明日へ これが我が社の生きる道 染色加工編(86)

2020年10月16日(Fri曜日)

地元への恩返しを

のれんや旗、はんてん、手拭いに家紋などを入れる印染(しるしぞめ)。需要は減少基調にあるが、北海道旭川市でその印染を続けている企業が存在する。1907年創業の水野染工場だ。別会社を設立して自社製品を販売するなど、さまざまな仕掛けに取り組んできた同社。2021年夏には藍染めのテーマパークを開業する。

 元々は富山県の黒部で紺屋を営んでいたが、水野弘敏社長(56)の祖父・竹治郎氏が北海道へ移り、水野染物店を開業した。当時は富山から北海道に移住した人が多く、「先に旭川に移りすんだ人から染物屋がないので来ないかと言われて決断したようだ」(水野社長)。

 着物の染めが主力だったが、2代目・久造氏の時代にはんてんや大漁旗にシフトする。戦後に現在の水野染工場に社名を変更した。現在もはんてんと大漁旗、手拭いを主体としているが需要は減少基調が続く。最盛期には旭川市内に9件あった染工場は、同社を入れて2社しか残っていない。

 水野社長は4代目。「父に継いでほしいと言われたことはなかったが、小さな会社でも頑張れば成果が得られると思って入社を決めていた」と話す。大学を卒業し、京都の染工場での修行を終えてから家業に戻る。

 父母を除くと、数人の職人しかいない小さな職場。全てを自分でしないといけないような状態だったが、動きは早く、先進的だった。1993年に販路を北海道だけでなく、本州に広げ、97年に自社のホームページを開設。2004年に東京・浅草に販売店を設け、15年には海外市場に進出した。

 米国ではニューヨークやロサンゼルスなどの都市でイベントを実施し、北米最大規模のギフト関連展示会「ニューヨーク ナウ」にも出展。米国では買い付け担当者を通じて展開し、フランスとシンガポールの小売店に卸を行っている。国内外で販路を増やし、水野社長が入社してから売り上げ規模は10倍に拡大した。

 新しい取り組みとして進めているのが、藍染めのテーマパーク「印染の社」(仮称)の建設。旭川空港から自動車で約15分の土地(3千平方㍍)に藍畑や工房を設けて、物販(藍染め製品)や染め体験を提供する。整備する畑の面積は1500平方㍍で、藍が5千株栽培できるという。

 テーマパークは21年夏開業予定。首都圏からの集客を軸に年間1万人の来場を目指し、「観光拠点として少しでも多くの人に来てもらい地元に恩返しする」と話す。(毎週金曜日に掲載)

水野染工場

社名:株式会社水野染工場

本社:北海道旭川市大雪通3丁目

488の26

代表者:水野 弘敏

主要設備:インクジェットプリンター2台、硫化染めの水槽2器、手捺染台2台(15㍍)など

月産能力:手拭い換算で2万枚

従業員:40人