特集 アジアの繊維産業Ⅱ(3)/中国・東レグループ/連携強化が実を結ぶ/内販、輸出で成果

2020年09月11日(Fri曜日) 午前11時38分

 東レグループで、南通(江蘇省)に拠点を置く長繊維テキスタイル製造販売の東麗酒伊織染〈南通〉(略称TSD)と、合繊長繊維製造販売の東麗合成繊維〈南通〉(TFNL)、研究・技術開発拠点の東麗繊維研究所〈中国〉(TFRC)に、商事会社の東麗国際貿易〈中国〉(TICH)を加えた4社の連携が実を結んでいる。連携により開発した高付加価値素材の中国内販や、輸出で成果を上げている。

〈TSD/短納期対応を強化〉

 TSDは欧米や地場のスポーツブランドがネット通販を伸ばし、短納期を求めていることから、その対応を強めている。納期短縮により、追加生産向け需要を積極的に取り込んでいる。

 同社の2020年3月期業績は、自動車とアパレル分野の市況悪化を受け、振るわなかった。

 内販は、新車販売不振でエアバッグが苦戦。カジュアルとダウンウエア向け販売も、暖冬や新型コロナウイルス禍の影響で一部を除き厳しかった。

 日本の大手SPA向けも暖冬の影響でダウンウエア向けが伸び悩んだ。一方、メガスポーツブランドがメインの欧米向けは、南通のグループ会社と一体になって開発したストレッチ素材のアスレジャー製品への採用が進み、販売を伸ばした。

 新型コロナの感染拡大後も、欧米や地場のスポーツ向けが健闘している。新型コロナ禍の影響は7月から強まりつつあるが、その中で単月売り上げが前年並みに回復した顧客もある。こうした勝ち組は、ネット通販を拡大している。

 これに対応し、大口顧客向けの短納期対応を4月から本格化。生機の絞り込みや生産ラインの見直しで「平均して4、5日短縮した」と秦兆瓊総経理は話す。今年度後半はITもフル活用し、短納期対応をさらに磨いていく。

〈TFNL/チップ紡糸集中で成果〉

 TFNLは2018年、連続重合・直接紡糸によるポリエステル加工糸とチップの製造を終了し、バッチ重合・チップ紡糸に集中した。狙いは多品種の特品原糸を小ロット・短納期で提供し、収益を改善することだった。

 19年はこの成果で開発スピードが速まり、特品率が高まった。「設備の切り替え時期で生産量が落ち込む可能性もあったが、前年並みを維持した。利益も出すことができた」と山田浩之董事長は話す。

 販売が特に好調なのが、ポリエステルバイメタル糸だ。「TFRCが開発した紫外線遮蔽機能を持つ原糸など、バイメタル糸の生産量が増えている。一部は生産が追い付かないほどだ」(山田董事長)と言う。

 バイメタル糸は、TSDやTICHの顧客への提案が進み、多様なアイテムに採用が広がっている。特にニット製品での採用が目立つ。ヨガウエアなどのアスレジャー製品向けとして、軽量なポリエステルのストレッチ糸が引き合いを受けている。

 新型コロナ流行後は、素材ごとで明暗が分かれている。ポリエステル原糸は1~3月に稼働率が下がったが、「その後回復した。8月は秋冬向けの原糸の生産が増え、高稼働率を維持できた」。

 一方、定番のナイロン原糸が市場価格の低迷を受け、苦戦している。そのためTFRCと連携し、高度化に取り組み、挽回を図っていく。

〈TFRC/東南アジアのテコ入れへ〉

 TFRCは2019年、スパン素材向けのポリマーから原綿、紡績までを研究・技術開発対象とする研究棟を新設した。目的は、中国や東南アジアなど海外繊維事業の強化。従来、各エリアでばらばらだった開発を1カ所に集中し、東レグループとして一つの核になるスパン素材を生み出そうとしている。

 この1年、同研究棟の試験設備はフル稼働している。小回りの利いた開発ができるようになり、原綿、紡績糸の複数の開発品を既に各社に提案中だ。「幾つかの素材は東南アジアの工場での試験が済んでいる」と清水敏昭総経理は述べる。

 開発品の中で顧客からの評価が特に高いのが、長短複合紡績糸だ。「東南アジアのポリエステル・綿混事業のてこ入れになることを期待している。今年度中に具体的な成果を上げたい」(清水総経理)と言う。

 コンバーティングによるスパンテキスタイルの内販を手掛けるTICHと連携した開発も、ファイバーから紡績糸、テキスタイルまで多岐にわたる。スパン素材の開発にとどまらず、TICHの外注工場の品質、技術保証も一手に請け負っている。

