明日へ これが我が社の生きる道 染色加工編(85)

2020年10月09日(Fri曜日)

消費者相手に染め替え   京都紋付

 黒色の紋付を作るための伝統技術、「京黒紋付染」。それを行う事業所はかつて京都に120ほどあったが、今では20を切った。年間400万着もあった需要が1万着以下に減ったからだ。そんな逆境の中、消費者のクローゼットに眠る服を、着たくなる服によみがえらせることで活路を開こうとしている企業がある。1915年創業の京都紋付(京都市)だ。

 4代目社長の荒川徹氏(61)は2001年に、「黒の世界を紋付以外へも広げたい」との小売店の依頼を受け、帆布製の小物やジーンズを深い色合いの黒に染める技術を確立した。この小売店との取り組みは頓挫したが、デニム製造会社勤務経験者が入社したことを受けて、黒色のジーンズやTシャツを自ら作って自社ウェブサイトや百貨店の期間限定店で販売するようになる。同時に、そのOEMも請け始めた。OEMは現在、同社事業の柱の一つとなっている。

 黒紋付の染色には普通アゾ染料が用いられる。その一部に、発ガン性物質を生成する恐れがあると指摘され始めたことを受け、同社はいち早く反応染料に切り替えていた。反応染料はアゾ染料よりも湿摩擦堅ろう度が高い。ただ、深い黒を表現することが難しかった。このため黒の表現に適する反応染料を3年かけて探し、深味を増すための仕上げ方も工夫した。このことも、ジーンズやTシャツなどの洋服分野に進出できた要因の一つだろう。

 洋服のOEMに乗り出して、事業領域のさらなる拡大に挑戦する。染め替えだ。着物を染め直してほしいとの依頼は以前から小売店を通じてあったが、洋服の染め替え依頼もたまに入る。荒川社長はこれに目を付け、自社ウェブサイトを通じて一般消費者から洋服の染め替えを受注しようと考えた。

 準備を進めていた13年6月、大手広告代理店から電話が入る。約100カ国で活動している環境保全団体のWWFが、中古衣料販売店と組んで古着を黒く染めるイベントを同年10月に計画しているが、染めるのを担当してほしいと言う。それに応じるとともに、イベントの開催に時期を合わせ、同社ウェブサイトで染め替えの受け付けも開始した。

 このイベントがきっかけで、メディアからの取材が増え、多くの人が事業を知ることになった。現在、ウェブサイトや代理店(クリーニング店、古着店、セレクトショップなど)、そして同社の期間限定店などで染め替えを受注している。受注は年々増え、3年前に、染め替えの売上高がOEMを上回った。現在では、繊維事業売上高の65%が染め替え、30%がOEM、5%が黒紋付染色受託という構成だ。

 9月に、染め替えサービスを「K」プロジェクトと名付け、受注サイトも刷新した。同時に、同サイトへ消費者を誘導してくれるパートナーを募集し始める。パートナーは、自社のホームページやチラシ、パンフレットなどに、染め替えサイトにつながるバナーやQRコードを表示するだけでいい。同社は、染め替えた服を消費者に発送する際、パートナーの店舗で使用できるクーポン(最大1500円)を発行し、同送する。パートナーの店舗で使用されたクーポンは、額面金額で同社が買い取るという。

(毎週金曜日に掲載)

社名:株式会社京都紋付

本社:京都市中京区壬生松原町

   51-1

代表者:荒川徹

主要設備:紋付染色機1基(月産能力2000反)、紋付濃色加工機1基(同10万㍍)、製品染め用ジッカー(同3㌧)

従業員:6人