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シリーズ事業戦略/シキボウ/“新型コロナ後”へ準備/衛生加工の拡販進める/上席執行役員 繊維部門長 加藤 守 氏

2020年09月25日(Fri曜日) 午後3時51分

 新型コロナウイルス禍によって事業環境が急変する中、シキボウは2020年度(21年3月期)から21年度(22年3月期)までの緊急2カ年計画を策定する。“コロナ後”に向けた準備を進める。繊維部門は引き合いが急増している抗ウイルス加工などの拡販に取り組みながら「ニッチな分野で競争力のある商品でモノ作りという基本戦略を追求する」と加藤守上席執行役員繊維部門長は話す。

  ――20年度は新型コロナ禍で厳しい事業環境が続いています。

 4~6月も厳しかったですが、7~9月はさらに状況が悪化する可能性があります。新型コロナ禍の影響で原糸、ユニフォーム、中東民族衣装用織物いずれも振るわず、工場の稼働率が低下したことが利益を圧迫しています。原糸は国内の高級アパレル向けが多いですが、新型コロナ禍で小売店が休業・営業時間短縮となった影響が出ています。ユニフォームは元々、流通在庫の増加で市況が軟調だったところに新型コロナ禍で需要が一段と減退しました。企業別注案件でも更新の延期や中止が出ています。中東民族衣装用織物は昨年から市況に改善の兆しが強まっていたのですが、そこに新型コロナ禍が起こり、現地で行動制限が課されるなどでビジネスが停滞してしまいました。このため取引先企業も売掛金の回収などが十分にできず、資金繰りが悪化するケースも出ています。

 原糸、ユニフォーム、中東民族衣装織物の荷動きが停滞したことで国内工場だけでなく海外子会社の稼働率も低下しました。インドネシア子会社のメルテックスは紡績の稼働率が80%にとどまっています。ただ、織布は備蓄生産もあってフル稼働を維持し、染色加工も資材向けが安定していることで順調です。

 一方、新型コロナ禍によって新しい需要も生まれています。例えば抗ウイルス加工「フルテクト」は引き合いが急増し、抗菌や制菌など衛生加工全般への注目が高まりました。従来とは異なる分野からの引き合いが増えていることも特徴です。寝装、タオル、カジュアルに加えて百貨店ブランドなどこれまではあまり関心を示さなかった分野からも引き合いが来ています。提案方法もバーチャルリアリティー展示会を開催するなど新しい手法に取り組みました。非常に好評だったので今後もリアル展示会と併用する形で活用を進めます。

  ――一部で市況回復の兆しもあります。

 カジュアル分野は、ここに来て少し回復してきました。停滞していた商談も徐々に再開できるようになり、21春夏に向けた話も始まっています。中東民族衣装織物も動き出しました。少しずつですが正常化に向けた兆しがは見えてきました。

  ――下半期の課題と戦略は。

 本来なら21年度から新しい3カ年中期経営計画がスタートする予定でした。しかし、新型コロナ禍が発生したことで計画の前提条件が大きく変わりました。そこで今期から21年度までの緊急2カ年計画を全社で策定中です。現在の厳しい環境を乗り越えることと、ウイズコロナ、アフターコロナに向けてどうすべきかを考え、準備するためです。この中で繊維部門としては、まずは引き合いが急増している抗ウイルスなど衛生加工を実商売としてどれだけ拡大できるかが重要になります。その上で、ニッチな分野の競争力のある商品でモノ作りをやるという基本戦略を並行して実行することを考えています。

 新型コロナ禍によって事業環境は大きく変わる可能性があります。オンラインや会員制交流サイト(SNS)の役割が大きくなることに象徴されるように、売り方、提案方法、販売チャネル、いずれも大きく変化していくでしょう。こうした変化に対応しながら、モノ作りを徹底することを目指します。その中でも、やはり衛生商品、環境配慮商品、サステイナブル商品が重要になるでしょう。

 抗ウイルス加工など衛生関連の機能加工は従来、ファッション分野ではあまり注目されていませんでした。しかし、新型コロナ禍以降、こうした分野でも採用の動きが相次いでいます。これをきっかけに機能加工に対する認識が一気に変わる可能性があります。こうした流れを受け、生地への機能加工だけでなく、機能糸の提案も強化します。

 環境配慮型商品では、サステイナブルな農法で生産された米綿による「コットンUSA」認証素材や燃焼時の二酸化炭素排出量を抑える特殊ポリエステル繊維「オフコナノ」を積極的に提案します。サステイナブル商品でもグループ会社である新内外綿がリサイクル糸の販売を開始しました。こうしたモノ作りを通じて、“新型コロナ後”への準備を進めます。