メーカー別 繊維ニュース

不織布新書20秋(2)

2020年09月29日(Tue曜日) 午後4時25分

〈東レ/紙おむつ向けPPさらに拡大〉

 東レは前中計で不織布事業に関わるグループ売り上げを1千億円に引き上げる拡大戦略を進めていたが未達に終わったため、2020年度からの中計で再度チャレンジ。22年度で「1100億円くらいを目指したい」考えだ。

 ポリプロピレン(PP)では前中計で「拠点の整備を着実に進められた」といい、中国・仏山の新工場で4月に量産を開始して以降、垂直的フル操業を実現した。

 インドでは、新型コロナウイルス禍に伴うロックダウン(都市封鎖)で新工場を稼働させられない状況が続いているが、「お客さんに早くお届けしなければならない義務がある」としており現在、10月スタートを目標に準備を進めている。

 紙おむつ向けPPでは韓国をヘッドクオーターとする取り組みを強化。引き続き事業拡大を推進し、アジアトップのポジションを堅持する方針。

 滋賀事業場の設備を活用した商品開発も重視しており、顧客から寄せられる多様なニーズにポリマーブレンドと複合紡糸の技術を駆使し応えていく。

 新型コロナ禍に伴うマスク用途からの旺盛な引き合いに対応するため、上半期にマスク換算で年産1億枚体制を構築しており、アフターコロナの生活様式を注視しながら「次の策を考える」。

 ポリエステルでは、日本、韓国とも順調に推移しているといい、中計の期間中に「両国で増産対策を実施したい」と意欲を示している。

〈東洋紡 不織布事業/長短総合の強み前面に〉

 東洋紡は4月1日付の組織再編で生活・環境ソリューション本部を発足。傘下にスパンボンド、フィルターが主力のAC事業、短繊維不織布を展開する呉羽テック、ユウホウなどを配置した。

 開発、販促面などでの水平連携を改めて強化し、「長短総合不織布メーカーとしての総合力を発揮させる」のが目的だ。

 主力のスパンボンドの生産規模は年産1万2千~1万4千トン。この間、フル操業を続けてきたが、2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦戦に転じているという。

 スパンボンドでは、今のところ受注販売にとどまっている重金属イオン吸着シート「コスモフレッシュNANO」の本格販売をにらんだ販促を重視している。

 土木工事のときに残土から流出する有害な成分を含んだ水を吸着し土壌汚染を防止する特性を改めて打ち出し、早期本格販売を目指す。

 原反輸出の拡大も計画する。米国に駐在員を派遣しマーケティングから着手するとともに、メキシコに外注拠点を確保。日本から輸出する原反を自動車関連資材に加工し北米に供給するビジネスを立ち上げている。

 外部から調達するマスク向けのメルトブロー不織布といった新型コロナ禍拡大を防止する商材の開発・販促にも力を入れ、一定の事業規模へ育成したい考えだ。

〈ユニチカ/再び拡大基調へ〉

 ユニチカ・不織布事業部は2020年度、業績改善への手応えを強めており、スパンボンド、スパンレースを再び拡大基調へと転換させる。

 19年度は米中貿易摩擦やスパンレース「コットエース」での苦戦、年度後半に発生した新型コロナウイルス禍の影響などで「不織布事業は伸び悩んだ」と言う。

 しかし、20年度はスパンボンド、スパンレースとも「反転させられる」としており、スパンボンドではプラスアルファの高付加価値品で拡販を計画。新型コロナ禍に伴い引き合いが増えている防ダニ、消臭、抗ウイルス各タイプを重点的に投入する。

 タイ・タスコではカーペット基布、土木、建材の3用途を主力に展開しており、今後は新規用途に位置付ける自動車関連資材や防護服などを第4、第5の柱に育成する。

 スパンレースでは、制汗シート向けなどに展開するコットエースの販売を回復させており、今後もコスメティック関連市場での販促に重点化し成長路線を維持したい考えだ。

 既に各方面から引き合いを集めるコンクリート湿潤養生シート「アクアパック」の市場浸透も重視しており、今後2~3年かけて大型素材に育成する。アクアパックを使えばコンクリートの高品質化、コンクリート構造物の長寿命化が得られる。

〈クラレクラフレックス/メルトブローを伸ばす〉

 クラレグループは2020年12月期をゴールとする中期3カ年計画に取り組んでおり、クラレクラフレックスは初年度、2年目の業績は「計画を上回った」と言う。

 最終20年は新型コロナ禍に伴い苦戦へと転じたため、同グループは21年には単年度の事業計画で臨み、22年から新しい中期5カ年計画を立ち上げる。

 同社は21年で選択と集中を徹底するとともに経費削減、コストダウンを改めて強化。22年から再び成長路線へと転換させる方針。

 現在、メルトブロー不織布を年産1800トンから同2700トンに増設する設備投資を進めており、11月から量産に着手。ユーザーからの引き合いに応じ切れていないマスク用フィルター向けなどで拡販を計画しており、21年中に新設備をフル稼動させる。

 当面、マスク向けの拡販を優先させるとともに、夏場の着用を快適にするために開発した通気性の高い原反を浸透させるため、販促活動にも力を入れる。

 主力の乾式「クラフレックス」では、国内の立て直しを急ぐとともに、「カウンタークロス」を海外市場にも普及・浸透させるために強化してきた取り組みを再検討。飲食店などで安全・衛生を求める機運がさらに強まるとして、除菌や抗ウイルスのような機能性を付与するための開発にも意欲を示している。

