ごえんぼう

2020年10月14日(Wed曜日)

日も短くなり、虫の音が河川敷を埋める。「きちきちの飛んで鉄道記念の日」(藤田あけ烏)。ショウリョウバッタが羽根を打ち鳴らす▼1872年の今日(14日)、新橋と横浜をつなぐ鉄道が開業し、「鉄道記念日」となった。しかし、1994年に「鉄道の日」に改称。“国鉄”のイメージを拭い、広く民間鉄道を含めた記念日にイメージを刷新する。この句は94年以前に作られたのだろう▼河川敷の先に鉄橋が渡る。鉄橋を越えると、町の名前が変わる。鉄道は町を結び、町を分かつ。子供の頃、バッタを追いつつ、知らずに違う町を行き来していた。87年に国鉄はJRへと分割・民営化された。余剰人員と切り捨てられた人たちの失意の声は国策にかき消されていった▼美しいものに囲まれて生活をしたいと思う。醜悪で姑息な現実に目をそむけたくなるこのごろである。「虫の音を弱りゆくかと聞くからに心に秋の日数をぞ経る」(西行)。