横山達也のチャイナ・アウトサイト(36)/「996」

2020年10月26日(Mon曜日) 午後1時19分

 電話番号? 違います。豚まん? それも違います。豚まんと言えば551。関西人は肉まんじゃなく、豚まん。じゃあスポーツカーだ! ああ、ポルシェね。違うんだわ。

 正解は、労働時間。中国でしばらく前に話題になった結構ブラックなお話し。時々、このコラムは数字だけのタイトルとすることがある。毎回その趣旨は違うのだが、今回は最強の数字の並びだ。

 簡単に言うと午前9時から午後9時まで、週6日働くこと。1週間の労働時間が72時間、まあ昼休みを入れても66時間くらいにはなることで、中国の法定労働時間の週44時間を大きく超える(日本は40時間)。問題になったのは大企業のトップが定時の勤務時間として当然のように語ったことだった。世間から大ブーイングの嵐に見舞われたのだが、中国のネットでは更なる驚きの数字が見られた。

 「8116+8」。午前8時から午後11時まで、週6日。そこに日曜日の8時間勤務が加わる。毎週98時間の勤務時間が定時なんて、笑えない。名のある経済人がうっかり会員制交流サイト(SNS)でつぶやいたりしたものだから、炎上なんてものではなく、公儀のお取り調べの沙汰になったとか。そりゃそうだ。

 中国は建国の建前上、もとい国是として労働者階級が最も大切な人たちであり、手厚い社会保障と労働環境の整備が重視されている、ことになっている。以前にも触れたが、細かい残業手当の設定や休暇の取得権利、暑さ対策の手当などもその一環だ。

 その労働者がどれくらい成果を生んでいるのかという指標として、労働生産性という数値がある。公益財団法人日本生産性本部のレポート「労働生産性の国際比較2019」によると、日本は2018年の1人当たりの労働生産性は約8万1千㌦でOECD加盟国36ヵ国の21番目、先進国としては長年にわたり下位に低迷しているものの、大きな数字ではある。中国は日本の4割ほどの約3万4千㌦であるが、日本の1割ほどしかなかった2000年と比べると急激に成長しているそうだ。

 「996」問題が騒ぎになっているとはいうものの、中国では急激に豊かになっている社会を背景に、がむしゃらに働くという姿勢と物質的豊かさを求める雰囲気は強い。長く働きゃいいというものではないが、とにかく一生懸命ではある。日本は「働き方改革」が叫ばれ、長時間労働をはじめとした問題の改善や労働環境、処遇の見直しなどが進められているが、しっかりやらないと一生懸命な中国の人たちに追い抜かれる日も来ないとは限らない。

 まあ、「996」や「8116+9」で仕事をしていると、ポルシェに乗る時間もないし、そんな企業が高額の賃金を支払うとは思えないけど。

 よこやま・たつや:1971年兵庫県生まれ。静岡新聞記者を経て2001年、北京に留学。02年から日中経済協会。12年5月同協会上海事務所長(成都事務所長兼務)。17年8月に帰任。現調査部次長