〈フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン/強みのリサイクルを訴求〉

 フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパンは本国が増設した台湾工場の早期フル稼動を目指した取り組みに力を入れている。

 同社は台湾工場からポリエステルスパンボンドを輸入しており、カーペット基布、フィルター、シューズ、建材などの用途に展開している。2020年度で中計の最終年度を迎えており、新型コロナ禍に見舞われる19年度までは順調に推移させてきた。

 本国が台湾工場をこれまでの2系列による年産2万トンから3系列・同3万1千トンへと増設し5月から新設備を立ち上げている。

 今後は1・2号機でカーペット、建材、フィルター、シューズ向けを生産し、3号機をこれら以外と開発用に活用することで効率生産を実現したい考えだ。

 この間、1・2号機がフル稼働を続けていたため、開発に充てる設備の余裕がなかったという。今後は設備面で生じる余裕を活かし商品開発にも重点的に取り組む。すでに異形断面糸によるスパンボンドを商品化しており、サンプル出荷を進めている。

 同社はリサイクルポリエステルで商品化した豊富な商品ラインを構えている。この強みを前面に打ち出し、サステイナブルへの志向を強める欧米メガブランドへのアプローチを強化しシューズ向けなどで拡販に取り組んでいる。

〈三井化学/国内外の3拠点がフルに〉

 三井化学は4~8月、日本と中国、タイの3極でフル操業を続けている。2019年度(20年3月期)は低迷していた紙おむつ用途が回復したほか、マスク用やアイソレーションガウン用途の需要拡大が寄与している。注力している産業材用途も着実に増えており、20年度は前年度を上回る販売量を見込んでいる。

 同社不織布事業は、紙おむつをはじめとする衛材向けのスパンボンド不織布(SB)やメルトブロー不織布(MB)を主力としている。新型コロナウイルス感染症は自動車や土木関連で負の影響をもたらしたものの、紙おむつの回復やマスク需要の伸長が寄与して上半期は順調に推移した。

 下半期以降については、マスクやアイソレーションガウンなどの国内生産が定着するとみている。紙おむつ向けは需要が落ち着くと予想するが、そうした状況下でも柔軟高強度不織布「エアリファ」など高付加価値品を積極展開する。エアリファは薄肉の中空構造を持ち、使用するプラスチック原料が削減できる。

 MBでは100%子会社のサンレックス工業(三重県四日市市)の設備を増強し、1月に営業運転を開始した。マスクのほか、液体フィルター用途も順調で設備はフルに動いている。再度の増強も検討する。同子会社ではマスク用ノーズクランプ「テクノロート」の増設も進める。

〈前田工繊/抗ウイルスPPSB開発〉

 前田工繊は、抗ウイルス剤を練り込んだポリプロピレンスパンボンド不織布(PPSB)を開発した。医療機関などに使われるシーツやシート用途などへの浸透を想定しており、抗ウイルス活性値は3・0以上を示す。繊維評価技術協議会の抗ウイルス加工の「SEKマーク」も取得した。

 後加工と比べて機能が長続きするほか、「製造時間が短く、コストも抑えられる」と言う。長年にわたって培ってきた練り込み技術を駆使して開発しているため、「抗ウイルス剤があっても簡単にはまねができない」と自信を示す。滋賀県東近江市の能登川工場で製造する。

 医療機関などで使用される敷ふとんカバーや枕カバー、待合室の椅子に掛けるシートといった用途に提案する。医療用ガウンやサージカルマスク、ヘアキャップ、シューズカバーなどの用途にも目を向ける。価格は同社の一般的なPPSBの約3・5倍で、受注生産で対応する。

 高機能PPSB「ボナレックス」シリーズの一商材として2021年から本格販売を開始する。同シリーズには抗ウイルスのほか、抗菌・防ダニ、抗菌をそろえている。抗菌系のPPSBは数種類の抗菌剤を使い分け、さまざまなグレードの提案が可能。ベッドやマスクのほか、不織布製立体間仕切りの自社製品にも応用している。

〈大和紡績/グループ協業で差別化〉

 大和紡績の合繊事業本部は、スパンレース不織布(SL)の販売方針として、除菌用途(ワイパー)の強化とコスメティック分野の立て直しを掲げる。新型コロナウイルス禍で市場環境が変わる中、「製品の差別化がこれまで以上に不可欠」と捉え、ダイワボウレーヨンとの協業による開発に力を入れる。

 合繊事業本部のSL販売は、新型コロナの感染拡大の影響もあって除菌用途が順調に推移している。その一方で制汗シートやフェースマスクなどのコスメティック分野は勢いを欠いたが、全体としては販売が伸び、国内の2工場はフル稼働が続いている。

 除菌用途は差別化の推進で継続強化を図るが、生分解などの環境対応を重視する。ダイワボウレーヨンと連携し、水中で容易に崩壊するレーヨンショートカットファイバーの活用を進めるほか、リサイクル糸も使う。

 コスメティック分野は機能とサステイナビリティーの両面でてこ入れする。フェースマスクは風合いを向上するほか、伸縮性を付与。制汗シートは吸液性と拭き取り性を高める。ここでもダイワボウレーヨンとの協業による開発を加速する。

 合繊わたについては、国内外で販路を増やすとし、生分解性熱接着複合繊維「ミラクルファイバーKK―PL」の販売を始める。多くの顧客が興味を示しているという。