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不織布新書20秋(3)/旭化成のパフォーマンスファブリック・スパンボンド事業/コロナ後も見据え中期戦略推進

2020年09月29日(Tue曜日) 午後4時26分

 旭化成グループは2021年度までの中期3カ年計画「Cs+for Tomorrow 2021」に取り組んでいる。新型コロナウイルス感染拡大によって20年度はこの間、強化してきた成長戦略にブレーキがかかってしまったが、目指すべき方向性に変わりはなく、スパンボンド、パフォーマンスファブリックの双方で新規設備の立ち上げを含む事業拡大が進められている。新型コロナ後も見据え中期計画の後半戦をどう乗り切っていこうとしているのか、三枚堂和彦・中嶋康善両事業部長に聞いた。

〈スパンボンド事業部長 三枚堂 和彦 氏/タイ・AKSTで成長戦略/高付加価値品の開発を推進〉

  ――2019年度の業績はいかがでしたか。

 主力の紙おむつ向けでは善戦できましたが、下期から多少、景気が下降局面に転じたため、一般資材向けがよくありませんでした。それと、竜巻の影響で延岡工場が止まったため、この影響を下期以降に受けました。

  ――延岡工場の停止を決めました。

 年産1万3千トンの設備がなくなる影響は小さくありません。敷地は残っているのですが、延岡にスパンボンドの新工場を建設することはありません。今、進めている開発案件に取り組み、延岡のマイナス分をリカバリーしていきます。

  ――紙おむつ市場の今後をどう見通していますか。

 全体として大きな変動は少ないと考えています。日系おむつメーカーが苦戦を強いられた時期もあったと思いますが、新型コロナ感染拡大に伴い中国勢がマスクや医療用ガウン向けの販売を増やした結果、今年の春先は中国内のおむつ用スパンボンドが全体的にタイトになり、結果、日系おむつメーカーのポジションが再度上がったと考えています。インドを含むアジア全域が紙おむつの需要増をけん引し、今後も年率5~6%で市場は成長を続けていくとみています。

  ――新型コロナ禍の影響は。

 自動車や建材などにマイナスの影響が出ている一方、マスクやガウンなどでは特需が発生しています。20年度は新型コロナ禍に見舞われた中、どう生き残っていくのかを大きな課題に位置付けています。幸いスパンボンドの用途は多岐にわたっているため、マスクやガウン、巣ごもり需要などをキャッチアップしマイナスをミニマイズすることは可能だと考えています。

  ――タイ・AKSTでポリプロピレンの増設を進めています。

 年産3万5千トンを年産5万トン体制へと引き上げます。新型コロナ禍で多少の遅れが生じるかも知れませんが、21年の夏から量産をスタートさせます。今、もっとも重視しているのがAKSTでの拡大戦略です。

  ――柔らかさを引き上げた新タイプの開発を進めています。

 触れば既存品と違うことがすぐに分かります。まだクリアしなければならない課題が残されていますが、これまでのところお客さまからの評価は上々です。現在、ブランド名をどうするかを検討中です。AKSTでは22年度内には新設備をフル稼動させる計画です。タイにはまだ1系列を導入できる余裕があるため、1~2年後というわけにはいきませんが、どこかで次の増設を検討したいと考えています。

  ――ポリエステルの状況はいかがですか。

 主力用途の一つである自動車分野は既に回復へと転じています。ただし、生産台数が1億台に達するにはそうとう時間がかかるというのが大方の見立てです。車の吸音材用途が注目を集めており、中でも電気自動車の普及等もあり、低周波領域の雑音を効率的に吸音する対応が求められています。これが、実は難しい。当社は「プレシゼ」で低周波に対応する吸音材の開発にチャレンジしています。

  ――今後の開発の方向性は。

 汎用品のゾーンを攻めても、海外勢に勝つことはできません。当社がターゲットとするのは、あくまで高付加価値品のゾーンです。生分解性ポリマーで商品化した「エコライズ」が他社品と大きく異なっているのは熱成型ができることです。この点が受け入れられ、じわじわと販売量が伸びてきました。今後もこういう商品の開発に特化していきます。

〈パフォーマンスファブリック事業部長 中嶋 康善 氏/上質感や環境特性前面に/ニーズを先取りして開発〉

  ――パフォーマンスファブリック事業部を取り巻く事業環境は。

 不織布事業部の名称を改め、スエード調人工皮革「ラムース」と旧応用製品営業部のフィルタービジネスの二つを柱に事業を進めています。

 2020年度(21年3月期)は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けています。ラムースは自動車内装材を主力としているので影響が大きく、特に第1四半期は厳しかったと言えます。生産調整とコストダウンに力を傾けるなど、事業の筋肉質化に取り組みました。フィルタービジネスも新型コロナの影響を受けました。

 ラムースは、自動車内装材用途が勢いを欠きましたが、巣ごもり需要も手伝ってITアクセサリー分野の販売は伸びました。7月以降の自動車生産台数が日本、欧米ともに回復の兆しが見えつつあります。フィルター分野も自動車の回復に合わせて燃料フィルターで動きが見えるようになってきました。

  ――下半期はどのようになると予想していますか。

 回復基調ながらも、自動車の生産台数は19年の水準に達しないとされており、ひと言で表すと「読めない状況」にあります。新型コロナ感染拡大の第2波、第3波の影響も懸念されます。

 しかしながら自動車の生産は止めないと予想しており、内装材の動きが止まることはないでしょう。

 さらに言うと、ラムースは新車種への採用(新規案件)が順調に拡大しているので、生産台数が減っているからといって、同じような水準で落ち込むことはなく、むしろ20年度の下半期は、前年度並み販売が確保できるとみています。実際にイタリアのミコ社の受注も増えています。

  ――新規案件が増えている理由を分析すると。

 米国のセージ・オートモーティブ・インテリア(セージ社)を傘下に収めた効果が顕在化しているのが一つですが、ラムースの製品そのものが持つ品質や高級感が評価されていると捉えています。環境特性も見逃せないでしょう。人工皮革が、動物愛護の観点から天然皮革に替わる第一の選択肢になっているのが寄与しています。

  ――「ユーテック」シリーズなどのフィルタービジネスは。

 高機能商品の「ユーテックナノ」をはじめとする製品の機能や性能は評価されており、採用事例も増えています。とはいえ、主用途の一つである燃料分野(石油精製品の製造などでの油水分離)は、石油精製自体が減っているので市場の劇的な拡大は見込めません。高い機能が求められる分野・領域での提案を強めます。

  ――事業部の中期的な方針を教えてください。

 ラムースは3号機が19年に立ち上がり、21年以降にフル稼働を見込んでいます。4号機についても当初の予定通り進めていくので、新型コロナ禍ではありますが積極的な営業活動を続けます。自動車は搭載車種をさらに拡大するためにセージ社、ミコ社との連携をこれまで以上に深めていきます。

 これはラムースに限ったことではありませんが、常に新しい提案ができるように、ニーズを先取りした開発を強化します。これまでと同じやり方ではいけないと思っています。