 南通東レグループ各社との連携も進む。TFNLが生産するナイロン原糸の高度化のため、このほどナイロン重合の研究に乗り出した。従来から特殊ナイロン原糸の開発を手掛けていたが、今後は重合まで踏み込み、ポリマー開発も展開する。

〈TICH/2期連続で過去最高益〉

 TICHの繊維事業は2019年度、2期連続で最高益を更新した。バグフィルターの定番品から撤退した産業資材以外、全ての部門(生地、紡績糸、製品)が健闘した。

 短繊維織物が中心の生地は、昨年後半から営業を本格化した中国市場向け素材ブランド「エボトゥルース」を中心に拡販している。東レグループの差別化素材を使い、原糸・原綿から生地まで一貫開発した生地で、新型コロナ流行前まで地場の大手レディースやカジュアルブランドへの採用が順調に進んでいた。

 紡績糸は、ネット通販ブランドなどの靴下やインナー、セーター向けの販売が伸びている。東レ本体と連携した再生ポリエステル繊維を使ったリサイクル糸や、中綿の取り組みも始まった。

 製品販売は19年度、横ばいで推移した。内販、輸出とも、再度組み立て直し、拡大を図っていく考えだ。

 新型コロナ流行後、紡績糸と生地はアパレル市場の回復待ちとなっている。一方、スエード調人工皮革「ウルトラスエード」の自動車内装向け販売は堅調で、フィルター関係などの産業資材も足元では計画を達成している。

 「産資の今年度の売り上げは前年を大きく上回れそうだ」と増井則和総経理は述べる。

〈インタビュー/在中国東レ代表 東麗〈中国〉投資 董事長兼総経理 首藤 和彦 氏/輸出は中国、東南アジア双方で対応〉

  ――2019年の中国繊維事業は。

 おむつ用途の不織布が芳しくなく、アパレルも暖冬や顧客の在庫拡大の影響を受け、売り上げが思ったほど伸びなかった。20年も苦戦するとみて、慎重な計画を作っていた。

  ――そこに新型コロナウイルスの感染拡大が重なった。

 新型コロナの流行で厳しい経営環境は続くとみている。一方、全体的には厳しいが、好調な分野もある。

 絶好調なのが、おむつ用途のPPスパンボンドなどの不織布だ。中国で不織布はスパンボンド、メルトブロー不織布とも新型コロナ禍で需要が爆発的に増えた。国の指導もあり、他社がマスクや防護服向けに生産を集中したことで、おむつ用途の不織布が供給不足に陥った。一方当社は、おむつ向けをしっかり供給していく方針を採ったことで、おむつ用素材メーカーとしての信頼が高まった。

 また“巣ごもり消費”で衛材の生活必需品が伸び、大手メーカーのおむつの販売も回復した。19年から強化した地場おむつメーカーの新規開拓も成果が出てきた。これら複数の要因が好調の背景だ。

  ――中国新車販売台数が前年同月を上回っている。自動車向け資材は。

 当社のエアバッグや、内装向けのウルトラスエードなどの自動車用途も売れ始めている。

  ――アパレル向けは。

 大変厳しい。5月までは契約オーダーの残りの消化があり、大きく落ち込まなかったが、影響が出てくるのはこれからだ。顧客が新型コロナの影響を加味し、生産調整しており、年内は苦しい状況が続くとみている。

  ――東レは中期経営課題“プロジェクト AP―G 2022”を策定し、事業拡大を図っている。中国での注力点は。

 まずは不織布の拡大がポイントになる。おむつ用途のPPスパンボンドを生産する東麗高新聚化〈佛山〉(TPF)を19年11月に広東省佛山市で設立し、今年4月から工場を稼働した。6月からフル生産が続いている。22年までの2年間は、南通と今回の佛山をフル稼働で回し、事業を拡大していきたい。

  ――アパレル向けの中期計画は。

 内需はこれから回復していくとみられ、そこに向けて素材の高度化、付加価値化を続けていく。問題は輸出だ。サプライチェーンは今後、縫製を中心に中国から東南アジアにさらに移っていく。当然、素材も現地で求められるが、合繊長繊維織物の良い工場は現状、数えるほどしかない。東レとして拠点化をどう図るかを考えていかないといけない。

 一方、中国ほど多様な素材がそろう場所はどこにもないため、中国からは簡単に離れられない。そのため、東南アジアの強化と同時に、われわれの中国拠点をさらに磨く投資も続ける。加えてTICHが取り組んでいるようなコンバーティングに注力する。こうしたビジネスは、パートナーがそろった中国でしかできない。パートナーが東南アジアに進出する際、一緒に出ていくことも選択肢になる。