メーカー別 繊維ニュース

技術の眼

2020年10月02日(Fri曜日) 午後1時34分

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こしうる重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈YKK/漁網用に「30VF」活躍〉

 YKKの最も大きいサイズ(№30)の「ビスロン」ファスナーは、「30VF」と呼ばれ、主に漁網用に使われている。№10、№15がしらす漁などの曳き網や養殖網(ダイバーの出入り口用)にも使われていたが、2010年にさらに大きいサイズとして30VFが開発された。

 定置網は通常、300~400メートルにも及ぶ。魚は最終的に箱網に追い込まれ、その天井部の取り出し口にファスナーが使われる。網が大型化するほど、強度が求められるため、ファスナーも大型化した。テープとネット部はポリエステル、エレメント(務歯)はポリアセタール、スライダーにはステンレスを使用。「№30にすることで、№15に比べ、横引き強度は約2倍に、エレメント引き抜け強度は約4倍に向上した」と言う。

 操業中にエレメントが壊れた場合に備え、ステンレス製の補修用エレメントも開発。破損部を取り除き、同箇所に船上で容易に取り付けることができる仕様である。

〈三菱ガス化学/新タイプのナイロン〉

 三菱ガス化学は独自のナイロン樹脂「エモクシー」を新たに開発し、繊維を重点ターゲットの一つとして市場開拓を進める。

 エモクシーは平塚研究所で研究開発を進めている独自の商品。ナイロンの1種だがナイロン6やナイロン66に比べて吸水性が低いなどの特徴を持つ。吸水率は2%以下でナイロン12と同等。一定の伸度があり、強度が高いため、独特のハリ感がある織物やニットを作ることができると言う。耐薬品性も高く、酸性とアルカリ性の双方に優れた耐久性を持つ。

 同社のナイロン樹脂は特殊品を得意とするが、繊維への展開はまだ少ない。エモクシーの開発を繊維での拡販につなげる考えで、紡糸設備を持つメーカーを中心に顧客開拓を進める。アウトドアなど機能性が求められる衣料用途、フィルターといった資材用途など幅広い用途を探索する。

〈泉工業/バイオマス原料ラメ糸〉

 ラメ糸製造販売の泉工業(京都府城陽市)はこのほど、バイオマス(植物由来)原料によるナイロンフィルムを採用したラメ糸を開発した。

 ラメ糸のラメは、ポリエステルやナイロンなど樹脂フィルムをスリットしたものを使用する。今回、フィルムにバイオマス原料ナイロンを採用した。既に透明タイプは開発が完了し、金属蒸着タイプも開発が進む。

 同社はこれまでにもセルロースフィルムを採用した生分解性ラメ糸「エコラメ」を開発するなどサステイナブルラメ糸の開発と提案に力を入れてきた。新たにバイオマス原料ラメ糸が加わり、ラインアップが一段と充実した。

 近年、欧米のテキスタイル市場ではサステイナビリティーへの対応が提案の前提条件となっている。このためバイオマス原料ラメ糸もエコラメと同じく欧米への輸出に取り組む産地のテキスタイルメーカーへの提案を進める。

〈丸安毛糸/擬麻に替わる新加工開発〉

 ニット糸製造卸の丸安毛糸(東京都墨田区)は、擬麻やこんにゃく加工に替わる新加工糸「プリスク」を開発した。清涼感のある爽やかな風合いが付与できるほか、粉落ちをはじめとする従来加工の問題点を解消した。綿を中心に幅広い素材に応用が可能。横編みに加え、丸編みや織物にも用途を広げる。

 擬麻加工やこんにゃく加工は、麻のような風合いや光沢を与える手法として定着しているが、のりの付き方による硬さの違いや洗濯での風合い変化、編み立て時などに生じる粉落ちといった難点があった。新開発の「ブリスク加工」は清涼感などの良いところを再現しながら、デメリットを克服しているのが特徴だ。

 清涼感のある素材として人気が高まっている和紙糸と比較して強度不安が少なく、編み立て性にも優れている。綛(かせ)ではなくチーズで加工した。製造コストは擬麻加工糸やこんにゃく加工糸と同程度に抑えられる。

〈東レ・ディプロモード/「水を纏う」Tシャツ〉

 東レのグループ会社である東レ・ディプロモード(東京都中央区)は濡れた生地が乾く時の気化熱冷却効果により優れたクーリング性能を発揮する「水を纏う」Tシャツを商品化した。

 同社は東レグループの先端技術を駆使し迅速な最終製品の開発を目指すD2Cプロジェクト「ムーンレイカーズ」を立ち上げた。先端開発技術を導入し“従来にない新しい商品”を“従来にないスピード”で開発した新商品。

 プロジェクトの第1弾として、同グループが培ってきた先端技術を駆使し、特殊な素材や編み地設計を通じ、水を纏(まと)うTシャツを開発した。

 濡れることでその機能を最大限、発揮する一方、通常の綿やポリエステルのように濡れた部分が濃く見えたり、生地が透けるようなことはなく、特殊な編み構造を採用したため、生地が水分を含んだ状態でもべたつきにくくさらっとしているという。UVカットや消臭機能も持つ。

〈太陽工業/新方式の防護服〉

 テント・膜構造物大手の太陽工業(大阪市淀川区)はこのほど、新方式の防護服「メディコン」を開発した。膜材を応用することで“究極のパーソナルスペース”を実現し、新型コロナウイルス禍で感染症と戦う医療従事者の防護スーツや病院・福祉施設の入居者を見舞う来客用スーツとして実用化を目指し、試験導入を開始する。

 新型コロナ禍で需要が急増した防護服だが、従来の全身を覆うタイプは通気性が悪く熱がこもるため過酷な着用感となることが課題だった。

 これに対して同社が医学の専門家や医療現場の意見を反映して開発したのがメディコン。ポリ塩化ビニル(PVC)コーティングの膜材を採用し、背中に装着した抗菌シート内蔵エアファンでスーツ内に空気を送り込み、着用時の快適性を確保する。使用後の洗浄などメンテナンス体制も整備した。今後、実用化に向けて病院運営などを支援する企業の協力を得て試験導入を進める。