メーカー別 繊維ニュース

創刊70周年記念特集 中部・北陸版(1)/日本の繊維産業をけん引/今後の成長ベクトルを展望

2020年09月30日(Wed曜日) 午後1時23分

 中部・北陸地方は日本の繊維産業をけん引する企業が集積する。ウールを主力とする尾州、合繊が中心の北陸のほか、高密度織物の遠州や副資材や生活資材などを扱う三河・知多といった産地があり、規模を問わず多様な企業が存在している。

 中部経済産業局が所管する中部地方は日本全体の1割経済といわれているが、繊維産業に限ると従業員数や製品出荷額はそれを上回る。北陸にあるほかの県を含めると出荷額の3割を占めており、日本の繊維産業の中でも重要な立ち位置を示している。

 経済産業省の工業統計表によると、2017年の都道府県別の製造品出荷額では愛知県(3789億円)が第1位。第3位に福井県(2396億円)、第6位の石川県(1963億円)、第8位の岐阜県(1402億円)とベスト10のうち4県が中部・北陸地域だ。

 さらに、愛知県、岐阜県、静岡県、三重県、山梨県、長野県、福井県、石川県、新潟県を含めた中部・北陸地方の17年の事業所数は全国の30%(3520社)、従業員数は31%(7万8668人)、製造品出荷額は35%(1兆3195億円)を占めるほどだ。

 繊維産業でも中部・北陸地方の企業は川上から川下までのモノ作りで国内の中心的な役割を担い、アパレル生産ではいち早くグローバルに展開してきた。繊維産業を取り巻く環境は年々厳しさを増しているが、生産や販売面の強みを追求しながら時代の変化に柔軟に対応してきた。

 それを可能としたのは各企業が経営資源を有効活用するために戦略を立て、組織を作り、人を動かし、技術・市場・経営ノウハウといった新たな資源を内部に蓄積してきたからこそ。衣料品の販売不振や人手不足など厳しい外部環境が続くが、変化に対応するべく今後も変貌を遂げる。

 こうした企業が描く今後のビジョンは何か。今年は新型コロナウイルスの感染拡大で先行きの不透明さが際立つなか、AI(人工知能)やモノをインターネットにつなぐIoTをはじめとしたデジタル化の進展やSDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みなどが強化されている。各企業の成長ベクトルを展望する。

〈タキヒヨー/新たな試み続々と/「語れる事」があるモノ作りを〉

 新型コロナウイルス禍で、業界構造の変化が加速した。タキヒヨーの滝一夫社長は、「今までの商売を今まで通りにやることは、たぶんもうできない」として、新しい試みを次々に打ち出す。そのために外部の人材も招へいした。同社社員と彼らが組んで、育てるべき商売のネタを複数考えている。

 同社は海外の著名ブランドへも生地を販売している。それを支えているのが、生地の企画開発室だ。その機能を活用し、「語れる事」があるモノ作りに力を入れ続けると同時に、新たな市場を開拓する。例えば、在宅勤務が増えたことを受け、家でくつろぐことができ、テレビ会議に出ても違和感がなく、近くを外出する際にも着れる服を、上質な素材で開発する。

 ただ、それだけでは十分ではないと言う。例えば、差別化の余地が小さいベーシックアイテムについては、パターン(型紙)を工夫することで着用感や見た目を良くすることに取り組んでいる。「値段は同じだが、こっちの方がかっこいい」と思わせるような、「価値が価格を上回る」商品を生み出す。

 「自分は何を求めているのか」という発想での商品企画も試みる。「自分が欲しい物だから、自信を持って提案できる。それが売れればうれしい。その積み重ねが新しいアイデアにつながる」と滝社長は語る。

〈瀧定名古屋/多様な人材の力を発揮/常に挑戦し発信力高める〉

 瀧定名古屋は従業員一人一人の力を発揮できる会社作りを目指す。多種多様な人材を抱えており、グループ内での連携を図ることで、さまざまな事業や分野でそれぞれが活躍できる環境を構築。さらに、時代の流れに沿った発信力を高め、常に挑戦する集団としてまい進する。

