベトナム〉の直近商況は、新型コロナ前の新規案件獲得や中国からの生産移管によって増収と健闘した。このほど完成した工場、検品センターなどから成る複合施設の事業を軌道に乗せ、拡大が予測される欧米向け商圏の取り込みを狙う。

 同じく服飾資材を取り扱う清原ベトナムも、マスクや防護服資材などの特需にも支えられて売り上げ、利益とも計画通りの推移となっている。今後は機能性資材の開発、手芸資材の充実などを図る。

 今年1月にホーチミン事務所を開設したシキボウは、ベトナムの協力工場やインドネシアの自社工場で生産した糸・生地の販売拡大を進めている。新型コロナ禍で抗ウイルス加工「フルテクト」への引き合いが活発化していることを受け、環境配慮商材と合わせ、ベトナム向け拡販を狙う。

 カケンテストセンターベトナム試験室への試験依頼は新型コロナ禍の影響で減少傾向。その中でも機能性素材の依頼は増えていると言う。今後は短納期ニーズの高まりに備えて納期管理を徹底するほか、ベトナム市場拡大を見据えて内販に関する法律の洗い出しを進める。

 ボーケン品質評価機構のホーチミン試験センターへの試験依頼は、19年よりは鈍化したものの20年も増加傾向。同国では高級品やファッション性の高い衣類、寝装品がまだ少ないためだとみられ、「他国よりも新型コロナの影響は軽微」と指摘する。今後は防護服関連の受注拡大や雑貨品などの品質評価試験を拡充する。