メーカー別 繊維ニュース

2020年秋季総合特集Ⅲ(8)/top interview 豊島/新しいライフスタイルを創造/社長 豊島 半七 氏/市場やニーズに適した開発を

2020年10月28日(Wed曜日) 午後3時38分

 豊島の豊島半七社長は「従来の常識や商習慣に基づくビジネスは通用しなくなる」と断言する。そして「新しいライフスタイルを創造し積極的に異業種との協業を進めながら市場とニーズに適した開発を強化する」ことを最重要課題に据える。ライフスタイル商社としての指向を体現するために既存取引先とのビジネスをより昇華。需要の増えた医療・衛生関連商材の拡充と安定供給を続ける。さらにサステイナブルでトレーサブルな供給を追求し付加価値を付けた提案を進める。

  ――新型コロナウイルスと共存する中で、日本の繊維産業はどのように変わっていくと思いますか。

 従来の常識や商習慣に基づくビジネスは確実に通用しなくなるでしょう。新型コロナ禍でマスクや防護服といった医療・衛生分野向けの商品が不足しましたが、ニーズは激変する潮流のごとく絶えず変遷を続けます。その中でいかにニーズにあった商材を適時に供給できるかが重要で、それを実行し続けられる企業が今後の産業の主軸を担うと思います。

 繊維から連想する糸や生地、アパレルや寝装関連品の需要はゼロにはなりませんが、時代や生活様式によって求められるモノが変わります。新しいライフスタイルを創造し異業種との協業を進めながら市場とニーズに適した開発を強化することが最重要課題だと考えています。

  ――その中で今期(2021年6月期)に向け取り組むべきポイントを教えてください。

 変化を続けながら多様化するニーズや生活様式に合わせた市場を主導的に創造し、ライフスタイル商社としての指向を体現します。その中で大きく三つのポイントを重視し取り組みます。

 一つ目は既存取引先と築き上げた結び付きとビジネスモデルを軸に、新しいニーズに向かい共に歩みながら企画提案をよりブラッシュアップします。

 二つ目は今年特に需要が増えた医療・衛生関連商材の拡充と安定供給を継続します。新型コロナ禍で従来の商取引が弱含みになった中、マスクや防護服関連商材のオファーが急増しました。それに呼応し短期間で供給ができたことは目標とする「世の中から頼りにされる企業」の役割を果たしていると言えるでしょう。今後も安定的な供給を果たすべく注力を続けます。

 三つ目はこれまで続けてきた環境配慮への取り組みを体系付けし今後に向けたフォーマットの構築を目指します。サステイナビリティーとトレーサビリティーの両面を追求し新しいライフスタイルに合った商材の開発を進めます。

 新たに創造する市場は小さくニッチなものであってもよいと思います。ブルーオーシャンを探しながらその土台を固めて適切に領域を広げるビジネスを、腰を据えて行うことが大事だと考えます。

  ――部門別の課題と方針はいかがですか。

 繊維素材部門は独自開発素材の拡充と国内ならびに海外の未開拓市場への拡販を進めます。綿花はさらに取扱量が減少するとみていますが、原糸や生機・加工織物部門は三国間貿易や輸出が増えています。今後も海外取引の拡大を目指します。

 繊維製品部門は販売チャネルの多様化に対応した適切な商品供給と、別業態や異業種への新規商材の提案と導入に向けた営業面の強化を図ります。生産国と密接に連携し、納期と品質管理の精度をさらに高めつつ輸入商材の集約と輸送効率化を高めます。デジタル技術で企業を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進やCVC(コーポレートベンチャー・キャピタル)を活用し新たな付加価値の提供も視野に入れたビジネスを展開します。

  ――持続可能性に向けた取り組みと他社と差別化したルートも着実に構築が進んでいます。

 原料調達から供給までの持続可能性を突き詰めると原産地や原料の出自や背景、生産工程から流通に至るまでがはっきりしなければならない。それがエシカル(倫理的な)思考に基づいて行われるのは必然と考えます。サステイナブルかつトレーサブルな背景で生産した商材を、責任をもって供給する姿勢も付加価値として訴求力を高めたいです。

 具体的な例としてトルコ産のオーガニックコットンは出自の裏付けを取りトレーサビリティーを実現。安心・安全な商材の供給に向けた取り組みとして今後も強化を進めます。

  ――意欲的に課題に取り組む社員の姿勢を高く評価していますね。

 新しいビジネスを構築する中で、ボトムアップで案が出たクラウドファンディング(CF)の成功事例が特に若い社員に自信と刺激を与えました。一例ですがウール製マスクは1億3千万円を超える支援購入金額を集めました。

 さらに医療用防護服やマスク向け商材のクイックな対応と供給もしっかり実績を残しています。こうした数々の事例が「やればできる」風潮を生み出しました。

 新型コロナ禍の影響を少なからず受けた事業もある中で、それを決して言い訳にせず意欲的にチャレンジする社員は本当にたくましく素晴らしい。その点は大いに評価したいですね。

  ――将来に向けて望むことを教えてください。

 新しいニーズを拾うため、常にアンテナの感度を磨き「活き活きと」アグレッシブな姿勢で市場開拓を進めていってほしいと強く希望します。このままで良いといった思考は危険であり現状維持はやがて後退の一途をたどることになります。国内のみならず世界のマーケットに目を向け挑戦してもらいたい。失敗を恐れずにグローバルな視点を生かしクリエーティブな仕事で社会に貢献する集団であり続けてほしいと思います。

〈私の新常態/やはり家で過ごすのは良いもの〉

 新型コロナ禍で確実に増えたのが在宅の時間。豊島さんは「やはり家で過ごすのは良いものだと再認識した」と言う。家族と一緒に自宅で食事をとる機会も増え、いままで限られていた自由が利く時間も多くなった。

 自由な時間を利用して行ったのが部屋の大掃除と服の整理。そこで「類似する色や柄の服がかなりある」ことに気付く。部屋も服も整理できて気持ちもスッキリ。ひと段落ついて時間ができると無意識に社業について考えている。その習慣だけは変わらないそうだ。

〈略歴〉

 とよしま・はんしち 1985年豊島入社、90年取締役。常務、専務を経て、2002年から現職。