 同社は生地や製品の企画からモノ作りはもちろん、生産や販売までを国内含めアジアや欧米などグローバルな視点で展開を進めてきた。そうした中で人材面でもグローバル化をはじめとした多様な広がりを見せており、従業員一人一人の力を発揮させることでさらなる成長を目指す。

 同社が手掛ける事業や取り組み、組織体制なども多種多様なため従業員が活躍できる土壌は既にある。最大限に力を発揮させるためにも、事業や取り組み、部署ごとの連携を一段と深め相乗効果を促す。瀧健太郎社長は「これからは個人の力を発揮するための会社でありたい」と強調する。

 戦後の混乱期を経て、オイルショックやリーマンショック、そして会社分割など幾多の荒波を乗り越えてきた同社。大きな時代の変化を見極めながら、常に何かに挑戦してきたからこそ今がある。今年は新型コロナウイルス感染拡大による影響は計り知れないが、今後も挑戦という気概を持ち続けながら発信力を高めることに力を入れる。

〈豊島/常に新しい市場創造を/クリエーティブな集団へ〉

 豊島は新しい市場やニーズを創造しライフスタイル商社としての志向を体現する。激変する潮流に即応するクリエーティブな集団に進化を遂げる。

 1841年創業の豊島は長い歴史の中で常に変化を繰り返してきた。原料から最終製品までヨコの連携を強化しながらさまざまな商流を構築。変化する市場とそのニーズを独創的な視点で捉え顧客の期待に応える。

 2021年6月期に向けては三つのポイントに重きを置く。①既存取引先と新しい世の中に向かい一緒に取り組める企画提案②新型コロナウイルス禍で需要の高い医療・衛生関連商材の供給③サステイナブルに加えトレーサビリティーを追求し新しいライフスタイルに合う商材開発――を掲げる。一例として製品は主力のSC向けアパレルに加え新しい技術を複合した商材で異業種への参入を狙う。

 豊島半七社長は「新型コロナ禍を言い訳にせず意欲的にチャレンジする現場の社員は素晴らしい」と高く評価する。マスクや防護服関連商材の新規取り扱いを短期間で行うという姿勢はまさに“激変する潮流に即応”した結果。異業種へ開拓の足掛かりを作り、それを生かして次のステージを創る。

 将来に向けては「クリエーティブな仕事を『活き活きとした』姿勢で取り組む企業」を目指す。現状維持に満足せず、グローバルな視点で新たな市場開拓を進める。

〈信友/積極的に挑戦する企業へ/「変わらないリスク」大きい〉

 信友はリスクに挑戦する企業集団へと変革する。伊藤康彦社長は「これからの時代は変わるリスクより変わらないリスクの方が大きい」とし、新しい事業や取り組みを積極的に進める。

 同社は誠実で堅実なビジネスが社風として根付いている。伊藤社長は「もちろんそれは良い面でもあるが、言い換えるとあまり冒険をしないということだ」と語る。安定志向になるのではなく、絶えず挑戦する積極性が必要だと強調する。

 新型コロナウイルスの感染拡大も関係する。先行きの不透明さが際立つなかで社内の雰囲気も暗くなりがち。「従業員にはできない理由を探すのではなく何ができるかを考えてもらい、私がそれを後押ししていきたい」と述べる。

 伊藤社長は新型コロナ禍の中、6月末現職に就任した。特に若い世代へは新しいことに次々とチャレンジすることを呼び掛けている。「アンテナを高くしながら常に動き回っているような組織作りができれば」と話し、若手を主導する中堅社員の育成にも努める。

 同社は1862年創業で160年近い歴史を誇る。長い歴史で培ったモノ作りの知見を生かし、綿やウール、麻などの天然繊維からポリエステルなどの合繊までを手掛ける。原糸・原材料、テキスタイル、製品の計3部門で顧客のニーズに応えている。